ダリテア・スピアーズ
らーじ
1−1(重複投稿)
目を覚ましたら、そこはうっそうと緑一面の森。
私は、ここはどこだろうと歩く。
途中、枝や石ころで転びそうになるが、注意しつつ、なんとかこの森を脱出するんだという思いで、一生懸命に歩く。
一体、どこをどうしてこの緑の空間に迷ったのか、私でさえも知らない。
歩いても歩いても、そこは緑一面の森だ。
ぐーとお腹が空く。
私は何か食べ物があるかなと、辺りを見渡す。
手には何も持っていない状態だ。
しかし、カーディガンのポケットを見たら、何か入っていることがわかった。
ポケットから出したそれは、飴玉一つだった。
しかも、それはのど飴だ。
確か、今は風邪を引くような寒い季節じゃなかったはず。
たまたま入っていたのである。
私はしょうがないので、のど飴で、空腹をしのぐ。
絶対にしのげるわけにはいかないが、口元が寂しいためにだ。
そんなときに、ふいに向こうから声が聴こえた。
ハスキーな男性の声である。
やっと、私のような人間を見つけた。
「待てーっ!!このデカブツめーっ!!」
その声の持ち主が誰かと探し始めた。
「危ないっ!そこの君っ!後ろに気をつけるんだ!」
と、その声に従って、後ろに振り向くと、そこには中ぐらいの毛深いイノシシが息を上げて突進してきたのだ。
すぐさま、私は慌てて逃げようとする。
そんなときに体がフワッと宙に浮いた。
“空を飛んでいる!?”
しかし、誰かの手が私の膝裏を触っていることに気が付く。
私よりもごつくて大人な手。
その手の正体をサッと見上げると、そこには赤紫の髪に覆われた青年の顔が私の視界に現れる。
「よっー!大丈夫かい?お嬢ちゃん」
さっきのハスキーな声もこの男性からだ。
しかも、男性は私を抱えて、空を飛んでいるのだ。
「ちょっと、やめてください。何するんですか!」
私がじたばたと手を振い、そして男性の顔に引っかく。
「いてっ!」
ふと、男性の前髪がフワッと動き、眼帯していることに気が付く。
男性は慌ててしまい、
「ちょっと待っていろ!」
と言いつつ、私を抱きかかえた男性は地面に着地した。
イノシシがいる場所とは違い、斜めの方向に。
私をすぐにその場所に置いて…。
「必殺!エテアーデ・パープラ!」
眼帯の男が何かつぶやくと、その場に漆黒のオーラが発動され、それがイノシシを取り囲み、縛る。
イノシシは縛られると、同時に気絶してしまった。
「あ、あの、ありがとうございます」
私はそのイノシシを持ち上げようとしている眼帯の男に駆け寄ると、すぐさまに礼を言う。
「なーに。どうってことないさ~。
これ、あとで食い物にするからさ~」
と、イノシシを見事に担ぐ。
「でも、お嬢ちゃんみたいな可愛い子がこの辺にいると、危険だよ~。
この森のイノシシは凶暴だからね。
とりま、俺についてきなさいな!」
なぜか半ば強引について行くことにされてしまった私。
しぶしぶ、ついていくことに。
「あ、あの、よかったら名前はなんと言うのです?」
私が危険を承知したうえで、さっきの魔法のような発動が下手に私に降りかからないようにと、気をつけて、その眼帯の男に名前を聞く。
「あ、俺か。丁度、俺もそう思っていたんだよね。
俺の名前はダリネ。ダリネ・スピネルド。
ダリネって呼び捨てで構わないからね。
お嬢ちゃんは?」
ようやく眼帯の男の人の名前を教えてもらったのでよかった。
でも、何気にお嬢ちゃんと呼ばれ、カーッと顔を少し真っ赤にする私であった。
「私はルエ。小野崎ルエ」
「オノザキ?なにそれ?もしかして、語源からして、ニホンジン?」
ダリネが私がどこの国から来たのかと瞬時に気がつく。
「そうです、よくわかりましたね」
「なんとなく、相方から言われて、少し勉強したんで。
実はすごく興味あるんだよね、その国」
そして上空を向くダリネ。
「でも、もう二度と行けないけどな、まあ、階層旅行執行員から許可を取らない限り、難しいけどな。あと、神様とか。閻魔大王様と大天使と」
え…?
彼が何を言っているのか全くわからない。
神様とか閻魔大王様って何?
そしたら、私はもしかして、と思い、身体の底からブルブルと恐怖で震えてきた。
「俺っちの家に着いた。まあ、詳しい話は俺の家で話そうか~!」
ダリネが楽観的に話しているが、こっちは真相を知りたい。
(もしかして、この世界って…。私は…。)
覆いに茂る森の中には辺り一面に木が切り取られたかのような場所があり、そこにポツンと木造というマルタで積み上げた家が建っていた。
「お帰りなさいませ、ダリネ様」
ドアから見知らぬ青年が出てくる。
どうやら、ダリネを待っていたかのようだ。
その青年は水色髪でサラサラヘアーで、女性をも負けてしまうであろうほどの超美形であった。
だが、困ったことに、なぜか和風メイド姿でいることだ。
(女装クセのある方?)
その青年に惚れつつも、私はすごいとまどってしまった。
「あ、こいつはセテア。俺の相方で、俺のメイドのようなものだ。
へへっー!」
「相方って!?メイドって、えええっ!?」
私は驚く。
「俺が家事出来ないのを承知の上で、家事分担はこいつが全部している。
生計は俺の分担だけど。
メイドは俺の趣味なの。
あ、すごい変に思ったでしょ?」
当たり前だ、超美青年をメイド姿にして面白がる人がこの世界にはいるかもしれないが、このダリネが実際に会ってみて初めてだ。
って、この世界って…?
「あ、余計疑問に思っているね」
「ダリネ様、この方って、もしかして、さ迷い人ですか?」
「そうらしい」
2人でぼそぼそと何か話し合っている。
そして、すごい困ったという顔をしている。
「俺、実はこういうの初めてなんだよ。
上の奴らがあの子に対して何するかわからねーからな、正直、ビクビクするわ~」
と、ダリネの顔が少々真っ青になっているのが感じられた。
ダリテア・スピアーズ らーじ @keiha_ft18117
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