第6話 首の骨に拳が入れば方向キーを後ろに入力していてもガード扱いにはなりません


  あぁ、おじさんが後退してしまいました。


 青年は、その後退モーションを見逃しはしません。


 いえ、後退モーションが始まる前。


 精神面を、場数から読んでいたのでしょうか。


 【ストレートダッシュストライク】


 青年のコマンド技はとうに入力されていて、画面の青年が、コマンド技のモーションに入っています。


 画面の青年は、拳を真っすぐに向けたまま突撃します。


 真っすぐに向けた青年の拳が、おじさんの首の骨に衝突します。


 首の骨を打たれたら、後方に方向キーを入力していても、ガード扱いにならないのは道理ですね。


 おじさんのHPゲージはゼロになりました。


 【裸拳で人を殴りなれた青年WIN】


 アナウンスが青年の勝利を告げ、ゲームが終了しました。


 「おじさん、ロリっ娘誘拐なんてするおじさんじゃないな」


 「GAMEしたら分かったぜ」


 いや、私、かなり強引に迫られてたんですけど。


 おじさんは倒れていて、返事はない。


 けれど、おじさんとGAMEをしたわけでもない私も、それぐらいは伝わってきます。


 おじさんは、ロリっ娘の私に何がしたかったのか。

 

 それは、GAMEをしたわけではない私にはそこまでは分かりません。


 けれど、くじらまっくすがしたいわけでもないのでしょう。


 私を頼っていた?


 私に、すがっていた?


 「いたぞ」


 「あの腹の緩んだおじさんだ」


 お金が欲しそうな3人組が、おじさんに何かあるようです。


 「おいおい」


 「このおじさんが何かしたのか」


 「さぁな」

 「腹の緩んだおじさんを連れて行けば」

 「金が貰えるって噂でな」

 「その腹の緩んだおじさんは連れていくぞ」


 「そんな理由でダチを連れていくと言われて」

 「連れていかせるかよ」


 青年の意思とは反対に、青年の体はGAMEで疲労しています。


 青年のワンサイドゲームではありませんでした。


 今すぐまともに、3人相手に戦えるわけがありません。


 私の回復魔法ノーマルヒールも、GAMEによるダメージは回復できないでしょう。


 それは、この世界がどこの世界であろうと、原始の頃より続く条理です。


 「まだ使ったこともないノーマルヒール」

 「これで援護もできるけど」


 「下がってなさい」


 「あぁ?」

 「ロリっ娘が3人相手に戦うってのかよ」


 「悪いけどよ、ロリっ娘と逃げるわけにもいかなくなったからよ」

 「ロリっ娘1人で逃げてくれ」


 回復魔法タイプの私が1人で3人相手に勝てるか。

 それは分かりませんが、戦う事はできるんです。


 「下がりなさい」


 「!」

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