4話
チャイムが鳴り、急いで席に座ると担任が入ってき、今日の授業について説明をはじめた。
「皆さんおはようございます。今日は午後から、パートナも決まったことなので、それぞれどんな実力か調べるために模擬戦を行いたいと思います。」
模擬戦、その言葉に教室中にざわめきが広がった。
「模擬戦の結果を基に、合う武器を与えたり、パートナーを変えたりする可能性があります。
パートナーとの初めての実践になるだろうから、しっかりと備えておくように。実力を把握する事が目的だから、遠慮せずに力を出し切ってね」
(模擬戦かぁ…うまく連携できるかな)
心の中で少し不安がよぎる。彰人の強さはすでにしっているが、私は彼と、もう一度うまく息を合わせて戦えるだろうか。
休み時間になるとクラスメイトたちは徐々に模擬戦に向けて戦略を話し合っている。
席で考えていると、美月が私の方にやってきた。
「天華〜。模擬戦、不安だよぉ〜!あ、でもさっき颯太君に昼休みに作戦たてよって言われちゃった!」
美月の明るい声に、少し気持ちが和らいだ。
「そっか、美月たちはうまくやれそうだね。私も彰人とうまく連携できる様に頑張らないと…」
「天華なら大丈夫だよ!彰人君もすっごい強いらしいし、きっといいコンビになれるよ」
美月の励ましに、私は頷き微笑んだ。
「ありがとう美月、美月たちも頑張ってね」
「うん!ありがとう天華」
授業開始のチャイムが鳴り、美月は「またあとでね」と言うと席に戻って行った。
授業が再開すると、クラスは落ち着いた雰囲気を取り戻した。しかし、私はまだ模擬戦の事が頭の中で引っかかっている。
(ちゃんと戦えるかな…息は合っていたけど、彰人はすごく強いから足手まといにならないようにしないと)
ふと、窓から空を見ると、晴れた空にゆっくりと雲が流れていた。そんな景色を見ていると、休み時間の美月の言葉を思い出し、心が落ち着いた。
(昼休みに彰人と戦略をたてよう…)
◇
「天華ーいる?」
ご飯を食べ終わった彰人が私のクラスにやってきた。
「彰人!今私も行こうと思ったところ模擬戦の事でしょ?」
「ああ、もちろん。作戦色々考えようぜ」
彰人は教室に入って私の隣の席に座った。模擬戦の作戦や、練習をする人が多く教室には人があまりいなかった。
「まずは、お互いの強みを出していった方がいいと思うんだ。俺は感覚的に動く方だからあやかしの気を引きつける」
彰人が提案した。私は頷き、どんなふうに戦うか考えた。
「そうね、私は…やっぱり後ろでサポートする方がいい?」
「いや、天華はサポートも上手いけど、前線で戦うのも上手いだろ?」
「そうね、でも私はなるべくサポート中心で動く。その方がバランスがいいし、彰人も助かるでしょ?
あやかしが大きな攻撃を仕掛けてきたとき、彰人の体力がもたなかったら入れ替わりで私が前線で戦う。なんてのはどう?」
彰人は大きく頷いた。お互いを補い合うことでどんな敵でも対応できるはず。
「その作戦めっちゃいいな。じゃあそれで行こう」
「分かった。あと重要なのはお互いの動きを信じ合うこと。信じてるからね?」
私は彰人に向かって微笑んだ。彰人も自信があるような表情をして「ああ、もちろん」と頷いた。
◇
「今から模擬戦の詳しい説明を行います。
2組ずつ行い、霊力の具現化である
その言葉に、みんなはざわめく。霊獣を使った訓練は実践とより近く、中々できるものではないからだ。さすが陽東学院、地元の中学校とは違う。
私はふと彰人の方を見る。彼は冷静に先生の話を聞いていて、その目は鋭く、集中していた。
(私もしっかり頑張らないと…!)
