第16話 2人なうちに…

帰りに待ち伏せされたり後をつけられたりして学生アパートから帰宅できず、臨時の出入り口から地下鉄に入ったりして大変だったとこぼす太刀兄ぃは、帰ってからも方々への説明やモロモロ、叱られ込みで大変だったらしい 

「とりあえず明日からも今まで通りってさ。鬼度高ぇわ…」

今日は1日友達とかとも微妙だったらしく

やっぱりバレたくないな…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌朝(太一)

いつものアパートから出ていつもの駅まで歩く

沢山の人が通勤通学していて肩が触れる様ないつもの歩道…歩きやすっ

市民は遠巻きにしてるし、貴族もバレたくないから遠巻きにしてるし

あるっきやっすぅうう!!

ちくしょうっ泣いてないやい!

「太一…?」

「おー…あー…おはよ。」

「昨日ありがとう。バレたくなかったら放っておいてもわからなかったのに、助けてくれてありがとう」

「うわぁぁぁあんっ心の友よぉお」

「うわっ、ちょっ、汚いっ」

ひどい。

昨日助けた友達と話ているうちにいつもの友達も近づいてきて、良かったボッチにならずにすんだ

「太一とりあえず俺に謝って」

「え?なんで?」

「こないだ、推しだって射出副隊長の写真見せたらお前全然知らないからカッコイイとこ教えてっつーから熱く語っただろ!恥ずかしい」

「あー、あれねー。めっちゃくちゃやる気と元気出た!あんがと」

「…そーゆーもんか」

「人間なのでぇ…」

そう、人間なのでぇ…

貴族が貴族っていう生き物じゃないんだから探すっていっても難しいんだ

小1から混ざってんだしなぁ


あれ?なんか太刀兄ぃいい感じになってる

良かった

これで気兼ねなくツィアを迎えられる

本当に良かった


数日後

☓☓で盛大なパレードと共に王女ルクレツィアが

王宮を出発した

婦人から夫がバレてはいけないので、向こうで限定的に出していた顔を隠して、目と口元マスクと茶髪のウエーブかつらをつけている


こちらも専用の着陸地から長く王宮までパレードの準備をしている

各所には沢山のマイクも設置、市民の見物場もきっちりと作られている


もうすぐ到着のアナウンスでタラップの終わりに、珍しくフードのない貴族服のオルサヤが立つ

背筋を伸ばし凛とした姿は、王女の夫にふさわしい立派な佇まいだ


飛行機が到着し扉が開かれると

王女が出てきてゆっくりとオルサヤまで歩き、オルサヤがその手をとって白馬のひく馬車までエスコートする流れだ


ゆっくりと扉が開いて、王女が姿を現した


ザワザワ

「でかいな…」

「男…か…?」

「不細工って体型もか?」

次々に市民から感想がもれる

「オルサヤは良いのか?アレ…」

一度静かにさせようかと兵の一部が動こうとした瞬間


ダン!ダン!ダン!ダダダダダダッバン!

走りだしたかと思ったら最後の階段をジャンプですっ飛ばして姫の前に着地したオルサヤが

姫を絞め殺す勢いで抱きしめる

「ツィア!!!」

マイクが拾う

ザワザワザワザワ

「ツィ…ア?」

「ツィア!ツィア!あぁあ!どうしてもって言うから帰したけれど、気が気じゃなかった!!ツィアっ」

「ま、待てっ待て紫月っっ苦しっ痛っちょっと離せっおいっっ段取りが違っぐえぇ」

マイクが拾う………


「え…オルサヤめちゃめちゃ姫好きじゃん…?」

「オルサヤとなら体型も合うなぁ」

「不細工じゃないのかも…?」

ツィアのイメージが好転するならなんかまぁ…いいよね?


「紫月家でやれ!家で!!進行させろ帰らせろ」

怒鳴りつける様な地声にザワザワしていた市民が静かになる


「太刀兄ぃい…」

「はははっぜーんぶマイクが拾ってんぞ。はっずかしーい」

からかう太刀風は禿ズラを被っていなく丸見えである

「丸見え…」

「快適!!」


確かに進行させなきゃいけない(これ以上絡むとろくなことが無い)

そのままルクレツィアを横抱きにすると

タラップを降り始める

ちょっと怖そうにしがみつくルクレツィアがかわいい

ルクレツィアのマスクを顎までずらすとかわいい唇が出てきた。

自分のマスクもずらしてカプリと食らいつくと柔らかく暖かく………

周りうるさいな

いーだろ婚姻のキスくらい


真っ赤になるツィアの耳元で

「ありがとう、ツィア。末永く宜しく

これで城門前は2人になった」

と告げる

幸せだ!!

「2人な間に沢山デートしようっ」

頷いたルクレツィアはきっと意図も理解している

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