第4話、sol

月長石の露で濡れた森への一本道に入っていく。舗装されていない乾いた土の上に、靴跡がつく。ここいらは雪が降らない。みんな下の街へ流れていく。


 単一色な世界には、今はアクシオンと蝋燭しかない。本当はもっと何かがいるのだけど見えないだけだ、とアクシオンは思う。空と同じで、ただ見えないだけだ。

 いつもは見慣れた風景も、普段とはまた違った顔を見せる。月の冷ややかな光の中、地に落ちる木の影は濃く、どこか古風な香水瓶から出る香気が漂っていた。その中で、僕だけが昼の面影を留めているという考えは、非常に奇妙なことのように思えた。


 もう、ハロは始まってしまっただろうか。去年のハロは、それはもう見事なものだった。フォトンと歌ったモック・サン賛歌は、街中で一番上手かったのだから。


 みみずくがついと天球の片隅を横切り、顔を上げればまるで太陽柱が落ちてきて焼けこげてしまったようなのが、夜風の中、白く輝く霧の中に立っている。太陽柱はアクシオンが近づくにつれて暗く輝き、りんとも音にならない音を発していた。

 煙を吐き続けるそれの下には、ひっそりと訪れる人を待つ建物がある。アクシオンは彫刻の施してある扉からは入らず、太陽柱にほど近い裏手の青銅の扉から入った。

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