3話
翌日、校門の前で大勢の巫に囲まれてる彰人を見つけた。
「天城君、私とパートナーを組んでくれない?」
「いや、私と組んで!」
彼女たちは一斉に自分をアピールし、競争をしているかのように彰人を取り囲んでいる。
私はその様子を少し離れたところから見つめて、天城家の名はこれほどまでに絶大だったのかと改めて実感させられる。
(やっぱりこうなるよね…)
パートナーを誘ってきたのは彰人からだったが、この状況をみると、私よりいい人が現れたらその人と組んでしまうのではないかと、少し胸がざわつくのが分かる。
その時、彰人と目が合い周囲の巫たちを押しのけて、私の方へ向かってきた。
「誘ってくれるのはありがたいけど、俺もうパートナー決まってるんだ」
そう言うと私の肩に軽く手をおき、微笑んで周囲に告げた。
「俺、こいつと組んでるんだ。だから俺と組みたいって言ってたやつ、気持ちはありがたいけどパートナー変える気は無いから」
周囲の人たちの視線が一斉に私に向けられる。彰人を取り囲んでいた巫たちは嫉妬や驚きの表情を浮かべている。
「誰、あの女…」
「どうしてあんな子が選ばれるの」
「私が天城君と組むはずだったのに…!」
周囲からの囁きが耳に届いているが、私はそんな事を気にせず冷静に彰人に囁く。
「何でこんな大勢の前で言うのよ…」
「悪かったって、あんなに囲まれてちゃ、こうするしかなかったんだよ」
彼は申し訳なさそうに私に言った。
周囲がざわめいてる中、私と彰人は何もなかったように学校へと進んだ。
「あっ、そうだ忘れないうちに…」
彰人はそう言うと、鞄の中から何かを取り出した。
それは昨日手当の時に彰人に渡したハンカチだった。
「これ、昨日はありがとな。ちゃんと洗ったから」
「ありがとう。怪我、大丈夫だった?」
「ああ、天華のおかげだよ!」
◇
教室につくと、彰人は私に軽く手を振り自分のクラスへ入って行った。
席について準備をしていると、斜め前の席から少しウェーブがかかった栗色のロングヘアを、ツインテールでまとめているの女の子、私の親友が話しかけてきた。
「天華おはよー!」
「おはよう
「朝の、見てたよ〜?」
「見てたって、何を?」
「もちろん!あの天城君と一緒に登校してたことだよ」
美月はいたずらっぽく微笑んで答えた。私が驚いていると、彼女はさらに続けてこう言う。
「もしかして、パートナー決まっちゃったかんじ?」
「うん、そういうことになるのかな…」
「いいな〜ていうか天華と天城君って知り合いだったっけ?」
「いや…まぁ、色々あって」
「ふぅーん?でも、天華も天城君も顔がいいからお似合いだよね〜!」
美月はほわほわとした感じで話す。そんな彼女に私は毎朝癒されている。
それに、深入りしないところや、さらっと褒めてくれるのは美月のいいところだとつくづく思う。
「…ありがと」
「え〜何々、照れてるぅ?」
「照れてないって!」
笑いながら美月と話していると、朝の不安もどこかへ飛んでいってしまった。
「そういえば、美月のパートナーは誰なの?」
今まで私のパートナーの話しだったから、美月のパートナーは誰なのだろうと気になり、聞いてみることにした。
私が聞くと、美月は少し頬を赤らめながら小さい声で言葉を発する。
「えっとね、
美月はさらに顔を赤らめながら言ったが、名前を聞いて私は一瞬思考が止まった。
(颯太君…?そうた、颯太?誰だっけ…?)
名前を聞いても顔が思い浮かばず少し申し訳なさそうに美月に聞く。
「ごめん美月、颯太君って誰だっけ?」
「え〜天華、覚えてないのぉ!?」
「ごめん…」
「じゃあ、ちょっとクラスに覗きに行こっ!」
もう少しで朝礼がはじまるが、パートナーがどんな人か気になるため、つい、美月に引っ張られながら行った。
「ほら、あの人だよ!」
「…本当にあの人?」
「うん!」
美月が指を指している人は、身長や体格は普通だが前髪が目に覆い被さるほど長く、分厚いメガネをかけている人だった。
見た目で判断するのはよくないが…何で美月があの人を選んだのか気になる。
「美月、何であの人を選んだの?」
私が思わず口にした問いに美月は少し驚いたような顔をしたが、すぐに優しい笑顔で答えた。
「颯太君ね、外見はちょっと目立たないかもしれないけど、すごくいい人なんだよ。中学校のころ、転校してきて隣の席になったんだ。同じ高校に行くって聞いて一緒に勉強とか、練習を頑張ったの!」
「そっか…」
その話しをしている美月は、とても笑顔で穏やかな顔だった。私はこの話を聞いて、美月がどれだけ颯太君を信頼しているかが分かった。
「そんなに美月に信頼されてるって、よっぽどいい人なんだね。」
「うん!そうなの。だから、パートナーに誘われた時はめっちゃ嬉しかったなぁ」
美月の話を聞いていると、そこには颯太君に対する特別な想いがあるように感じた。
「美月って、もしかして颯太君のこと…」
私は少しからかうようにたずねた。その言葉に美月は驚き、顔を真っ赤にして否定する。
「えっ!?ち、違うよっ!そうゆうんじゃなくて、ただその…」
「ふふっ、分かった、分かった。冗談だよ。でもなんだかいい感じだなって」
私は微笑んで、美月の肩を軽く叩いた。美月は少し照れながら、「もう、天華ったら…!」と言い、笑い返してきた。
その時、朝礼のチャイムが鳴り、私と美月は急いで教室へと戻って行った。
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