13 6÷4=

 明洋めいよう高校は、1学年6クラスである。これに対して、体育祭のチーム分けは、赤白青黄の4チームだ。これが非常にメンドウな事情を招いている。


 そもそも、学祭を運営する組織からして、ややこしいことになっている。説明せねばなるまい。


 まず、生徒会の執行部と、2学期に各クラスから1名ずつ集めた、この全員をまとめて「学祭実行委員」と呼ぶ。本来、執行部もひっくるめての名称であるが、だいたい執行部は執行部と呼ばれることが多い。2年4組では体育館でステージリハの進行管理をしていた立花たちばな和斗かずとが、この学祭実行委員に該当する。


 クラス単位では、各クラス2名ずついる2学期の総務委員に「学祭クラス委員」という肩書がさりげなく乗せられる。2年4組では妹尾せのお雅之まさゆき加藤かとう鳴美なるみがこれに該当する。彼らは学祭において、自分たちのクラスを仕切り、まとめなくてはならない。といってもクラス単位で行動しなくてはならないのはほぼ、2日間の文化祭だけである。クラス単位での参加が任意となっている3年生は、参加する場合のクラスのみ、学祭クラス委員が置かれる。今年は3年生どのクラスも不参加なので、いない。


 ややこしいのは体育祭だ。明洋高校では、各学年とも6クラスを抱えている。これを4つのチームに分けて、体育祭を行うのだ。「とりあえず1~4組を4つのチームにして、5組と6組を4チームにテキトーにふりわければいーんじゃん?」とは単純にして能天気な発想だが、「それじゃ公平性を欠くだろう」というもっともな反論でもあったのだろうか、どういうわけか各クラスの生徒をそれぞれ4つのチームに分けるという非常にメンドクサイ方式が、連綿と続いている。つまり、体育祭においてはクラスごとにまとめるというやり方が困難なのだ。「誰がこんなヤヤコシイ仕組みにしやがったんだ」とは毎年生徒の間で騒がれる文句ながら、クラスが6つずつで色分けが4つという体制はどうにも傾かない。何年かずつの周期で「体育祭のチーム分けは2チームにしてはどうか」論争が起こってきたらしく、十何年か前には実験的に一度そうなったことがあったものの、各方面から不評だったのか、それとも別の深刻な不都合でもあったのか、結局もとの体制に戻っている。「いっそ生徒人数増やして8クラスにすりゃいいのに」も、ほぼ毎年聞かれる生徒のグチである。


 そんなわけで、やはり各クラスに2名ずついる2学期の体育委員が「体育祭運営委員」なる肩書をこっそり押しつけられる。彼らは体育祭専任の委員であり、上位組織である「学祭実行委員」と手分けして、準備や当日の運営を行う。彼らも、自分の所属するチームのために不公平なことをしてはならないのだ。これは3年生も含まれる。そして、4つのチームごとには、リーダーとサブリーダーが3年生から選ばれる。チームはさらにそれぞれ、各学年ひとりずつ、「連絡係」が選定される。もちろん、チームごとの連絡を各学年のメンバーに行きわたらせるためだ。これも、学祭実行委員やクラス委員や体育委員とは重複しないように選ばれる。


 これらの顔ぶれが一堂に会する「学祭運営連絡会議」は、かなり壮観だ。執行部4人、学祭実行委員(各クラス1名ずつ)18人、学祭クラス委員(各クラス総務委員2名、不参加の3年生を除く)24人、体育祭運営委員(各クラス体育委員2名)36人、各チームのリーダーとサブリーダー8人が集まる。以前はさらに各チームの連絡係12人も参加していた時代もあったが、さすがに多すぎるということで(場所の確保もたいへんである)、現在は連絡係は呼ばず、必要事項は各チームのリーダーから連絡係へ伝達されるようになった。それでも百人近い。全員が招集される会議は2、3回とはいえ、出席するだけで疲れそうである。


 というわけで、体育祭当日にさきがけて、3年生から「○チームは集合!」という指令が下されると、クラスによって、応じなければならない生徒とそうでない生徒がバラバラだということになるわけだった。2年4組に「赤チーム集合」と伝令が入って、木坂きさか麗人れいと津島つしま亮子りょうこが急ぐ一方、「行ってらっしゃーい」と見送る生徒もいるというのは、こうした事情なのである。

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