第6話 謎の共通点と思わぬ敵の出現
「――ホントなのっ?!
「――ああ。だが撃退したと」
「――でくうなら捕縛したかったが」
「――
「――うん、大丈夫だよ、
「――でも、出発しても大丈夫なのですか? 気球の形成作業はそれほど進捗してかったと思うのですが」
有重力下の空宙を飛行中の『エアーストリーム』の
「――それは大丈夫でち。気球の形成作業球なら既に完了しているでち。
その返答に、
「――じゃ、アタシたちは今まで何の作業をしていたのですか?」
「――もちろん、予備の気球の形成作業でち」
「――予備? それじゃ、僕たちは今まで二つ目の気球を作っていたのですか?」
「――そうでち、
「――そうだったんた。そこまで聞いてなかったから、知らなかったわ」
「――けど、謎の襲撃者の出現で、二つ目の気球形成は断念し、出発の予定を早めた。再度の襲来を躱すために」
「――そうでち」
「――でも、二つ目は北部船体
「――そいどん、驚いたど。重力あっとに空ば飛ぶとは」
「――有重力下で空を飛べる人間なんて、僕が知っている限りでは、一人しか知りません。ましてや、風の力で飛翔するなんて、初耳です」
「――
「――それがわからないから出発を早めたのでち。
「――そして僕たちは飛空船
「――その通りでち」
「――何者なのでしょうか? あの襲撃者たちは」
「――きっと
「――はいはい、中二乙、
気象観測士の席で、
「――でもあながち的外れでもないのよね」
操舵手の
「――襲撃を聞いたあと、後輩の
「――それに、両国を通して、裏社会で暗躍している形跡があるとも、以前言っていました。国防軍も、そのような敵性国家から防衛するために設立した軍事組織ですし」
「――どちらにしても、一刻も早く本国に帰還しなければならない事に変わりない。飛空船
「――副長の言う通りでち。総員、配置につくでち」
「――現在、『エアーストリーム』の進路と速度は?」
その間、副長兼航海長に報告を求める。
「――『エアーストリーム』は本国への追い風に乗って進路を取っています。風速、一三メートル」
「――二つ目の気球形成の進捗状況は?」
(――およそ九〇パーセントです――)
その作業に従事している一人の
「――精神エネルギーの備蓄量は?」
「――総量の約四〇パーセント。ですが、消費が僕の供給を上回っています。やはり、有重力下での
「――
「――やってはいるが、限界を超えると
「――
同じ技師の
「――それで精神エネルギーの消費が少しでも抑えればいいが……」
「――これまでの空宙航行における生命線でちからね。その意味では、
「――あの浮遊島で襲撃者が
「――でも、今までの旅路で一番の驚きでした。それも、本国が間近に迫った陽月系浮遊群島内で。だから、
着座している
「……この
「――
「――噂じゃ、
「――ええっ?! なにそれっ!? もしその噂が本当なら、
「……あたしも自然な流れで
「――けど?」
「……
「……どういう意味かしら?」
問いかける
「……戦時の親交はあっても、平時の親交はないって意味じゃない?」
「……それじゃ、『第二次幕末』が終結してから、
「――それ以上の詮索はしない方がいいわ。平時生まれのアタシたちには想像もつかない過去があるのよ。それこそ、口に出すのも憚られる過去が――」
「――
「……し、知ってますけど、でも……」
「――だから詮索するなってっ!
