第9話 真の才能 -飛躍-

プレゼンが進む中、神崎が前に出て、ドラゴン捕獲における魔法技術の利用について語り始めた。彼女は自信に満ちた表情で、チームメンバーと聴衆の視線を集めた。

「私たちのプロジェクトでは、物理的な技術だけでなく、異世界の魔法技術も取り入れることで、より効率的なドラゴンの捕獲を目指しています。」


神崎は少し間を置いて、興味を引くように続けた。

「具体的には、ドラゴンを特定のエリアに誘導し、そこで封じ込めるための魔法陣を展開する予定です。この魔法陣は、捕獲プロセス全体をサポートし、ドラゴンの逃亡を防ぐために不可欠な要素です。

私たちは、異世界の技術者とも連携して、特別な『結界魔法陣』を設計する予定です。この魔法陣は、ドラゴンが一定範囲内に入った瞬間に作動し、その動きを一時的に封じ込める効果があります。さらに、結界内で発動する抑制魔法により、ドラゴンの力を制限することが可能です。」


炎上は、神崎の説明を興味深そうに聞きながら、視線を彼女に向け続けた。彼の反応を感じ取った神崎は、さらに詳細な内容に踏み込む。


「たとえば、ドラゴンの炎を抑制するために、『炎縛の呪文』を組み込むことを考えています。この呪文は、ドラゴンの吐く火炎の威力を弱め、我々の捕獲チームに安全をもたらします。

さらに、捕獲したドラゴンを無力化した後、その場で魔法的に保存し、後日安全に移送できるようにするための『転送の魔法』も考慮しています。これにより、捕獲したドラゴンを即座に安全な施設へと転送することが可能となり、輸送に伴うリスクを大幅に削減できます。」


彼女はここで一息つき、面接官の反応を観察した。幻想や非現実的な前提からでも鋭い洞察力を発揮し、論理的に考えを展開していく神崎の提案に、炎上をはじめとする面接官達は深く興味を抱いているようだった。


神崎は、ドラゴン捕獲のための魔法技術についての説明を続けながら、特に魔法陣に使用する素材に話題を移した。


「私たちが使おうとしている魔法陣ですが、従来の紙や羊皮紙ではなく、特別な素材を使用する予定です。この素材は、『フィルドウィーブ』と呼ばれる異世界由来のもので、軽量でありながら非常に高い耐久性を持っています。フィルドウィーブは、極めて薄く加工できる繊維でありながら、普通の紙のように簡単に破れず、さらに浸水にも強いという特性があります。」


神崎はフィルドウィーブの特徴をさらに掘り下げた。

「この素材は、特殊な魔法的プロセスを通じて作られており、魔力を効率的に通す性質も持っています。これにより、魔法陣を描いた際の呪文の効果が安定し、魔法の力が最大限に発揮されることが保証されます。また、軽量であるため、現場に持ち運びが容易で、迅速に設置することができます。」


彼女はその素材が持つ可能性についても語った。

「さらに、フィルドウィーブは耐熱性も兼ね備えており、ドラゴンの火炎にさらされても溶けたり燃えたりする心配がありません。この特性により、私たちはドラゴンの吐く火炎を封じる結界魔法陣を安全に設置し、運用することが可能になるのです。」


炎上は、神崎の説明に深い興味を示し、彼女の話に集中して耳を傾けていた。

「そのフィルドウィーブという素材は、かなり特殊で貴重なもののようだ。確かに、ただの紙や羊皮紙ではドラゴンの捕獲作戦には不十分だろう。君たちは、どこでその素材を手に入れたのか?」


神崎は少し微笑みながら答えた。

「フィルドウィーブは、異世界の交易ルートを通じて手に入れることができました。私たちは、その世界の技術者と協力し、この素材を特注で調達します。確かに貴重な素材ですが、その価値に見合う性能を発揮することを確信しています。」


炎上は満足そうにうなずき、「それならば、この魔法陣がどれほど強力かを期待できそうだ。」と言い、神崎の提案を受け入れる姿勢を示した。


「このように、異世界の技術を取り入れることで、従来の物理的な捕獲方法と組み合わせたハイブリッドなアプローチを採用しています。このアプローチにより、捕獲作業全体の効率性を飛躍的に向上させることができます。」

神崎は、自信を持って言葉を締めくくった。


そして、神崎の発表が終わると、秋山が自然な流れで話を引き継いだ。

「さらにコストを抑えるために、私たちは既存の技術や装備を最大限に活用し、無駄な開発費用を削減することも検討しています。例えば、既存の魔法陣や呪文を再利用することで、新たな開発コストを削減し、外部の魔法使いを雇うコストを抑えることが可能です。また、異世界の技術者との提携を通じて、魔法技術の更なる効率化も進めていきます。」


秋山の説明により、チームの計画が経済的にも持続可能であることが強調され、風間をはじめとする聴衆はその戦略に対する納得の表情を見せていた。


藤原が控えめに前に出て、さらに技術的な詳細を補完した。

「ドラゴンの巣を特定するため、私たちは地熱探知と地形解析を組み合わせた調査を行う予定です。これにより、巣の位置を正確に特定し、その場所に罠を設置するための準備が整います。また、地形や環境に配慮したエコロジカルな罠を設置することで、ドラゴン捕獲後も自然環境に悪影響を与えないようにしています。さらに、巣の構造や周辺の地質データを活用し、捕獲時のリスクを最小限に抑える計画を立てています。」


藤原の説明の後、部屋の中には再び静寂が戻ったが、その静けさの中には、確かな信頼と覚悟が宿っていた。

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