#331

 目を開ける。

 国語の先生が教室を出ていくところだった。どうやら五時間目が終わったところらしい。

 携帯を確認すると、前回と同様、なぎさには昼休みの間に掃除当番の連絡がされていた。

 仕方ない、と心の中で呟いて携帯を閉じる。そして、斜め前の席に移動してきている友人に声を掛けた。

「ごめん、ちょっと頼まれてくれない?」

「ん、何?」

 グミを食べながら携帯をいじっている彼とは、クラス内で比較的仲良くしていた。

 これまでにも、お互いに何度か頼み事もしている。

 だからといって、確実に頼みを聞いてくれるとは限らない。少々不安に感じながら言い出す。

「今日の掃除なんだけど、急に行かなきゃいけない場所ができたから代わって欲しくて……」

 彼は少し考えたあと、グッと親指を立てた。

「おっけ。その代わり今度当番になったときは代わりにやってな」

「うん、ありがとう!」

 ……思ったより、あっさりと代わってくれた。これで、今日はなぎさと帰れる。


 しかし、そうとんとん拍子にことが進むなんてことはなく。

 今回に限って、担任の話が長引いた。

 他のクラスの生徒はもう帰り始めている。なぎさも、もう帰ってしまっているだろう。

 もどかしく思いながら、帰り学活が終わるのを待った。

「さようならー」

 相変わらずぐだぐだな帰りの挨拶のあと、すぐにカバンを掴んで教室を出る。

 既に廊下の人混みはほとんど解消されて、残っているのはうちのクラスの生徒と待ち合わせをしている人くらいだ。

 むしろ走りやすいくらいになっていたが、それだけ遅くなったのだと感じ、焦りが募った。

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