第2話



女性で30前に係長になったのは社内初。

末席とはいえ管理職になった私は、いいなと思っていた人の上司になってしまいました。

そして同時期、そのいいなと思っていた人は笑顔の可愛い受付嬢と婚約。

お母さん、男を落とす為に必要なのはキャリアじゃなくて可愛げの方だったみたい。


もうね、こうなったら仕事に邁進しますよ。

役付きの私がうっかり部下に「好きです。付き合って下さい」なんて言った日には、ヘタしたらパワハラで訴えられるかもしれないし。

一生独身でもどうにかなるようにお金だけは貯めておこうと心に決めて、それ以来資格も取り捲ったし、残業も勿論するし週末に掛かる出張だって引き受けている。

まあそれでも「係長が遅くまで残業してたら俺ら帰りづらいッス」という部下の声を聞いて、19時以降は残らないようにはしているけど。

そして、会社を出て電車に揺られて20分に徒歩7分。



「はあ・・・」



今日も今日とて疲れたOLがワンルームマンションに帰ってきましたよーだ。


ブルーグレーのビジネススーツと、足を締め付けてたストッキングを脱ぎ捨て、ベッドに倒れる。

途中のコンビニでサンドイッチとシュークリームとヨーグルトを買ってきたけど、それも食べる気力も殆ど無い。

けど。


ああ、化粧は落とさないと・・・。

クレンジングもしないで寝た日にゃ、明日のお肌がボロボロだ。

もうピチピチじゃ無いんだし。



「あー・・・」



のろのろと起き上がり、下着姿のままバスルームへ。

見せる相手もいないのに、特に物欲も無いしお金を使うところも無いからと、少し値の張る可愛い下着を買ってみてはいるけれど、この疲れた顔にピンクのレースが似合わない事この上ない。

鏡を見てガッカリした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る