「――襲撃者が使ったあの力でいいのなら、母から聞いたことがあるので、知ってます」
思いもよらぬ
「――ええっ、知っているのっ!」
「――あなたの見聞
「――はい。当時、僕の母の隊長が、それと同じ力を使って『第二次幕末』を戦っていたと言っていました」
「――だからあの力の名を
「――隊長って、桜華組の番隊長のことね。六番隊まで存在していたという――」
「――はい、けど母が所属していた番隊は、『0《レイ》番隊』という、隊長以外は準隊士のみで構成された七番目の非正規部隊でした」
「――じゃ、準隊士だった
「――ですが、名目上、存在していない番隊で、桜華組の隊士名簿にその名はどちらも連ねていません」
「――だから『0《レイ》番隊』なのね」
「――元々、中途加入は、局長も副長も消極的で、『
「――結果的には、勝利した体制側の敵対者として、局長のような処刑は免れ、むしろ戦功を称えられて士族に遇されたのね。非正規隊員として隊士名簿に名を連ねてなかったゆえに、処罰どころか褒賞を授かるなんて、皮肉な話ね」
「――敗北した反体制派とはいえ、女性の歴史的な活躍と社会進出に貢献した手前、その生き残りにまで厳罰に処すのは、勝利した体制側からすれば、風潮的に都合が悪いから――」
そこまで
「――って言う話じゃないっ! つい夢中になって本題から逸れてしてしまったわ。ええと……」
「……何の話だっけ?」
「――僕を攻撃した襲撃者と、桜華組0《レイ》番隊隊長の関連性についての話です」
「――そうそう、それそれ」
「――そういう話だったわ」
「――つまり、襲撃者は桜華組0《レイ》番隊隊長と同じ力を持っているわけね。だとしたら?」
「――0《レイ》番隊隊長の子供たちかな?」
「――それはないわ、
「……言われてみればそうね。妊娠から出産まで半年近くかかるのに、その線はないわね」
「……よくよく考えたら、謎が多いですよね。母が所属していた女性だけの武闘派組織は……」
「……うーん。そう言われると、確かに……」
「……派手な光彩に目を奪われて、そっちの逸話ばかり持ち上げられるけど……」
「……母も準隊士がゆえに、幹部の意思決定にまったく関与できませんでしたし、何より、入隊の目的が許嫁の敵討ちでしたので、ほとんど感心がありませんでした……」
「……色々と話したけど、結局、何もわからなかったね、襲撃者の正体や、襲撃や逃走に使ったその力も……」
「――話が終わったんなら、それぞれの仕事に専念してくれ。有益な情報を期待してあえて放置していたが、得られず仕舞いで落胆したがな」
一部始終を聞いていた副長の
「――でも色々と興味深い
対照的に、
「――機会があればまた聞きたいでち」
「――アタシもまた話がしたい」
「――あなたとは一度話がしたいと思っていたけど、気がついたらいつの間にか思わぬ形で叶っちゃっていたわ」
「――わかりました。また話しましょう。本国に無事帰還した後で」
「――女子好きの
(――進捗はどうなっている?)
(――もうすぐ終わるで。そのあとどないすんねん)
(――予定通り、予備の気球として使う。現在使用している気球が破れても、即張り直せるように
(――了解――)
(――それで、いつ本国に到着するの? かなり近づいているんでしょ。陽月系内に入ったんだから。正直もう限界よ――)
(――いや、まだかかる。距離的に近づいているのは確かだが、航行速度が外空宙よりも落ちているからな。食料の備蓄は十分だが、それでも、これ以上の航海に精神や肉体が持たないか――)
(――操船のギアプがなければ、ここまで持たなかったでち――)
(――これ以上なにかあったら、対処なんてできないわよ、アタシは……)
(――あたいも、ニャ……)
(……アタシ、も……)
(――
船内作業員の女子四人は、自分たちの状態を争うように言い募る。
(――ワイはまだ大丈夫やで――)
(――ボクもワン――)
(――オイもまだ頑張れうど――)
(――兄ィと同じく、オイも――)
対照的に、船外作業員の男子四人は、まだ余裕があった。
「――さすが男子でちね。
(――正直、あたしもクタクタね。集中力も落ちてきているし――)
