『ジョン万次郎漂流記』他 井伏鱒二 1937年下半期 第6回
第5回直木賞は史上初の該当作なしの回となった。
井伏鱒二といえばユーモアとパトスを交えた「山椒魚」や「屋根の上のサワン」などといった初期の短篇や、自らの故郷に降り掛かった災難を小説化した長篇『黒い雨』などの「純文学」で知られるが、実は彼も直木賞作家でもある。
受賞作として掲げられた『ジョン万次郎漂流記』は表題通り、ジョン万次郎の数奇な生涯を描いた中篇である。土佐で生まれ育った万次郎は、家計を支えるため、13そこそこで漁に出る。その途中で漁師仲間と共に難破し、無人島に漂着する。一行はアメリカ船に救助され、ハワイにやってくる。英語を身につけながら、万次郎は数度に亘って日本入国を試みるが、10年振りに帰国を果たす。こうして彼は幕末の日米交渉に活躍するのであった。
既に文壇で確固たる地位を築いた井伏鱒二だが、本賞に恵まれたのは、純文学のみならず、大衆作家としての才覚を認められたからであろう。ちなみに、彼は戦後では珍しく芥川賞と直木賞双方の選考委員も歴任している。
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