第13話 見舞い
「あ、起きた」
「…………」
「だいじょーぶ? 瀬川くん」
目を開けると、誰かに覗き込まれていた。ぼやけた視界がゆっくりとクリアになっていく。視界に映ったのは数日前からよく見かけるようになった顔だった。
「あなたは……」
「松尾田凱くんだよ。君、お母さんに刺されかけたの。記憶はある?」
「はい。あります」
「おっと、動かないでよ。君結構重症だから」
「え?」
体を起こそうとしたらかなりの形相で止められてしまった。今いる場所は病院のようで、僕の腕から伸びた管は点滴に繋がれている。ベッドの周りは色々な機械に取り込まれているようだった。見たこともない機械には液晶画面が取り付けられている。設備の整った、結構いい病院かもしれない。個室のようだし、昔ドラマで見たような広い部屋だった。
「過労だし、栄養も足りないし、大怪我してるし、ストレスもやばい。高校一年生のくせに身体ボロボロだってさ」
松尾田凱は指をゆっくりと折りながら僕に微笑んでくる。なんとなく目は笑っていない気がした。
「ああ……そう、ですか」
「ぷっ……他人事すぎでしょ」
ぼうっとしながら答えると彼に笑われてしまった。何か変なことを言ったのだろうか。それとも面白い顔でもしているのかな。
「凱。病人の前で騒ぐな」
「神矢くん」
「具合はどうだ? まあ良くはないだろうが」
また視界に人が増える。現れたのは葬儀屋で会った神矢という三年生だ。葬儀屋の息子でものすごい不良って噂の。どうしてここにいるのだろう。そもそも凱も僕が目覚めるのを待っていたみたいだった。いったい何故? そう考える間に僕の脳内にすぐに答えは浮かんだ。
「えっと……あ、返済!」
「は?」
僕は葬儀屋への支払いがまだ終わっていない。神矢は葬儀屋の息子で、凱も親しくしているようだった。大人が取り立てると僕が追い詰められるとかの配慮で、彼らが監視役なのだろう。そんなことをしなくてもさっさと返済できるのに。
「お手を煩わせてごめんなさい。僕が早く返済しないと先輩方は僕をずっと見張らなきゃいけないんですよね」
「えーっと? 何言ってんの?」
「え?」
「冗談言ってんじゃないなら怒るけど? ……この強面神矢くんが」
「おい」
二人は僕の言葉を聞いて驚いているようだった。僕の導き出した答えはどうやら違うらしい。じゃあなんで二人はここにいるのだろう?
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