緊張感が漂う中、パートナーに番号が振り分けられ、順番が決まった。私たちの番号は中盤。最初の人たちの戦い方をよく見ておく必要がある。
「では、始め!」
先生の合図とともに、生徒と霊獣が動き出す。
最初のペアは美月たちのようだ。
颯太君は、素早い動きで霊獣を攻撃し、気をつられている間に美月が後ろで核を探している。彼らの連携は素晴らしく、武器を交差させ互いの動きをサポートしている。
「すごい、あの2人全然隙がないね」と、隣に座っているクラスメイトが言った。私はその言葉に頷き、自分の戦いに備えて気を引き締める。
(やっぱり連携が必要なんだな…)
次の戦いの合図がすると、心臓が高鳴り緊張感が上がってきた。私たちの番が近づいてくる。
「次は俺たちだな。もしかして緊張してる?」
彰人が笑いながら言う。それを見ていると、少し緊張がほぐれた気がした。
「うん、まあね。でも、一緒に頑張ろう」
彰人と2人で進み、武器を構えた。
「天城彰人、神楽天華、準備はいいですか?
では、始め!」
開始の合図とともに霊獣が召喚された。その姿は蛇のような体に大きな牙をもち、赤い目をギラギラと輝かせている。
「蛇…!?」
私も彰人も、生徒たちも大きく驚いている。
「来るぞっ!」
「…っ!」
彰人の叫びで我にかえった。あやかしの姿に驚いている場合じゃない。
彰人はすぐに飛び上がって動きを誘導する。
私はゆっくり、慎重に霊力を流し入れた。あやかしの尻尾から霊紋が現れ始める。
「はあっ…はあっ、」
彰人の息が荒くなって行く。当たり前だ、蛇の姿をしたあやかしとは戦ったことなんてないし、動きが予測不能で思ってもいない動きをしてくる。
「彰人っ、大丈夫!?」
「ちょっときついかも…っ、」
「変わる、彰人は続きをお願い!」
「分かった!」
彰人と立ち位置を入れ替える。作戦は順調だ。
あやかしは彰人の方を向いているが、私は攻撃をし興味をこっちにそらした。
「うあ゛あ゛っ゛!あ゛あ゛っ」
あやかしの咆哮が耳をつんざいた。彰人も、私も苦しそうな顔をするが、作戦どおりに続けた。
彰人が霊力を流すと、霊紋の炎が蛇の体に巻き付く。それが頭あたりに来た時、今までのが比にならないくらい大きく燃え上がった。
「ここだっ!天華、見つけた!」
私は迷わずあやかしに飛びかかり、短剣で頭を突いた。そこから霊力を流す。一定の量を流すと、核が割れ、あやかしは大きな悲鳴をあげて、次第に霧のように崩れていった。
「やった…!」
私は息を切らしながらも、達成感を感じた。同じように彰人も息を切らしながらこちらに歩み寄って、にこりと笑った。
「すごい連携だった。天華、本当に頼りになるよ」
彰人の言葉にほっと胸を撫で下ろしながら彼に微笑んだ。
「ありがとう。彰人もすごかった。私も、足手まといにならなかったみたいで安心したよ」
「足手まとい?冗談だろ、むしろ天華じゃなきゃ勝てなかった」
私は彰人の言葉に照れつつ、安心した。先生もこちらを見て、満足げに頷いた。
「よくやった2人とも、模擬戦はこれで終わりだが、これからの成長を期待してるぞ」
その言葉を聞き、私たちは目を合わせた。彰人も安心しているようだ。
◇
教室に戻ると、何人かのクラスメイトが駆け寄って来、拍手を送ってくれた。
「天華ちゃん、すごかったよ!」
「神楽さんって、めっちゃ強いな」
「うん、天城君との連携もすごかった!」
美月もすぐに駆け寄ってき、笑顔で私を褒めてくれた。
「天華!すごかったよ。あんなに彰人君と連携ができるなんて!」
私は少し照れながらも、美月に向かって頷いた。
「ありがとう美月、みんな、私も最初はめっちゃ不安だったけど、何とかうまくいったみたい」
教室には和やかな雰囲気が広がっており、模擬戦の緊張感はすっかり消えていた。
その後、全員の模擬戦は無事に終わったようで私たちは帰路についた。
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