第19話 旅する魔女っ娘
「まあまあ。落ち着いてください。まずは自己紹介でもしませんか?」
最近、余裕の出てきたミュウがそれを遺憾なく披露する。提案には俺も賛成だし、魔女っ娘も同意しているようだ。
「そうね。私はチュクリーナ。見ての通り魔法使いよ。まだ見習いだけどね」
「私はミュウ。幼馴染を越えた女、ミュウよ」
年下相手にアピールするなぁ。あとでどうなっても知らんぞ。もしかして、それを言いたいがために自己紹介をしようなんて言い出したのか。
「それでこっちが――」
「分かってるわ。あなたの召喚獣でしょ」
「そう、私の召喚獣でマスターのマスダよ」
魔法使いが仲間に補助魔法をかけるのは必要な時だけだ。だから戦闘中でもないのに補助魔法の形跡があり、なおかつ普通の補助魔法よりも強い魔法ならば、召喚士の魔法だと判断できるそうだ。魔力の流れに敏感な魔法使いなら当然分かるだろう。
「えっ? 召喚獣なのにマスター? 意味が分からないんだけど」
自信が表情に現れている今のミュウを見れば疑問に思うのも当然だ。それほどまでに今のミュウは充実している。幼馴染のシャイラを乗り越えたことでここまでの変化が見られるとは正直驚きだ。ひょっとしたら、俺がマスターと呼ばれなくなる日も近いかもしれない。
「話せば長いんだけど……」
「あっそ。それならいいわ。そこまで興味があるわけじゃないし。それでどうなの? 一緒に行く気はあるの」
少女といえど礼儀は大事だ。だがミュウは強く言えないだろう。ここは俺が前面に出て対応する。
「ないよ。それじゃあね。そろそろ俺たちは出発するから」
そう言ってベンチから立ち上がり出発しようとしたが、手を引っ張られて俺は引き留められることになる。チュクリーナではなくミュウによって。
「なにか事情があるのかもしれません。せめて理由だけでも聞いてあげませんか?」
旅をする見知らぬ相手、それも礼儀の鳴っていない魔女っ娘を気遣うミュウになんだか俺も嬉しくなる。これが成長か。
「そうだな。君みたいな小さな子が一人で山道を行くなんて、なにか理由があるんだろ?」
「……うん。実は私……お母さんを探してるの」
「ちょっと待って!」
「なんなの、いきなり大きな声出して」
なんだか嫌な予感がする。とりあえず心の準備が必要だ。深呼吸を繰り返して冷静さを取り戻す。
「悪い。待たせたな。ちょっと聞くけど、そのお母さんは浮気相手と出ていったとかじゃないよな?」
チュクリーナが首を横に振る。とりあえずは一安心だぜ。
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