「強情いちご」他 田岡典夫 1942年下半期 第16回

 第14回、第15回と、戦前期では早くも2度目の2回連続該当作なしが起きた。この事実は、戦前期こそが直木賞「冬の時代」であることを決定づけている。選考も当時の芥川賞と比べてもややいい加減な印象もあってか、まともな選考がなされなかったのか。


 田岡典夫の小説は、自らの故郷である土佐を舞台にした時代小説が大半を占めている。直木賞受賞作として掲げられている「強情いちご」もまた、土佐を舞台とした時代小説である。

 ある日、格之進の妹・佐代宛に峰村六之助からの恋文が届いた。真面目な六之助に妹を遣ることに、格之進に異存はなかったが、果し状めいた文に注意せずにはいられなかった。外を歩いていると、偶然にも親友にして六之助の兄・彌久馬とすれ違い、泳ぎに誘う。その間に彌久馬は、格之進が持っていた書物に手紙が挟んであることを偶然見てしまい……

 本作は強情を張り合うふたりの武士をユーモラスに描いている。しかし、その張り合いには紛れもない男の友情がはっきりと示されている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る