32 仮面の告発
文化祭2日目は、それぞれに盛り上がりの中で時を移していった。いつしか15時を過ぎ、外部からの客はみんな帰って行った。なんとなく手持ち無沙汰になったので、今のうちにと記念撮影する生徒が増えた。麗人も、吸血鬼の仮装のまま、シャングリラの仲間たちと写真を撮った。
明日は体育祭だ。今日この後のホームルームが終了すると、……当然のように、明日の体育祭を控え、各チームごとに集まるわけである。暗くなってしまって競技の練習はできないとしても、応援の練習や各種打ち合わせ、申し合わせはできるというわけだ。どうもこの時期、3年生が体育会系になってしまったような雰囲気である。
文化祭の日程が終了時刻を迎え、生徒たちはホームルームを控えて、仮装を解いて制服に着替えた。今日の
仮装から制服に戻った生徒たちは、わずかな時間で最小限の片付け作業を始める。2年4組の教室でも、教室内部の片付けを優先して行っていた。といっても、明日の体育祭の後、記念撮影をするチャンスがまだあるから、放置していたら支障のあるものだけだ。それに椅子は、明日の体育祭でグラウンドの応援席に持って行かなくてはならない。
ひとまずホームルームにそなえて、机と椅子を元通りの場所に戻す。
「黒川、くん」
騒ぎの中、
「お客さん」
「……あぁ?」
粗雑な態度で、黒川はもそもそと歩き出した。それだから女子にモテないのよ、と心の中でツッコミを入れつつ、麗人は黒川を見送って、おやと思った。吉野のいるドアの向こう、廊下にもうひとり女子がいる。黒川に用事があるというのは彼女だろう……2組の
そういえば、今日は
死神から制服姿に戻った
「仮面あった」
「ああ、よかったじゃん」
麗人がそう応じると、小林の顔がさらに渋くなった。
「誰か使ってる」
「えええ」
小林が差し出した仮面の裏には、どうも皮脂汚れのようなものが、べったりと付いていた。偏見だが、ある程度以上の年齢の男性がつけたのではないだろうか。
「もう使いたくねえ。まあ、もう文化祭ほとんど終わったからいいけど」
「どこにあったの」
「校門の近く。おれ仮装してからは、そんなとこ絶対行ってない。誰か勝手に持って行ったんだ」
「うわあ、お気の毒」
ほかにどうも言えない。麗人はぽんぽんと小林の肩をたたいてやった。
誰かがどこかで小林の仮面を拾って、仮装気分を味わいたかったのだろうか。それにしてもその人物、どこで拾ったか知らないが赤の他人の仮面なんて、よく使う気になれたものである。
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