第32話

すると、リブラがこんなことを言い出した。


「リエス、ヒュドラに何か攻撃してみろ」

「は?急にどうしたんだ?」


どういうことだ?攻撃してみろって。

もう戦闘準備ができたのか?

もしお前らが戦闘準備できてたとしても、俺はさっきまでずっとウリエルを操縦してて、疲れてるし、腹も減ってるんだが?


「いいからやってみろよ」

「じゃあ…やってみるか…」


とりあえずヒュドラに狙いを定めて、ウリエルのアーム砲を発射する。

小型のロケット弾がヒュドラに向かって飛んでいく。

そして、当たると思ったその時…。


「なっ…ロケット弾が腐敗した…!?」


なんとヒュドラから噴射されている毒がロケット弾をあっという間に腐敗させたのだ。

そして弾は粉々に崩れていった。


「コイツ…マジかよ…」


驚いたな…。

この毒は生物だけではなく、兵器にも有効なのか。

ということは、レストアージですら腐敗させる毒ということか。

つまり接近戦は不可能だな。

ウリエルの斬撃を与えることはできないようだ。


「この毒がある限り奴は無敵だ。なんたって攻撃そのものができないんだからな。でも毒の対処法は一切分かっていない。これを見てもお前はヒュドラと戦う気はあるか?」


なんだそれ?

俺がヒュドラに恐れを為したとでも思っているのか?


「戦うに決まってるだろ。俺の目的は全ての機構魔獣の討伐だ。相手がどれだけ強かろうが、それは戦わない理由にはならないからな」


俺はヒュドラと戦う意志を示した。


「ぶっちゃけヒュドラよりもコイツが一番ヤバいよな…」


「確かに…。メンタルどうなってんだよって感じだな…」


ペルセとセウスは俺をメンタル化け物のように言ってきた。

やっぱりコイツらとは仲良くなれそうにないな…。


「とりあえずここは一旦引き返すぞ。戦闘準備が万端になったらすぐにここに戻る。それでいいか?」


長時間操縦を続けていたから、身体は疲弊しきっているし、腹も減っている。

今すぐにでも休息を取りたい気分だ。


「そうだな。俺たちでも今すぐ戦うのは流石に無理があるしな。一旦戻るか」


リブラはラグエルを方向転換させた。

さっき来た道に戻るようだ。


「さっきの街に戻るのか?」


「あぁ。俺たちのいた街はあっちの方向だが、ヒュドラによって壊滅されたからな。今は多国を放浪中ってわけだ」


そういえば戦争孤児で金がないって言ってたな。

金を集めるために他国まで渡るのか。

コイツらも大変だな…。


―――――――――――――――――――――


そして一旦リブラたちと別れ、さっき来た街に戻ってきた。

それにしてもすごい発展した街だな。

都会というだけあって、物価も他の街と比べてかなり高い。


俺はレオからもらった金貨がまだ残ってるから、しばらくは金銭面で困ることはないだろうが。


「へぇ…、すげぇな。今まで見てきた首都より断然都会だな…」


といっても、アマリリスだって十分発展した街だったからな。なんたって初めてレストアージが開発された国でもあるんだからな。


「おっと、いかんいかん。俺の目的はあくまでヒュドラの討伐なんだからな。奴を倒す方法を考えるのが最優先だな」


それにしてもあれは厄介すぎる。

まさか攻撃が効かないどころか攻撃そのものができない相手とはな。


キマイラと戦った時は、炎のブレスでロケット砲が燃やされて無効化されたが、あの毒は噴射口がある限り常時噴出され続ける。


しかも微量でも食らえば死ぬ可能性があるため、近付くことですら非常に危険だ。

あんなのどうやって倒せるんだ?


「明日考えてみるか…」


とはいえ、そろそろ夜になりそうなので、ひとまず今日のところは泊まる場所を探して、休息を取ることにした。


やっぱりこの街は発展してるから、ホテルや宿泊所も多いな。

街を歩いているだけで簡単に見つかる。

それに、もう野宿なんてごめんだからな。

戦うには休息も必要だからな。



―  翌日 ―


俺はホテルを出て、昨日リブラたちと別れた場所に向かう。

そこにはすでにリブラたちがいた。


「おいおい、遅ぇな!リエス」


「一番張り切ってた奴が一番遅ぇってどういうことだ?」


「俺たちを持たせるなんていい度胸じゃねぇの」


「あぁ、悪い悪い」


コイツら、窃盗なんてしてるくせに約束も時間も守れるのか。

これは少し意外だな。


「さて、それじゃヒュドラ討伐に向けて、奴の情報について探るとするか」


「は?今から倒しに行くんじゃないのか?」

俺が言うと、リブラが突っ込んできた。


「今すぐ倒すってのは難しいな。昨日見た限りでは為す術もないだろうな」


「じゃあ…何するんだ?」


「まず、あの毒について調べてみることにする。もしかしたら対処法が分かるかもしれないからな」


俺がこう言うと、3人がコソコソ話し始めた。


「なぁ、確かあの毒って…」

「何も分かってないんだよな…」

「あぁ…。調査しようがないからな…」


何のことだ?

「なぁ、急にどうしたんだ?」


すると、リブラが言った。

「リエス、あの毒について調査するのは無理だ」


「なんでだ?あれほどの被害があったんだから、毒についての調査はされると思うんだが。研究者の手にも行き届いてるだろ?」


「実はな…あの毒を研究しようとした奴は結構いたんだ」

「なんだ、いるのか」


「でもな…全員死んだんだ」

「…は?」




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機構魔獣戦記 巫有澄 @arisu1623

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