(――
その判断に落ち着くのは、やむを得なかった。
「――ふふん、だらしない助手だ。本来の仕事を疎かにしてスイーツなんぞに没頭するからその
疲労の様子がない
(――
命令の撤回を要求する。
(――ダメでち。命令に
しかし、すげなく却下されてしまった。
「――
「……今頃気づいたの、
「――やれやれ、感情に任せて正常な自己診断もできないとは、胸以外成長のないヤツだ。だからお前は助手止まりなのだ」
そこへ、
「~~~~~~~~っ!」
(――
テレ通で聞いていた
(――嫌われるのを恐れては何もできないぞ、
一蹴するように
(――万人どころか一人も好かれんと思うど。
「――そういうやっちゃ、
(――五人の男性陣は引き続き各々の作業に従事するでち――)
「――クソッ、相変わらず腹立たしか
「――状況と言えば、好転しているのか、悪化しているのか、テレ通でその説明を聞いてもわからないワン」
「――両方同時が正確やろ」
それに
「――本国に近づきつつあるのは確かだが、未知の敵性勢力と接触してしもうたのも確かや。それまで何事も起こらへんとええが」
「――もしそうなったらオイら四人が矢面に立たなにゃならん」
「――しかも有重力下。スカイスネークと戦った無重力空間よいはマシだが、相手があん力を飛び道具で使ってきたら、いけんしごともんぞ」
「――その点は安心しろ」
そこへ、
「――飛び道具ならこっちにもある。大口径の二連装
「……へ、撃てるの? それ?」
唖然となる
「――聞いてないワンっ! そんなことっ!」
「――そげんなら、スカイスネークとの戦いで使えば楽勝ほいならったほいならんかっ!」
「――落ち着いて考えろ。ワタシは『
「――あっ、そうか」
思い当たった
「――精神エネルギーの消耗が半端やないからか」
「――そうだ。あの時は陽月系内突入用に温存・充填する必要があったからな。それに、それでスカイスネークを消し炭にしてしまったら、せっかくの食料も接種できない。第一、その時は使用不可能な状態だった。だから白兵戦で対処するしかなかったのだ」
『エアーストリーム』の改修・改良の責任者だった
「――それほいなら船ちゅうよい戦艦だな」
「――その通りだ、
『……………………』
皮肉を交えた
「――いやぁ、考えたいわっ! なんであの
「――兵科合同演習で負けたからだろう。その巻き添えを食ったオイにとってはいい迷惑だ」
「――ほらほら、ケンカせじ、仲良くして。兄弟なんほいならっで」
「~~誰が誰に誰を言っているのかわからなくなってきたワンっ!」
だが、更なる混乱が、『エアーストリーム』の船外で起きていた。
「――二時方向に異常な気象現象を観測。雷雲の模様」
気象観測士の
「――自然発生にしては、余りにもおかしいわ。まさか、
「――
その直後、
『キャアアアアアアアアアアアアッ』
休息中だった女性たちから複数の悲鳴が上がり、衝撃で
「――言ってるそばから早速来おおったわっ!」
「――いったいニャにが起きたんニャ?!」
「――『エアーストリーム』が攻撃を受けたに決まってるでしょっ!」
「――でも、誰がっ!?」
だが、
「――あなたの幼馴染を謎の力で遠距離攻撃した謎の敵しか考えられないわっ!」
今度は
「……どう、する?」
「――アタシたちの精神エネルギーを、船内の精神エネルギー貯蓄装置に充填しましょう」
「――アタシたち五人が合わせても
「――それに、戦闘になれば、航行の推進に加えて、更に精神エネルギーを消費するし」
「――疲労困憊のあたしたちにできることがあるとすれば、これしかないわ」
(――
(――任せたまえ。
不遜で尊大な応答に、
(――そう悔しがるな、助手よ。確かにワタシは尊大だが、礼知らずではない。本国に無事到着したら、その功績に、新たにサルベージしたBLの記憶書籍をお前に授けよう。内容は以前のよりも過激なようだぞ――)
(――えっ!? ホント!?)
(――ウソは言わん。楽しみに待っていろ――)
そう言って
「……これって普通に死亡フラグだよね、
「――そうニャ。でも、BLってニャんだろう?
