第六話 魔王激高

スカー・ブルート「貴様はいったいなんなのだ!なぜ人間風情ムシケラがこれ程の力を持っているのだ!?」

神「俺はお前ら魔を払うために来た転生者だ!」


嘘はいっていない。ほとんど強制的に連れて来られた気もするが、やろうとしていることはそういうことだ。


スカー・ブルート「て、転生者だと…?勇者の類か…?いや、だがあれは召喚を用いたはず…」


勇者?召喚?何を言ってるんだ?もしかして、俺のほかにも異世界に来ている人がいるのか?だったらなんで俺はこの世界につれて来られたんだ?

魔王も混乱している様子だが、いろいろな疑問が出てきて頭がこんがらがってきた。


スカー・ブルート「どうやら…貴様は確実に消さねばならないようだな」


魔王の目つきが変わる。まだ何かあるのか?だが、たとえどんな手段で来ようとこの力があれば対抗できる!


スカー・ブルート「どうやら貴様は先ほどの戦闘で我に勝てると確信しているようだな」


神「片腕切られておいて何言ってんだ」


スカー・ブルート「腕の一本や二本なくった程度、どうということはない」


そう言って魔王が腕に力を集中すると影のようなものが集まり腕が再生した。まあ、よくある再生能力だな。次は一撃で仕留めればいいだけの話だ。


スカー・ブルート「貴様は確かに強い、我を圧倒する程にな。だが、戦闘経験はあまりに拙い、力任せで単調な攻撃ばかりだ。何よりも常に後手の戦い、死闘において後手を選ぶことは死に直結する」


神「そんな奴に圧倒されるなんて世話ないな」


スカー・ブルート「ふん、思い知るがいいこれが我と貴様の圧倒的な経験ちからの差だ!!!」


そう言って魔王の目じゃ真っ赤に光り、禍々しい黒い魔力で全身が覆われた。変身、第二形態、どちらにせよ魔王は真の姿になるのだろう。俺は気合を入れて構えなおした。

黒い魔力から姿を現した魔王は一層禍々しい姿となり、何よりもさっきよりも戦闘に特化した姿となっていた。


スカー・ブルート「シャドーボール・影の雷撃シャドウボルト闇刃の舞ナイトシザーズ


一度に複数の魔法の同時詠唱、さっきよりも桁違いの物量が一気に襲い掛かってくる!だけど―。


神「また同じ攻撃なら意味ないぜ!このワンパターン野郎が!!」


白虎の姿になり、弾幕の中を駆け巡る。確かに、すごい量だ避けきれないわけじゃない。


スカー・ブルート「そうだな。先ほどと同じでは芸がない」


いつの間にか魔王は俺と並走をしていた。一瞬、目を放した時だろうか?それにしても速すぎる。とにかく、一旦距離を取らなくては―。


神「くそっ!!朱雀!!!」


朱雀の姿に変えながら後ろに飛ぶ。多少被弾してしまうが、朱雀の翼を使えばダメージを最小限にできる。


スカー・ブルート「被弾覚悟で距離を取るか。実に甘い選択だ」


距離を取った魔王の姿はまるで煙のように消え、距離を取るために飛んだ先に現れ、背後を取られてしまった。そして、先ほど放った魔法の弾幕をすべて右こぶしに集約し、強力な一撃を放った。翼でガードをしたが貫通され、一撃を食らってしまう。地面に吹き飛ばされ、衝突した地面はクレーターのようにへこみひび割れ、今度は俺が吐血をしてしまった。

口の中に血の味が広がる。初めて食らう魔王のまともな攻撃は想像以上で、そのダメージは深刻だ。あばらが折れているのだろう腹部の痛みがそれを物語っている。


スカー・ブルート「貴様は確かに強い。だが、どんなに強大な力も貴様自信が未熟では、宝の持ち腐れというものだな」


神「ぐ……くっ……」


スカー・ブルート「その強大な力から貴様は必ず先手ではなく、後手を選ぶ。相手の動きを見てなどと聞こえはいいが、それはつまり思考も行動も相手より一歩遅れることを意味する。その一歩が死闘において埋めようのない差となるのだ」


魔王がゆっくりと近づいてくる。チャンスは一度きり、ダメージが深刻で立つことすらままならない。なら、あいつが近づいた瞬間に全力の一撃で魔王を倒す!

魔王は俺の前で足を止める。今だ―!俺は持てる力をすべて注ぎ込んで青龍の力を解放し、魔王に決死の一撃を放つ!


神「絶影双断ぜつえいそうだん!!」


全力の一撃で魔王を切り裂いたと思ったその時、切り裂いた魔王の一歩後ろに魔王が立っている。そう俺が切り裂いたのは魔王の作り出した幻影だった。


スカー・ブルート「だからつくづく甘いというのだ!」


魔王は俺の首を掴み持ち上げる。


スカー・ブルート「奇襲のつもりだったか?だが、それすらも我の策の範疇!あえて、奇襲を仕掛ける隙を作ったのだ!なぜなら、その姿が最も魔法抵抗力が低いのだからな!シャドーボール!」


神「ぐぅああああああ!!」


スカー・ブルート「ふん、だがこのまま貴様を殺してしまうのは実に惜しいな。どうだ、名も知らぬ人間よ。我のもとに来ぬか?」


神「な…なに?」


スカー・ブルート「転生者と言ったな?どうせ、どこぞの神かなにかにそそのかされたのだろう?そうだな。我ならば貴様を元の世界に返してやれるかもしれん。どうだ、悪い話ではないだろう?そうれば、こんな戦いなどする必要もなく、我の右腕として忠誠を誓いこの世界を滅ぼした後、貴様は平和な元の世界に戻ればいい。さあ、我と共に来るのであれば、手をとれ」


俺は迷っている。この世界に強制的につれて来られ、自分の力も理解する前に、いきなり魔王の前に来て激しい戦いをするはめになり、今こうして死にかけている。ゲームや漫画なら仲間が声をかけてくれたり、助けてくれたりするだろうが、俺にはそんな仲間なんていない。この世界のことも何も知らないし、義理もないんだ。何よりもこんな選択を迫られているのに、なんで四神あいつらは何も話しかけてこないんだ!?来る前は人の話など聞かずに勝手にやってたやつらが、今はなんの反応もない。


『俺は…俺は……』


俺はゆっくりと手を伸ばしていく。それを見た魔王もにやりと笑った。その時だった。俺の脳裏にあの映像が甦る。あの夢の映像が―。


『……けて……』


『たす……て……』


『助けて!!!』


俺は我に返り魔王の手を払いのける。


スカー・ブルート「どういうつもりだ?」


俺はボロボロの身体に気合を入れて立ち上がろうとする。


神「確かに、俺はこの世界にも四神あいつらにも何の義理もねぇ。何も知らないからだ!…だが、一個だけわかることがあるんだよ…。夢でみた映像…お前ら魔族が人間を襲っていた!そして俺に助けを求めていた!…名前も知らねぇ会ったこともない人だが、それでも、俺の眼にそれが焼き付いてはなれねーんだよ!!!」


スカー・ブルート「それだけのために貴様は戦うというのか?」


神「それだけで十分だ。俺がお前らと戦うのにそれだけで…。俺がこのちからでお前らを祓ってやる!!」


俺の決意と想いによって新たなステージに上るために光に包まれ、それは柱となって立ち上る。



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転生者よ~其の眼を以って異世界の魔を払え~ @mariannusama

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