「小指」他 堤千代 1940年上半期 第11回

 堤千代は従来の文献では直木賞受賞時は22歳と現在に至っても最年少受賞とされている。また、戦前唯一であり、更に本賞初の女性受賞者となった。

 「小指」は女性と負傷兵の儚い恋模様を描いている。染が指を切ったこと聞き、「わたし」は彼女に会うことにした。会うと、染は体験談を聞かせる。染は現代の杉田玄白と自称する軍医と知り合いなのだが、彼からとある負傷兵の慰問を頼まれた。病院にやってくると、負傷兵は腕を切り落とす前に女の手を握りたかったという。染は次第に彼に惹かれていき、付き合い始めるのだった……

 本作は、実を言えば第10回にも候補として挙げられた。その回は受賞が見送られ、半年後、その他の作品も参考に、「小指」を主に、業績によって受賞されたのだ。

 初の女性受賞者ということで、記録上重要な人物だが、彼女は生まれながらあった心臓病が原因で、僅か38歳のうちに他界した。

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