三章 魔女の親子
第18話 一般的な話ではない
旅費を貯めた俺たちはティンパの町を出発した。
ティンパにミュウの母親の情報はなかったし、文字を読める人はいるにはいたけど、大農園のオーナーで金儲け以外の話をするつもりがないらしく、諦めるしかなかったんだ。
移動手段は徒歩だ。タイミングが悪かったのか行商はいなかったし、乗り合い馬車もなかった。
今のミュウは心身ともに充実してるし、そのおかげで俺も調子がいい。それでも目的地まで三、四日かかるから、無理することなく、今は水飲み場で休憩を挟んでいる。もちろん警戒は続けているので問題ない。まあ、モンスターは強さに敏感らしいから、相当お腹が減っているとかじゃなければ今の俺たちには向かってこないだろうけど。
「あ、誰かが俺たちに近づいてきてる。たぶん女の人だな。逃げるか?」
道中じっくり休める場所がないので怪我や病気は命取りだ。小さな問題が大きくなる可能性もあるから細心の注意が必要だし、戦わないという選択肢を選ぶことも重要だ。とはいえ、今の自信満々なミュウがそうするとは思えないが……。
「大丈夫ですよ。警戒しすぎてペースを乱すのは良くないと思います」
旅は始まったばかりだし、ミュウの言う通りではある。念のため、すぐにミュウを抱えて逃げ出せるように近くにいておこう。
「はぁはぁ、やっと追いついたわ……」
やってきたのは魔法使いだった。明らかにそれと分かる帽子を被っている。あどけなさを残していてミュウより明らかに若い。10歳ちょっとかな。疲れてそうなので水の入ったコップを差しだした。
魔法使いと召喚士は似ている。というか、召喚士だって魔法使いの一種だ。この間の講習で習った。様々な魔法が使える魔法使いと違って、召喚士はリソースを召喚獣との繋がりに持っていかれてしまうらしい。常時補助魔法をかけているので、他の魔法を使う余裕がないんだと。実際、戦闘中のミュウは俺に代わって周囲を警戒したり、敵を観察するくらいだ。
「ありがと。あなたたちトゥルンに行くのよね。途中まで一緒に行ってあげてもいいわよ」
魔女っ娘が上から目線で接してきた。まあ、魔女っ娘ってのはそんなもんだ。
「いや、大丈夫だよ。それに体力温存したいからね」
「なによ、それ! 私の相手は疲れるって言うの!?」
「違う違う。君のことじゃないよ。最近の一般論としてツンデレを相手にするのは疲れるんだよ。できれば体力に余裕があるときにしたい」
「ツンデレなんて、そこまで一般的じゃないわよ!」
ほう。この世界ではそうなのか。それでもうまいこと翻訳されるってことは概念自体はあるみたいだな。
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