第11話 孵化


 ビィー、ビィー、と校舎内にけたたましい警報が鳴り響く。

 生徒会室にいた合田は、突然の異変に「なんや」と困惑して、ハンモックから立ち上がった。書記の宮が「警報だ」と天井で点滅する赤ランプを見て言う。


「学園内で、規定値を超える超能力が発生したんですよ。普段は会長がどんなに暴れても静かだから、壊れてるのかと思ってたけど……いや、それとも故障のせいで鳴ってるのかな」


 宮は「どっちだろ」と首を傾げる。合田は窓の外を見た。校舎の外に何事かと出てくる生徒の姿は見えるものの、特に大きく慌てている様子もない。


「故障かもしれんけど、一応避難せな。何もないなら、それでええ」

「そうですね。──会長、副会長が……」


 珍しく焦ったような宮の声に振り向けば、藤崎が机に突っ伏していた。真っ青だ。


「おい、藤野。まだ気分悪いんか?」


 ぐったりとした彼女の肩を揺さぶろうと、触れた時だった。

 人形のような白い顔が持ち上がり、虚ろに見上げてくる。焦点の合わない瞳。


「おまえ……」


 なぜだか、スマホを届けにきた一年の男子生徒を思い出した。背後でドサリと人の倒れる音がする。宮だった。床に倒れて気絶している。


「宮、……うっ」


 ひどい耳鳴りに頭が割れそうになる。そして、合田は意識を失った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る