第8話 真の才能 -原動-

ここで秋山が少し前に出て、財務的な視点から話を続けた。

「もちろん、こういった高度な技術を使用するには、相応のコストがかかります。そのため、私たちは捕獲に成功したドラゴンの素材を事前に売却契約することで、資金を確保する計画を立てました。このドラゴンファンドは、投資家にとっても魅力的な投資案件となると考えています。」


秋山は一瞬言葉を切り、集まった視線を感じながら続けた。


「その他の財源確保としては、エクイティファイナンス、つまり株式発行を考えます。私たちはこのプロジェクトの成功を見込んで、特定の投資家に株式を発行し、資金を調達します。これにより、投資家はプロジェクトの成功によって利益を得ることができますし、私たちにとっても大きな資金源となります。


さらに、デットファイナンス、つまり借入も有用な資金です。銀行からのローンや債券発行を通じて、必要な資金を調達します。この方法を利用することで、資金が確保できるだけでなく、プロジェクトが成功しなかった場合でも、リスクを分散することができます。」


さらに秋山は言葉を続けた。

「さらに別ルートとして、政府や地方自治体からの助成金や補助金の利用を考えています。ドラゴンの捕獲や管理は公共の安全にも寄与するため、政府からの支援を得られる可能性が高いと考えています。この支援を受けることで、さらに資金面での安定性が増すでしょう。」


秋山が一般的な資金調達の説明を終えると、風間は軽くうなずき、冷静に反応した。

「なるほど、資金調達の基本は押さえられているようだ。事前の売却契約でリスクを抑える手法は、投資家にとっても安心材料だな。」


秋山はその反応を受けて、さらに深く話を進める決意を固めた。

「ですが、それだけではなく、私たちはリスクヘッジとして、複数の資金調達ルートを準備しています。これにより、プロジェクトが失敗した場合でも、リスクを最小限に抑えられるよう計画しています。」


風間が少し身を乗り出して興味深そうに問いかけた。

「複数の資金調達ルートというのは、具体的にはどういうものかな?」


秋山は笑顔を浮かべつつ、さらに踏み込んだ説明を始めた。

「例えば、私たちはドラゴンの捕獲を単なる素材の取得にとどめず、エクスペリエンスとして提供することで、観光業界やエンターテインメント業界からの資金調達も視野に入れています。」


風間は少し目を細め、軽くうなずいた。

「エクスペリエンスか。今の時代、それも確かに有効な手段かもしれない。」


秋山はその反応に安心しつつも、さらに続けた。

「具体的には、ドラゴンの捕獲プロセスをライブ配信したり、特別なツアーパッケージを提供することで、観光資源として活用します。例えば、捕獲現場をリアルタイムで体感できるVIPツアーや、ドラゴンの素材を使用した限定商品を提供することで、観光客やエンターテインメントファンからの資金を引き出すことができます。」


風間の表情が微かに動いた。彼の目が秋山に向けられ、わずかに興味がにじみ出た。

「それは面白い発想だな。捕獲プロセス自体をエンターテインメントにするとは…。」


秋山は風間の反応に自信を深め、さらに力強く続けた。

「さらに、捕獲したドラゴンをテーマにしたアミューズメント施設の建設も計画しています。こうした施設では、ドラゴンの再現模型や捕獲の体験型アトラクションを通じて、エンターテインメントとしての価値を高めます。これにより、さらなる投資を呼び込み、長期的な資金源を確保することができます。」


風間は軽く笑みを浮かべ、秋山に目を向けた。「その視点は意外性があるな。観光やエンターテインメントを絡めることで、プロジェクトのリスクヘッジだけでなく、追加の収益源まで確保するというわけか。」


秋山は笑顔を返しながら、さらに言葉を続けた。

「また、私たちが開発した技術そのものも、資金調達の手段となります。特に、耐熱素材や空中捕獲システムは、ドラゴンの捕獲だけでなく、他の分野にも応用可能です。この技術の特許を販売することで、さらに資金を確保する戦略を考えています。例えば、無人航空機の捕獲や、他の危険生物の管理にも応用できる技術として、他業界からの需要も期待できます。」


風間は再びうなずきながら、深く感心したように言葉を続けた。

「なるほど、ただの捕獲プロジェクトではなく、エンターテインメントや技術開発を絡めた、より広範なビジョンが見えてきた。これは、単なる投資以上の魅力を感じさせるものになりうる。」


秋山はその言葉に安堵し、さらに自信を持って結論に向かった。

「このように、私たちは複数の資金調達ルートを準備し、リスクを分散させると同時に、プロジェクトの成功を多面的に支える戦略を取っています。これにより、プロジェクトが失敗する可能性を最小限に抑えつつ、最大の利益を引き出せる体制を整えているのです。」


彼が話し終えると、チームメンバーの間に自信が広がり、風間もその戦略的な視点に納得したようにうなずいた。秋山の提案は、ただの資金調達以上に、プロジェクト全体の可能性と魅力を一層引き立たせるものであった。

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