2、母

私を友達と思っていなかったのか、、、

先ほどの彼女のことが、頭から離れない。


複雑な気持ちを持ち込んだまま帰りの電車に揺られる。このモヤモヤを原宿に置いて帰りたかった。


家にこんな負の感情を持ち込みたくない。ああ、私は彼女に対して苛立ちを覚えた。よくもこんなに悩ませてくれたなと。


お金のために利用したであろう彼女も彼女だが、私も私だ。さっきまでは、友達じゃなかったのかと悲しんでいたはずなのに今は怒りの感情が燃え盛っている。ずいぶんコロコロと変わるココロだ。


電車の窓から見える風景に緑が増えた頃、彼女のことよりも自分の機嫌の変わりように関心を持ち始め、少し穏やかになっていた。


そうだ、今日の夜ご飯はなんだろう。楽しみだ。なんたって、私の母が作るご飯は世界一美味しいのだから。


私は、母と二人暮らしだ。母は、いわゆるシングルマザーであり、物心つく前から私を1人で育ててくれた。


そうこうしているうちにもうマンションの前についていた。


マンションの階段を一段上がるたびにさっきまで私にまとわりついていた負の感情がスルスルと取れて、肩の周りが楽になるのを感じる。


「ただいま!!」


「あら、おかえり。今日は随分と元気ね!

お風呂入っちゃいなさい。お母さんさっき入ったばかりだから、まだ冷めてないはずよ。」


「はーい」


ちょうどお風呂に入りたかったところだ。尾行なんかしていたせいで汗だくだもの。


お風呂で汗を洗い流し、心身ともにさっぱりとさせていた。


脱衣所には、キンキンに冷えたコーヒー牛乳がそっと置かれていた。

なんて気がきくのだろうか、母は。

やはり家は最高だ。



ブーブー



ん?


ブーブーブー



ああ、なんだ。コーヒー牛乳の隣にあった母の携帯がなっていた。ここに置いたまま忘れてしまったのだろう。


それにしてもすごい通知の量だ、、、あれ?


このラインのアイコン、、、彼女じゃん


なんで?なんで、母が持っているの?


ブーブー


彼女?からのメッセージが鳴り止まない。


本当はこんなのいけないんだろうけど、今日昼間に感じた違和感と同じようなものを感じたため、そっとメッセージの内容をみた。


(今日もご依頼いただきありがとうございます。


では、今回のお子様のご様子とお話しされたことをご報告します。

お子様、とても明るく楽しまれていましたよ。

最近は、お風呂の後にコーヒー牛乳を飲むことが楽しみなんだとか。

     、

     、

     、

今回の原宿プランのお支払いに関しては例のパスタ屋で受け取りました。


また、今回ご利用された追加プランの件ですが、


お子様はお母様と血が繋がっていないことを勘づいている様子はございませんでした。、、、、

、、、)


、なんなんだこれは、


彼女と母は繋がっていた。というか、あのお金は母からなのか。私以外の人たちも彼女に依頼したということか。


というか、母と私は実の親子じゃない?


全部全部嘘だ嘘だ。そうだよ、きっとそうだ。


ブーブー


いいえ、違いますよとまるで私に訴えかけるように通知音が鳴り響く。












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