第7話、virgo
そう、僕らはどこかへ行くつもりだったのだ。そしてそのどこかというのを、アクシオンは知っていた。たぶんそれはフォトンも知っていて、だから少しうつむいたままではあったけれど、アクシオンの後ろについて歩いていた。
そのうちに二人はどこまでも続く麦畑の中にいた。それらは遠くへ行くほどにぼうっとかすんで、しまいに消えていくのだった。
淡い真珠色の風が吹くと、手風琴の音が辺りに満ちた。フォトンがその指で細長い黄金の葉を一枚切り、唇に当てると先程の風と同じ澄んだ音が出た。それはあまりにも澄み切っていて、しかしどこかくぐもった音が混じっていた。
空気の肌触りは氷のようで、そんな中の草笛の音がなんとなくアクシオンの心をざわめかせた。
アクシオンがどうにも我慢できなくなって、フォトンに声をかけようとした時、一面の麦が枯れ、その空間が崩れ落ちた。崩れ落ちたそれらは玻璃のようなものになり、天も地も分からない所に溶け込んだ。
フォトンの手の中にあった黄金の草も、一方通行の砂時計のようにぼろぼろとこぼれ落ちた。最後の煌めきが消えてもなお、そこには硬質な空気が漂っていた。
後には静寂だけが残され、アクシオンは自分も消えた気になってしまって、フォトンの手を強く握った。二人は、何もない空を振り返りながら、何もない空の中を歩いていった。 元は草だった硝子玉が、雨のように降り注いでいる気がした。
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