06 見回り猫
靴を脱いで上がった江平は、玄関近くの机のそばに置いた紙バッグに、今しがた拾った
さらに江平はネクタイを外した。どうもこのネクタイというのは苦手で、どこかしらが
ほかには靴下を脱いだだけで、あとはそのまま、ためた洗濯物と、使用済みの弁当箱と、入浴の用意をぶら下げて、下駄を履き、再び鍵をかけて離れを出た。細い道路を横切る。道のどん詰まりなのだから、ここまで入ってくるのは、
近い方の、滴中寺の門へ向かい、くぐる前に軽く一礼する。さすがにお堂は閉ざされていて、外灯の中にひっそりと佇んでいるが、ここへも一礼する。大きな
「なんだ、お前か」
江平の下駄の音が乱れた。1匹の猫が、静寂の
「怪しい人物は見かけておらぬか」
見向きもせず、猫はそっけなく、なーん、と応じただけで、姿を消してしまった。見回りの最中だったのかもしれない。フクはいわゆる「地域猫」である。
フクが見えなくなると、江平はかすかに笑って、再び歩き出した。
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