第50話
少し街道から外れた丘の上に東屋のような建物があった。
そこで休憩することにした。
東屋に見えたそれは屋根だけであり、焚火の後や調理の後があり、街道の途中での休憩場所になっているように思えた。
エータとアレックスは手際よく焚火を作り、小さな鍋を火にかけて料理を作ってくれた。
丸太で出来たテーブルと椅子で食事をしている途中でアレックスの動きがピタリととまり、俺はドキっとして立っているエータを見上げるとフードを外したエータはキョロキョロして
「かなりの数だな、うまく人間をさけて移動している」
と何かに感心したように頷いてから
「ここを通過するな」
と一言追加して俺は一人でアタフタとして、座ったまま立てかけてある槍に手を伸ばして転んだ。
「吾輩がでよう。君たちは食事の続きをたのしみたまえ」
そういってゆっくりと歩いていったが、もう食事なんて喉を通りません。
アレックスはスープの残りをゆっくりと飲んでから紅茶を入れていた。
俺も無理やりスープを流し込み、コップを受け取ってエータが立ち去った方向ばかりをずっと気にしていた。
豚人は気配を隠して丘の多い所の谷間を進んでいるのがちらりと見えた。
ひずめの素足で音もなく移動しているようだ。日中で、多くの兵士が行き来している街道のそばとは思えない見事な進軍だった。
俺たちの東屋から100メートル程離れた草の生えていない丘の上にエータはたどり着き、落ちている小石や木を拾いだした。
俺はドキドキしながらも何をするのか興味があったが、次の瞬間に気分が悪くなった。
エータはものすごいスピードで次から次に小石や木片を豚人の群れに投げはじめ、豚人が気付いて丘をのぼる頃には半分は動いていなかった。
近寄る豚人もまったく相手にならず、次々にエータの腕に刺し貫かれ、逃げようとする豚人には倒れた豚人から取ったのか拾ったのか、槍を次々に投函して、串刺しの山ができていた。
そんな光景を震えながらも目が離せずにながめていたら
「おい、お前たちはなんだ?なにしているんだ?」
背後からにごった声がかかった。
俺はビクっと椅子から立ち上がった。
人相の悪い兵士5人が東屋にやってきていた。豚人やエータにも気が付いているようだが、関心は俺たちのようだった。
「お、メシ食ってんのか?」
そういって一人の兵士が俺ののみかけ紅茶を飲んで荷物袋にも手を伸ばした。
「あ・・・」
俺はつぶやいたが遅かった。
荷物に伸びた手は胴体と離れた。
「う、うわーーーああああああ」
腕を切られた兵士は仰向けに倒れ叫んでいる。
「て、てめー?何をする?」
残った兵士4人は槍を構えて俺とアレックスに穂先を向けた。
「・・・名を聞くならお前が先であろう?」
アレックスは座ったまま、めんどくさそうに顔をあげた。
「て、てめー!や、やっちまえ!!」
ボウズ頭の兵士は血管を浮かべてアレックスに槍で突きかかった。
槍を握ったままの二本の腕が肩から離れて地に転がった。
アレックスは立ち上がり俺の前に立って
「ケンに刃を向けるな!」
そう大声でどなり、俺の前に立つ者の体の真ん中に穴が開いた。
「「え・・・?」」
残った二人は呆けていたが、状況が徐々にわかったようで、数歩後ずさりしてから逃げた。
そこへエータが戻ってきて
「散開して逃げた豚人を数匹逃がしてしまった。人間が敷いている陣のほうにいったので深追いはやめておいた」
腕のちぎれている人間を見ても何もなかったような報告をした。
「・・・エータ。ケンを頼む」
そういって逃げた兵士を追って街道へ向かっていた。
俺は豚人・腕の切れた兵士・逃げた兵士と追うアレックス・冷静なエータを順に見たが混乱していた。
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