第10話 真の才能 連鎖-
藤原が技術的な説明を終えた後、少しの沈黙が場に訪れた。その沈黙を和らげるように、高橋が前に出た。彼は自信に満ちた表情で話始めた。
「私はこの企業がドラゴン捕獲を事業化する際に、どの企業と連携するかが重要なポイントであると考えました。考えるべきは、この大手企業がすでに持っている豊富な資金とコネクションをいかに活かして、最大の成果を得るかです。」
高橋は少し間を置いて、具体的な企業名を挙げ始めた。
「例えば、私たちの企業はすでにユニオンインフラと強固なパートナーシップを築いており、インフラ整備が求められる場合でも、この企業の技術力と経験が大いに役立つはずです。ユニオンインフラは、国内外での大規模プロジェクトを数多く手掛けており、異世界でも迅速かつ効率的にインフラを構築できる能力を持っています。」
さらに、高橋は次の企業についても言及した。「また、捕獲したドラゴンの素材を最大限に活用するためには、エレメントケミカルズとの連携が重要です。エレメントケミカルズは、特殊素材の開発において業界をリードしており、ドラゴンの鱗や血液といった特殊な素材を加工・利用する技術に関しても、最適なパートナーとなり得るでしょう。彼らのノウハウを活用することで、私たちはドラゴンの素材を新たな市場に展開し、さらなる価値を生み出すことができます。」
高橋は続けて、自信を持ってさらなる戦略的な提案を行った。「そして、現在急成長中のグローバルテックとの提携も見逃せません。グローバルテックは、異業種との協力を積極的に進め、先進的なテクノロジー企業との連携を推進しています。彼らとの提携により、ドラゴン捕獲から得られるデータや技術を活用した新規事業の開発が期待できます。」
高橋の言葉に、面接官たちは耳を傾けていた。彼が挙げた企業はいずれも、現在の市場で強力なプレイヤーであり、彼らとの連携が事業の成否を左右することを確信していた。
高橋は説明を続けた。
「さらに、サミットトレードとの連携も重要です。この企業は、グローバルな貿易と事業開発の分野での実績があり、異世界での事業展開にも積極的に関与できるパートナーです。サミットトレードのネットワークを活用すれば、異世界から得られる資源や商品を迅速に市場に流通させることが可能になります。」
ここで、高橋は一歩前に出て、場の全員に視線を送りながらさらに詳しく語りかけた。
「今まで私たちは技術的な側面について詳しく説明してきましたが、これを現実のプロジェクトとして実行に移すためには、技術だけではなく、さまざまなステークホルダーとの連携が必要不可欠です。そして、それを実現するためには、各方面との強固なネットワークが必要です。」
彼は続けて言葉を紡いだ。
「私はこれまでの経験を通じて、さまざまな企業や研究機関、さらには政府機関とも強い信頼関係を築いてきました。これらのネットワークは、私たちのプロジェクトの成功に不可欠です。例えば、私たちが提案している技術の一部は、アルテミス研究所での検証を経て実用化を目指しています。この研究所とは既に初期段階での技術検証について話し合いを進めており、彼らの技術サポートを受けることで、私たちのプロジェクトの信頼性を高めることができます。」
さらに、高橋は資金調達についても触れた。
「資金調達に関しては、クロノス銀行と既に基本合意に達しており、プロジェクトの初期段階での資金サポートを確保しています。これにより、開発段階でのリスクを軽減し、プロジェクトのスムーズな進行を図ることができます。私がこれまで築いてきた関係性をフルに活用し、各方面との連携を密に保ちながらプロジェクトを進めることが、この計画の成功には欠かせない要素です。」
面接官の一人、翠川リリィが口を開いた。彼女は高橋に視線を向け、少し微笑みながら問いかけた。
「高橋さん、それは素晴らしいことですが、これらのネットワークを活用していき運用段階での問題が発生した場合の対応については、どのように考えているか、詳しく教えていただけますか?」
高橋は翠川の質問に穏やかにうなずき、さらに詳しく説明を始めた。
「運用段階で技術的な問題が発生した場合でも、私は事前に各関係者と密な連携を取っており、問題が発生した際には迅速に対応できる体制を整えています。例えば、クロノス銀行とは、予期せぬ事態が発生した際の追加資金の供給についても柔軟に対応してもらえるよう、契約を交わしています。また、技術サポートに関しても、アルテミス研究所だけでなく、他の技術パートナーとも緊密な連携を取ることで、万全のバックアップ体制を確立しています。」
翠川は満足そうにうなず微笑んだ。
「それなら安心ですね。高橋さんがいることで、プロジェクト全体が非常にスムーズに進行すると思います。」
高橋はその言葉に微笑み返し、さらに場の全員に向かって続けた。
「このように、各方面との連携を通じて、計画立案から実際の運用までを全面的にサポートします。技術だけでなく、こうした人的ネットワークと連携を密にすることで、プロジェクトの成功を確固たるものにします。」
風間銀次郎が少し身を乗り出し、興味深そうに高橋を見つめた。
「なるほど、プロジェクトを実現するための人的ネットワークと、問題解決のための柔軟な対応力…これは時として、技術以上に重要な要素かもしれないね。」
高橋はその言葉に静かに礼をし答えた。
「ありがとうございます。私の経験とネットワークをフルに活用して、このプロジェクトを成功に導きます。」
面接官たちは、高橋の提案に深く感銘を受けた様子だった。彼の見識の広さ、戦略的な視点、そして企業連携における鋭い洞察力が、他の候補者とは一線を画していた。
ここで神崎が再び前に出て、グループ全体の発表をまとめる。
「私たちの提案は、単なる捕獲作戦ではありません。ドラゴンの生態を深く理解し、その資源を効率的に活用することで、経済的にも環境的にも持続可能なモデルを構築することを目指しています。もちろん、まだ検討すべき課題は残っていますが、私たちはこのプロジェクトが持つ可能性に自信を持っています。」
発表が終わると、風間は深く頷きながらコメントを始めた。「素晴らしい発表でした。各自がそれぞれの専門知識を生かし、実現可能な計画に落とし込んでいるのが非常に印象的です。もちろん、まだ詰めるべき点は多くありますが、皆さんの才能と発想力には感銘を受けました。」
風間は少し笑みを浮かべてから、「さて、次は個人面談に移りましょう。皆さんがどのようにこの発想を生み出したのか、そしてどのようにそれを深めていったのか、さらに掘り下げてお話を伺いたいと思います。リラックスして、楽しんでください。」と告げた。
候補者たちは、これからの面談に対して期待と緊張が入り混じった表情を見せた。この面談が彼らの本当の力を示す、さらなる絶好の機会となる事をひしひしと感じながら、一人ひとりが自分の順番を待つこととなった。
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