直木賞受賞作解剖
龍姫
戦前
「鶴八鶴次郎」「風流深川唄」他 川口松太郎 1935年上半期 第1回
記念すべき第1回直木賞は川口松太郎の手に渡った。元々直木賞は対を成す芥川賞と同様に新人や新進作家に与えられるものだが、川口松太郎は当時既に界隈ではある程度名の知れた作家であったため、議論の焦点にもなった。以降直木賞は芥川賞と違って、界隈では既に著名な作家に渡ることが殆どとなった。
第1回早々、複数作に贈られている。いずれも明治時代の男女の恋愛模様を描いた風俗小説(卑猥な意味はなく)である。
「鶴八鶴次郎」。鶴八ことお豊は女の三味線弾きと鶴次郎は男の太夫は珍しい組み合わせの若手の新内語り。若手でありながら名人と評されたふたりだが、初めて旅に出た際、お豊は鶴次郎にそろそろ身を固めたいという思いを伝える。結局お豊は料理屋に嫁いだ。3年後にふたりは再会を果たすが、その時鶴次郎はすっかり零落れてしまっていた……
「風流深川唄」。老舗の相席料理屋「深川亭」の看板娘のおせつとそこの料理人をしていた長蔵。ふたりは結婚を考えていた矢先に、おせつの父・伊三郎が多額の負債を抱えていることが判明。「深川亭」は存続の危機に瀕し、やがておせつと長蔵の間柄が縺れていく……
さて、川口松太郎は、特定の作品によって受賞に至ったのではなく、その業績で評価されたと言った方が妥当であろう。一応受賞作として掲げられている「鶴八鶴次郎」は選考対象期間外にあり、本人は「風流深川唄」が評価されたと後に述懐している。
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