「――英語のアルファベットを使った略称かなにかまではわかるけど」
「――ニャんの略語ニャんだろう?」
「――何やってんのよ、二人とも。テレ通で聞いていたんでしょ。早く機関室へ行って、精神エネルギーの生ける電池になりなさい。
「――二時の方向に敵影視認できず」
副長の
「十時方向に異常な気象現象体を確認っ! 二時方向と同じ現象ですっ!」
間髪入れずに
「また雷撃かっ! 明らかに意図的な気象攻撃だっ!」
「回避っ! 直撃を避けるでちっ!」
「――敵影が全然見えへんでェぞっ?! 攻撃した方角のどこにもっ! 一体どこにおるんじゃ!?」
船尾の砲座についている
「――こいじゃ、どこへ撃てばよかのかわからんぞっ!」
船首の砲座についている
無論、
「――とりあえず、攻撃は
「
それを打ち砕く報告を、
「――とにかく、敵影を発見しないことにはどうしようもない」
副長の
「――気象観測士っ! 敵影は探知できないのかっ!」
「無理ですっ! 攻撃の予兆で精一――十二時の方向に異常な気象現象体が発生っ!」
「正面っ!?」
操舵手の
「――敵影が全然見えないっ!?」
「――なのになぜ攻撃だけが来るのっ?! いったいどこに何機の敵がいるのっ!?」
そこへ、
「――気象観測士。異常感知からこれまでの気象観測情報をリアルタイムで再生するでち」
「――りょ、了解。気象経過映像データの見聞
その間、三撃目の雷閃が
(――索敵レーダーの実装が間に合わなかった以上、索敵は観測レーダーで代用するしかないと、兄者は言っていたが――)
(――攻撃を受けているのに、すごい胆力――)
横目でその姿を見た
三度目の攻撃を凌ぎ切り、船内の振動が収まったあと、
(――全砲塔、あたちが送信した座標
(――ちっと待てぇっ! そん先にな何もなんぞっ!)
だが、命令を受けた船首砲座の
(――なのに、何もない虚空を撃ってどないすんねんっ!)
それは船尾砲座の
(――いいから撃つでちっ! 早くっ!)
だが、
(――わかったワンっ! 撃つワンっ!)
(――座標通り、何もない虚空をばっ!)
同じ砲手の
船首の砲塔から青白色の光線二連が、船尾の砲塔から鋼鉄製の砲弾二連が、それぞれ放たれた。
何もない虚空を、ただ一直線に雲ごと貫くだけ――
――と思いきや、
「――光線の弾道が変わったワンっ!」
「――まうでなにかに当たったごとだっ!」
弾道が変化した何もない虚空の部分から、黒煙らしき雲が湧き上がる。
「――なんかおるっ!?」
――というより、黒煙を上げる一部の白い雲だけが、他の白い雲と違って不自然な動きをする。
「――あれだっ! あれに
「――なんかわからんけど、これで標的ば狙ゆっぞ。あん黒煙を狙って撃つんだっ!」
「――両砲塔、攻撃中止。操舵手、船首急速反転。この空域を離脱するでち」
「ないごて攻撃せんっ!? 追撃の
「逆でちっ! 逃走の
「――
弟の
「――敵影、本船と逆方向に進路を変更。この空域を離脱する模様」
「――交戦の意志もなく引き上げるようだな。こっちにとっては好都合だ」
「――反転完了。進路、本国に固定」
操舵手の報告に、
「――出力全開っ! 一目散にとんずらするでちっ!」
「……一目散にとんずらするって、せめて後退や撤退とか言った方が聞こえが……」
「――言葉をいくら言いつくろっても、敵前逃亡に変わりはないぞっ、気象観測士っ! それよりも、敵影の監視を怠るなっ! 再反撃や引き返す可能性も無きにしも
副長の注意喚起に、気象観測士の
「――敵影、観測
「――やはりあの敵影が攻撃していたみたいですね。現に雷光が止みました」
「――どんな方法で攻撃したかまでは、最後までわからなかったがな」
「――少なくても、こちらの船みたいに、船体から直接発射された雷光ではありませんでした。遠隔で形成した間接攻撃でした」
「――確かに、そんな印象だったな。複数の敵による攻撃にしては、散発的だったし」
「――でも、この戦闘で多くの精神エネルギーを消耗しました」
「――それはそうだな。非戦闘状態でも、常に推進用の
「――
この報告は気象観測士の
「――本国まで持つ距離でちか? 精神エネルギーの残量を照らし合わせて」
「――気象観測士が転送してもらった本国までの距離と計算した結果……正直……厳しいです。今回のような戦闘にまたなったら、帰還はもう……」
『……………………』
「――ん? 待て」
それを破ったのは
「――吾輩のエスパーダに
「――船内作業員からの
「――いや、違う。これは……」
一拍を置く
「――
「――それってまさか――」
「――本国の近くまで近づいたってことっ?!」
同じく立ち上がった
「――先輩たちのエスパーダにも届いているはずです。本国からの
そう返して確認を求める。
「……ホントだ、届いている」
「……本国のアスネ情報が」
それぞれのエスパーダに指先を当てて呟いた
『――やったぁぁぁっ!』
抱き合って歓喜の声を上げる。
それは本体
テレ通を通して
無論、男性陣も例外ではない。
だが、
「――危ないっ!!」
ズンッ!
