第31話

…それにしても遠いな。


ハイビスカスに入ってから何時間も経ってるはずなのに、街や人里が見えないどころか、荒地を抜け出せる気配もないな。


「なぁ、もしかしてハイビスカスって国土が広いのか?」


「そうだなぁ。他の国に比べたら結構広い方なんじゃないか?」


やっぱりか。

ハイビスカスの面積がどれほどのものなのか気になったから、地図で確認してみることにした。


ハイビスカスは…ここか。

「うわっ…本当に広いな…」


隣のナスタチウムが比較的小さいのもあるが、周りの国と比べるとハイビスカスは一回り面積が広いようだ。


「お前らのいた街まではあとどのくらいで着きそうなんだ?」


操縦には慣れているが、こんなに長時間は流石に疲れてくる。

それに何時間も経過してるから、すっかり夜になってしまった。


「この調子でも今日中には着かないな。早くても明日の朝になるだろうな。ふぁ…。俺もだんだん疲れて眠くなってきたな。なぁ、どっちか操縦変わってくんねぇか?」


「あぁ、そうだよな。俺たちはリブラほどの操縦技術はないが、移動するくらいならどうってことないぜ」


「操縦は俺たち3人で交代制にしよう。それまでリブラはゆっくり休んでろ」


どうやらリブラに代わって一旦ペルセが操縦するようだ。

交代制ということは、ペルセの次はセウスが操縦するのか。


それに対し俺はずっと一人で操縦か…。

俺も少し休みたい気分だが、立ち止まってる時間はないな。


―――――――――――――――――――――


「おいリエス、着いたぞ」

「はぁ…やっと着いたのか…。疲れたな…」


あの後、俺は頑張って操縦を続けた。

そして結局、到着したのは翌日の昼間だった。

もちろん操縦する手は止めていないし、これといった食事も取れていない。

腹減ったな…。


「見てみろ。これがハイビスカスの街だ」


俺は辿り着いた街の風景を見て驚いた。

かなり発展していたのだ。

ビルやマンションなどが多く立ち並び、車の交通量も多いようだ。


「すごいな…。今までいろいろな国を見てきたが、ここまで発展した街に来たのは初めてだ」


「おう!なんたってここは首都スカスビイアだからな!」


「首都なのか!?それでもこれはすごいな…」


サンダーソニアの首都であるアニソーダンサも中々の街だったが、スカスビイアの比較対象にもならないな。


それに、人の数も全然違うな。

あちこちにすごい人混みができており、まるで満員列車のようだ。


「ここだけ見ると、機構魔獣がいるとは到底思えないな」


「この街はな。俺たちがいた街はもう少し先だ。んで、その街から少し離れると、ヒュドラを閉じ込めている防護壁がある。まずはそこに行こう」


「そんな簡単に行けるものなのか?そういうのって立入禁止区域になってたりするんじゃないのか?」


「安心しろ。ヒュドラが危険すぎるせいで人は誰も近付かない。あんまり近付くと、命の保証はないからな」


そして、俺たちは街の外れにあるという防護壁に向かった。


―――――――――――――――――――――


「ここか…」


やって来たのは、小さな町なら一個分は余裕で入りそうなほど巨大な壁。

高さは50メートルくらいあるだろうか。


「思ったより遥かにデカいな…」


「ここも元々は町だったからな。この中はすっかりヒュドラに毒で汚染されちまってる」


「うわぁ…また見ることになんのかよ…嫌だなぁ…」


「大丈夫か?もしも俺たちに気付いて襲ってきちまったらどうすんだよ?」


ペルセとセウスがビビっているようだ。

無理もないか。

俺も最初フェンリルと対峙した時は、少し恐怖感があったからな。


「それじゃお前ら、準備はいいか?壁の中を覗いてみるぞ。リエス、ヒュドラを見ても驚くなよ?」


「驚く?今さら何言ってんだ?俺はこれまで何度も機構魔獣と戦ってるんだぞ?」


「そうか。なら…見てみるか」


上空に移動し、壁の中を覗く。

そして…。


「な、なんだよ…コイツ…」


そこは辺り一面が黒い霧のようなもので覆われている場所だった。

そして、その霧のようなものを何か巨大な物体が纏っているようだ。


黒い霧の中にいた物体が姿を現す。

そこにいたのは、全身が黒い装甲で覆われており、首が9本もある超巨大な蛇だった。

ケルベロスやキマイラよりも一回り大きいな。


「あれが…ヒュドラか…」


しかもよく見てみると、ヒュドラの身体中には噴射口のようなものがあり、そこから黒い霧を噴射している。


おそらくあれが正体不明の毒素だろう。

ヒュドラの周りは完全に腐り果て、真っ黒になっていた。

ここに来るまでの道中と同じような光景だ。


「いつ見てもおっかねぇなぁ…」

「マジであんなのに勝てんのかよ…」


相変わらずペルセとセウスはビビりである。

しかし、本当にヤバそうだな…。

そこにいるだけで威圧感がすごいな。




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