つかさは無自覚に照れさせる
「ふぁぁああああ。学校に行くなんて約束、しなければ良かった」
俺は早速学校に行くことを決めたことを後悔していた。土日で夜遅くまでみんなとゲームをしていたせいで、かなりの寝不足だった。朝、学校に行くために早起きをしたのは良いものの、メチャクチャ眠い。こりゃ早速授業中に居眠りしてしまうかもと思うほど眠かった。
駅から学校までの登下校路をふらふらと歩く。あっちに行ったりこっちに行ったりしていると、後ろから声を掛けてくる人がいた。
「あの……フラついてますけど、大丈夫ですか?」
振り返ると先日ダッグの話で盛り上がった女子がこちらを心配そうに見ていた。彼女の名前は高峯つかさと言うらしい。奇しくも、普段、俺とゲームをしている友人と同じ名前だ。まあゲームの名前はハンドルネームの可能性があるから、現実でも同じつかさとは限らないんだけど。でもどちらのつかさもゲーム好きっぽいし、なかなかの偶然だった。俺は立ち止まり、彼女が横に並ぶまで待つと、頭を掻きながら言った。
「いやぁ……昨日は夜更かししすぎて」
俺が言うと、彼女はどこか嬉しそうに言った。
「あっ、それなら私も昨日一昨日と夜更かしのしすぎでなかなか眠くて! 同じですね!」
これはもしや運命かな? 俺のゲーム友達と同じ名前で、かつ夜更かししているところも同じ。好きなゲームも似たり寄ったりだし、運命感じるな。これは一緒にゲームをやれってことでは? うん、間違いない。ここはちょっくらゲームに誘ってみるのも良いかもしれない。
「それってもしかしてゲームで夜更かしした感じか?」
「はい、そうですね! ついついやり過ぎちゃって……」
「そうか。それならそこも俺と同じだなぁ」
そう言った後、俺は一瞬誘って良いものか躊躇してしまったが、意を決してゲームに誘ってみることにした。
「なあ……それなら一緒にゲームしないか?」
しかし、俺の言葉につかさは少し考えた後、申し訳なさそうに言った。
「ごめんなさい……。私、固定メンバーがいて一緒にゲームする時間はなかなかないかもしれません」
「そっか、そうだよな。それなら仕方がないか」
誘って断られると少し落ち込むが、固定メンバーがいるなら仕方がない。ポッと出の俺よりも長い付き合いっぽいそっちを優先した方が絶対に良いからな。それに彼女も本当に申し訳なさそうにしているし、嫌な感じは全然しなかった。そう思っていたら、つかさがポツリと小さな声で一言。
「やっぱり……他の男の人とも一緒にゲームなんてしたらユウさんに申し訳ないですよね」
「…………ん? なんて?」
ユウ? ユウってそれ、俺のことでは? いや、思ってたよ? 俺のゲーム友達のつかさと、こっちのつかさの共通項がありすぎるって。中学三年で同じ名前で同じ時間にゲームして夜更かしして、同じようなゲームを好んでプレイして……似過ぎじゃねとは思ってたよ? でも通話越しと現実の声は大分違うし、そんな偶然なかなかないよなと思ってたから、流石に考えすぎだと思い込もうとしていた。だが、俺のゲームでのハンドルネームが彼女の口から出てきて、俺は確信したね。この子は俺がいつも一緒にゲームしている女の子なんだって。
「ああ、すみません、ちょっと口に出しちゃってましたか。……ええとですね、いつも一緒にゲームをプレイしている男性の方がいるんですけど、祐二さんと一緒にプレイしたらちょっと彼に申し訳ないかなって」
何で申し訳ないってことになるのかは分からないが、多分それ、どっちも俺だぞ。そう伝えるか悩んだが、悩んでいる間につかさがハッと気がついたように口を手で押さえ、それから言い訳するように早口でこんなことを言い始めた。
「あっ、申し訳ないってのは、別に付き合ってるとかそう言うのではないのですが、私、実は彼のことが気になってまして……。気になるって言っても、好きかどうかまではまだ自分でも分からないんですけど、彼の声を聞くと胸がドキドキしてくるというか、話しているだけで楽しいというか、もっと一緒にいたいというか、ペロペロしたいというか……とにかく彼のことを意識してしまっていて、彼の男性の方と以外とゲームするのはちょっと罪悪感があるというか、何というか……」
……え? そうなの? マジで? 俺のこと意識してるの? 待って、それ俺の前で言わないで。いくら俺がゲーム人間だと言っても、そんなこと直接言われたらちょっとすっごく恥ずかしくなってくるから。マジ、顔赤くなってないかな。ヤバい、体温が急に上がった気がする。暑くなってきた。マジかよ、意識されてたのかよ。いやね、そりゃ嬉しいよ? 嬉しいけど、いきなりすぎて頭の処理が追いつかないというか……。それにつかさ、俺がユウだって気がついてないよね、絶対。俺がユウだってバレたらヤバくね、これ。絶対つかさに恥を掻かせてしまう。マズい、どうしよう……。
パニックになって頭に色々な考えが浮かんでは消えていく。そのせいで俺の足が止まり、立ち止まっていると先に進んでしまっていたつかさが振り返って首を傾げた。
「あれ、どうしましたか?」
「いっ、いや、何でも!」
俺は大慌てで首を横に振りつかさに追いついた。
「あっ、それでですね、そのユウさんってのが、私たちオタク女子にもとても優しくて、その上ゲームも強いし声も格好いいし、話してて楽しくてですね――」
俺が追いつくや否や、早速
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