「秋田口の兄弟」「兜首」 大池唯雄 1938年下半期 第8回

 大池唯雄は東北出身初の直木賞受賞者となった。今や殆ど知られない作家だが、彼は自身の郷土の歴史から題を採った時代小説が多い。直木賞を受賞した2作もやはり、東北を舞台にした時代小説である。

 「秋田口の兄弟」。慶応4年、秋田藩と仙台藩との間で戦乱が勃発した。大槻三兄弟の雄三郎、貞太郎、兵太夫は仙台藩に従軍した。風向きは仙台藩が優位に就いているなか、次男の貞太郎腰を射たれてしまい……

 「兜首」。伊達政宗は二本松城攻撃を敢行する。いつも喧嘩ばかりしている源五兵衛と三郎八は政宗に付く。源五兵衛はある夜兜首を捕る夢を見て、三郎八は笑いものにする。合戦中、源五兵衛は躓いてしまい、活躍の場を失ってしまう。呆気なく勝利を収めてしまったため、源五兵衛は争いが続くように願った……

 いずれの作品も、生死を賭けた戦いとはいえ、ユーモア溢れる筆致となっている。また、敢えて主導者ではなく、それに付き従う無名の兵士に焦点を当てているところも共通の特徴だ。

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