第37話 繋がった真実
「久しぶりね、ミュウ。驚いたわ。立派な召喚士になって……こうして私の前に立ちはだかるなんて思ってもみなかった」
「どうしてお母さんがここに……ううん。そんなことはどうでもいい。お願い、お母さん。私と――」
一緒に父親の元に来てほしい。その願いを告げる前に、ネオシャイラが親子の間に割り込んできた。
「答えて、レミリアおばさん! おばさんが私たちの先生だったの!?」
苛立ちを感じるネオシャイラとは対照的に、ミュウの母親であるレミリアには動じてる気配はない。鋼のような精神力だ。
「そうよ」
「どうしてそんなことを……なんで私たちを騙したのよ!?」
恐らくシャイラにとって初恋だったんだろう。それが実は友達の母親でしたなんて受け入れるのは難しいに決まってる。だからこそ、ネオシャイラという人格を作り上げたんだから。
「それに答えるには長い話になるわ。でもそれは駄目! なぜなら今は試合中だからよ!」
少ないけどお客さんもいるわけだからな。運営としても立ち話を許容できないだろう。俺も話を聞きたいところだけど、この正論の前には引き下がらざるを得ない。
「でも条件次第では話をしてもいいわ」
「条件?」
「それは正々堂々と戦うことよ! あなたたち酷いじゃない! 幼馴染で協力して私を狙い撃ちするなんて! そんな卑怯な召喚士に育てた覚えはないわよ!」
「お母さん、それはちが――」
「言い訳しない!」
い、いかんぞ、これは。いつの間にか、レミリアのペースになっている。娘のミュウはともかく、シャイラまでたじろがせるとは。浮気して出ていったとはいえ、流石は母親の威厳だ。色々と誤魔化そうとしているのに、それを感じさせない流れを作り出している。だが赤の他人の俺がそうはいかせないぜ。
「たしかに俺たちはあなたの召喚獣を集中攻撃した。偶然の出来事だったが、次は正々堂々と戦うことを誓う」
ルール上、レミリアの召喚獣を回復することはできない。既にダメージの影響があるから、今更正々堂々を誓っても大した意味はないのだ。
「だからミュウの話を聞いてほしい」
ミュウを見て、話すように促す。ミュウは恐る恐るといった様子で口を開いた。
「お母さん、知ってる? お父さんのこと。お父さんは今、働きもしないで家にこもってるの」
「……知ってるわ」
「知ってるならどうして! それなら私と一緒に家に戻ってよ! やり直してほしいだなんて言わないから!」
ミュウの眼から涙が零れ落ちている。これまで我慢していたものが溢れ出てきてしまった。
「……ダメよ。あの人のところには戻れないわ」
「お母さん!」
あの人ってのは間違いなくミュウの父親のことだ。でもそんな他人行儀に呼ぶだなんて、本当に気持ちが離れてしまったんだろうな。でもそんなことで諦められるわけがない。俺もミュウを助けないと。
「レミリアさん。父親のためじゃない。ミュウのために少しだけ戻ってくれないか。あなただってミュウが心配だから、ミュウが一人で生きていけるように、召喚魔法をミュウに教えに戻ったんじゃないのか?」
「ええ、そうよ」
やはりそうだったか。ミュウに対する愛情は残ってるんだな。ちょっと安心した。指導は有料だったけど。
「不倫友達のチョコリーナに手伝ってもらって、魔法で性別を偽ったのよ」
そんな話は聞きとうなかった。一応チョコリーナは改心した風だったんだから、変なイメージで上書きしないでくれ。でも俺の想像は正しかったみたいだ。
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