4:被害者2.5

 浜辺円が『サンシャイン同盟』サーバーに参加した時、既に西藤、森木、志茂の四人は、そのサーバーにいた。このサーバーが立てられたのは数ヶ月前のことで、主に通話を利用して悩みを打ち明ける場所だ、と西藤から説明された。

 他のメンバーはほとんどチャットを使わず、チャットではごくたまに朝の挨拶やファイルの共有が行われていた。 

 しかし、浜辺は今までネットでは通話もよく利用したが、チャットはそれ以上に頻繁に利用した。そのため、ほとんどチャットを使わないこのサーバーのやり方はあまり慣れず、結局チャットを使ってしまうことがあった。

 また、暗い場所だと想像していた浜辺にとって『サンシャイン同盟』はいじめに関する会話だけでなく普通の日常的な会話も展開されており、とても居心地が良かった。しかし、いじめられたことの愚痴や、苦悩、相談も会話の中にはあり、浜辺としては胸に刺さるものがあった。

 入って二、三週間経つ頃には、どのような性格で、誰からいじめられていて、が大体分かるようになった。

 例えば、西藤は会話の中心にいて、会話を回していくタイプの男だ。口は悪いが会話を盛り上げたりするのが得意なようだった。それだけにいじめられているとは考えづらかったが、話を聞くうちになぜいじめられているのかが納得できた。西藤をいじめているのは割と内輪で連んで、問題行動をこっそりと行っている集団だった。小木という一見ただのイキリに見える彼の周りに、同じイキった集団が溜まっている。その集団は少しでも杭が出て来れば、杭が打てなくなるまで打つ。また、タバコを吸ったり、授業中にスマートフォンを触ったりと様々な問題行動を起こしておいて未だに教師にバレていないという狡賢さも兼ね備えており、詳しく調べれば彼らにいじめられているという人間は三、四人出てくるかもしれない。集団で、人数が多い分、標的も複数作れるのも怖い点である。

 西藤のように一つの集団からのみ目をつけられている場合もあるが、そうでない場合もある。

 その一つが志茂だった。志茂は様々な集団から目を付けられているらしい。志茂は明るく、お喋りで目立ちすぎるところがあるため、様々な集団から標的にされてしまうのだろう。当然、その様々な集団の中には小木たちの集団も含まれてくる。ただ、主に彼をいじめていたのは木村の集団だと聞いている。

 森木はあのキザで偉そうで自惚れている性格が目についたのだろう。また、実際に成績が学年トップクラスであることも影響しているかもしれない。彼は漆原からいじめを受けている。

 会話の様子を見る限り、西藤と森木はとても仲が良いようで、結構意地の悪い冗談を言い合ったりしていることが多い。

 そんな四人で『サンシャイン同盟』は作られた。そして、『サンシャイン同盟』が立てられて二ヶ月ほどが経過した頃、登校中に人と会わないためにとても早い時間に学校に来ている浜辺円は教室に入ってすぐ、自分の机の上に何か紙切れが置いてあることに気がついた。どうせ、何かの悪口が書かれた紙だろう、と破り捨てる気満々で近づいて行き、その紙を乱暴に拾い上げた。

『サンシャイン同盟、に僕も入れて。どのチャットツールかわからないから、メールで教えて。メアド:sakako@email.com 坂田征四郎』

 紙にはそう書かれていた。これが坂田征四郎との出会いである。


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