「天正女合戦」「武道伝来記」他 海音寺潮五郎 1936年上半期 第3回
第3回直木賞を受賞したのは、『西郷隆盛』『天と地と』などで知られる歴史小説の大家・海音寺潮五郎だ。しかし、彼が何の作品で受賞したかははっきりとはせず、「天正女合戦」「武道伝来記」等と挙げられたのであって、過去の業績全体を評価したのが実情である。ということでここでは明記された2作について言及する。
「天正女合戦」は秀吉が天下統一を成し遂げた桃山時代が舞台。肥後国で一揆が起こり、鎮圧を図るため、派兵を行っていた頃である。北の政所が世にも珍しい黒百合を手に入れたので、それを千宗易(のち利休)の娘・お吟に活けてもらうことにした。それは秀吉の愛妾が集う茶会で披露する予定であったが、その間にお吟は愛妾のひとりである茶々との行き違いで、茶々の怒りを買ってしまう。
茶会で愛妾たちに厳しく当たられた後、お吟は父の許に帰る。その頃、宗易の許に秀吉の使者がやってくる。娘を殿下が妻に迎えようと言うのだ。しかし、宗易はそれを断り、それを機に数奇の運命を辿っていく……
「武道伝来記」は武士が帯刀を許された時代に設定されている。和三郎は子供の頃の喧嘩をきっかけに、的場家の仙太郎を目の敵にしていた。大人になり、和三郎は幼馴染の美代に恋慕していた。父が倒れ、和三郎は父の秘めた思いを聞かされる。その後、和三郎と仙太郎はそれぞれ若殿付きを命じられた。
ある日、和三郎が付いた若殿の行列が仙太郎らに突き倒される。従者たちは闖入者倒しにかかろうとするが、和三郎は仲間を先に行かせ、自分だけが残ることを言う……
前者は史実を元にして、茶道の精神を貫き通す千利休の生き様を描いた歴史小説。後者は武道の精神に則って己の生き様を貫こうとする武士を描いた時代小説。いずれも逆光に立ち向かう男の生き様が生き生きと描かれる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます