第15話、scorpius

 その鍾乳洞を抜けると、傾いた金不壊の塔の上であった。その中心に据えられた白金の炉の内で、炎は鮮やかに燃えていた。酸化銀と礬の粉が雨のように降ってきて、次々と炉の中に入っていく。とろとろと溶けた金属たちを、炎は声もなく強い光を放って包み込んでいた。

 曼珠沙華のように赤々と燃えるそれは、全てのものを喰らって生きていた。この世の全ての氷は溶けてしまうかに思えた。アクシオンの中の何かもその炎に解かされたように感じる。


 フォトンは炎をじっと見たまま、しばらく動かなかった。妹はまるで雪で作った少女のようで、溶けないように自分の後ろに隠してやった。

 紅炎と共に火の粉が舞い上がり、アクシオンの近くの床に落ちる。とたんにそれは紅玉に変わって塔から転がり落ちていき、やがて塔の下に広がる星々の一つになった。

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