激しいが短い振動が『エアーストリーム』の船体を揺るがした。
「キャァアァッ!」
「ニャニァッ!?」
喜声から一変、悲鳴に激変する。
「――何が起きたっ!?」
「――去ったはずの敵影からの攻撃ですっ!」
それに応じたのは
「――被弾する寸前、七時の方角から雷撃が飛来するのを視認しましたっ!」
「被弾した箇所はっ!?」
「気球上部やっ!」
今度は
「――気球が裂けた大穴からヘリウムが急速に抜けとるっ! このままだと墜落するでっ!」
悲鳴に近い声で。
「そんなっ?! ウソでしょっ!? 攻撃の兆候なんて、全然なかったわっ!」
「陽月系外まで落ちたら、精神エネルギーの残量から見て、再浮上はもう不可能っ! 食い止めないとっ!」
「――予備の気球を損傷した気球の内部から展開っ! 固体ヘリウムを予備の気球内に
浮足立っていた男子五人の作業員と技師は、
(――固体ヘリウム
(――予備の気球展開準備完了っ!)
(――固体ヘリウム蒸発開始っ! 予備の気球急速に膨張っ!)
(――損傷した気球、
(――予備の気球、展開完了まであと八秒っ!)
各々が落ち着いて報告する。
「――船体の落下速度、依然と変わらずっ!」
それとは対象に、操舵手である
「――三時の方角から突風っ! 船体が煽られるゥッ!」
気象観測士である
事実、『エアーストリーム』の船体は傾いていた。
「――姿勢制御用の
機関士の
「――いや、今は耐えるでち。精神エネルギーを無駄に消費ちたくない」
「――じきに収まる。慌てる必要はない」
副長の
「さっきの衝撃で船体が傾いているっ!」
「
「一体どうなっているのっ!? もしかして死ぬのっ?! アタシたちっ!」
「そんニャッ!? 死にたくニャいニャッ!」
「……落ち着く、みんな、落ち着く……」
船内作業員と技師の女子五人は、程度の差はあれど、本体
しかし――
「――船体が安定してきた」
『エアーストリーム』の状態の変化に、
(――
(――予備の気球、展開完了っ!)
(――予備の気球の各所から些少のヘリウム漏れありっ! ガム風船放出っ!)
(――ガム風船、各所の
(――ヘリウム漏れ完全停止。
四人の男子作業員と一人の男子技師は、
「――船体、水平に復元。落下停止しました」
そして、操舵手の
「――機関士、推進用
「――了解。巡航速度まで出力を上げます」
「――進路を本国に転進します」
操舵手の
「――気象観測士。敵影の観測は」
「――ありません。気候も安定していて、視界も良好です」
「――副長。本国の連絡を試みるでち。
「――了解。感度を最大にして試みます」
(――作業員と技師の五人は交代で船内
(――偉そうに命令すうな)
「――さっきはエスパーダでも反応があったから、必ずアスネに繋がるはず――」
「――前方に艦影らしき飛行物体を目視で発見っ!」
「ええっ?! 逃げたはずの謎の敵が、どうして正面からっ!?」
思わず席を立った
「――『エアーストリーム』はもう戦える状態じゃないっ! 精神エネルギーの残量も厳しいし、何より、予備の気球に損傷を受けたら、万事休すっ!」
流石の
「――いえ、待ってくださいっ!」
だが、
「――あれは謎の敵じゃないっ! もしかしたら――」
直後――
(――こちら、第二日本国国防空軍に所属する飛空厨艇駆逐艦『マニューヴァー』である。貴船の船名を申せ――)
『エアーストリーム』の船員たちに、誰何のテレ通が伝わる。
無論、前方の艦影からである。
「……来たんだ……」
「――本国からの救援がっ!」
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