知らないものは管理できない

第9話 隣国のふじん①

3限目の授業が終わった頃、全員のスマホからアラートが鳴った


【隣国☓☓緩衝地帯の草原に布陣】


常に仮想敵国である☓☓が国境の向こう側に布陣したという


早いな☓☓


まぁ、まだ動かないだろう

だからこそこちらも市民からの軍兵を増量すべく今回の王門祭だ

今の国力なら負けはしないが国民感情を扇動して

敵に回らないように根回しする事は大切だ

☓☓にもいい牽制になるだろう

共に国を護ろうねぇ?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

王門祭当日


王門前には屋台が立ち並び門前にはガッチリ防弾と中の見えにくい王族席から貴族席

ぐるりと沢山の人が入れる一般席が設けられ

芸術や軍兵の模擬など様様な催しが披露されている


あ、イツメンの練人たちみっけ!

写真撮ったり楽しそうだな

いいなーいいなー


「おい。オル!」

カツラ被って顔を隠している時は基本 ルダ オル エリーで呼びあう

それ以外は、ジン シヅ(シズ)サキ(エがあるような無いような)になる


「何?」

つい不機嫌に返す。別に刃のせいじゃないんだけど

「今日はボケーッとすんなよ。大事な役割だぞ?」

「わかってるよ。そんな事くらい」

世間的には特別階級なんて言われてノーブレスオブリージュとか言ってるけど

特別可哀想な階級じゃないかなー。あーあー。

市井になんか出さなきゃいいのに…


大体俺たちは着ぐるみパンダじゃないんだよ


厳かに国家が流れ、今日のプログラムが粛々と過ぎてゆく

あー。特殊部隊いいなーかっこいー

あとでサインもらいに行こう


プログラムの真ん中頃、国王陛下のお話にうつる

要は隣国がなんかしてるけどうちは大丈夫。みんなで力を合わせて頑張ろうって話

でも市民感情としては 本当に王貴は戦ってるのか

そもそも特別な時以外外で見ないぞ。なんの仕事してんだよ。贅沢しやがって!こっちの事なんて知らないくせになんて

どこでもある話


隣国が布陣したけど、どうするんだ!?

国民を盾にする気か


「静まれ!」国王の声が響く(マイクで)


「王貴族が市井を知っているのか細かく把握しているのか、みなの声が届いているのか。お前達の不安はもっともである

ただ我々はよく、知っている!」

ざわざわざわざわ

「静まれ。三人とも舞台へ降りよ」


トントンっと貴族席側から結構な距離のある舞台へ軽く飛ぶ


「皆よく知っての通り、我が国の若き英雄

バルタート オルサヤ エリザ だ」

「ファンクラブもあるな。知っておるぞ」


「ルダート。」

ルダにマイクが渡る

大丈夫かな?ルダなんだけど…


「あーあーあー。マイクテスマイクテス〜」

あぁほら、ルダートなんかにマイク渡すから…

あーざわざわしてるっざわざわしてるっ

「…かわろうか?ルダ?」

「え。大丈夫大丈夫」

大丈夫じゃない。すでに大丈夫じゃない。


「えー。マイクとマスクで声変わってるからバレないと思うけど、わかった奴絶対にお口チャックな!」

何を言い出すんだ…


「単刀直入に言うと、こちらは6歳までに色々な英才教育を詰め込まれて後に、小学校からそちらへ通っている」


え"え"え"え"え"え"え"ー!?


まてまて。いきなり国民を動揺させんな

「反王スレスレの曲作ってる 終楽(ついらく)とかも大好きだぞ。気持ちも至近距離で聞いて…あーそーだなぁ」


まあ確かにお固く喋るよりはこのルダの話し方は市民を引き込むにはいいのかもしれない


「この中に、王国立第一第二第三高校通ってる奴いたら手ぇあげてー!はーい!」


あちこちで手があがる

それを見て頷いた後


「俺たちも、ハーイ!!!だ!」


シーーーン


「え"え"え"え"!?」

「え、何!?ルダートもオルサヤも同じ学校にいるかもってこと!?」

「いや、さすがにエリザいたらわかるっしょ!?」


国民を不安定にすんな 


「高校2年生だ」


「いや、でもあいつら戦いに出てるぞ!?17の子供にやらせてんのか!?」

「あー、だから早めからアラート出て学校休みになるのか!?」


「静まれ。別に初めて公表しただけでずっとやってる事だからこちらの制度はできている。

15になったら貴働する。そういう制度だ」

ルダートが落ち着いた声でそう言うと三人に長い紙が配られる


ヒラリと垂れ下がらせると

城門前 紫月

袖一 刃九郎

突的 冴輝

と御三家の名前が翻る


御三家の子供、危険な場所で国護ってます

アピールだ


俺はそんな事の為にやってるわけじゃないのに








                                                                                                                                                                             


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