第24話
キマイラと向かい合ったバーゴは、少し昔のことを思い出していた。
………………………………………………………
昔、バーゴにはヘルクとクレス以外にも、仲の良い幼馴染の少年がいた。
彼の名はスピカといった。
彼はバーゴ、ヘルク、クレスよりも一つ歳上で、3人のお兄さん的存在であった。
特にバーゴは、家が隣同士だったということもあり、よく懐いていた。
そして、スピカにはある夢があった。
それは、レットアージのパイロットになること。
彼もリエスと同じように、父親がパイロットであったため、その姿に憧れて目指すようになったのだ。
「バーゴ、俺は絶対レットアージのパイロットになって、どんな時でもお前を守ってやるからな!」
「うん!スピカなら絶対になれるよ!」
「それにヘルク、クレス!お前たちのこともな!」
「うん〜、楽しみにしてるね〜」
「えぇ、期待しているわ」
それから、数年後…。
「見ろよコレ!コイツが俺のレットアージだ!かっこいいだろ!」
晴れてレットアージ救助隊に加入し、パイロットになることができたスピカは、バーゴたちに自分の機体を見せるために3人を製造工場に連れていった。
そこには、剣と盾を持った水色のレットアージがあった。
「すっごーい!大きいねー!これがスピカの相棒なんだー!」
「うわ〜、剣も盾もあるじゃ〜ん!かっこいいね〜!」
「いいわね。ところでこの機体、なんていう名前なのかしら?」
「サリエルだ!名前もかっこいいだろ?」
そう、この機体こそがサリエルだったのだ。
つまり、サリエルは元々スピカの機体だった。
「そして俺はコイツと一緒に最強のパイロットになるんだ!」
サリエルのパイロットとして、バーゴたちを守るヒーローになる。
スピカはそう心に誓った。
それからしばらく経った時のことだった。
彼らに悲劇が襲いかかるのは…。
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ある日、突然空から何かが出現した。
「おい、ありゃなんだ?」
「ライオンか?」
「いや、山羊っぽい…?」
「蛇にも見えるな…」
「というか…機械?」
すると、それは口のようなものを開き…。
ゴオォォォ!
「うわあああぁぁぁぁっ!」
「に、逃げろおぉぉぉぉっ!」
「なんなんだよアイツ!」
街に向かって炎を吐いた。
そう。ナスタチウムにキマイラが襲来したのだ。
あっという間に、周囲の人間を焼き殺していき、街中を火の海へと変えていくその姿は、バーゴたちにとてつもない恐怖を与えていた。
「な、なんなの…あれ…」
「あたしたち、ここで死ぬの?」
「もう、ダメみたいね…」
バーゴたちが逃げられないと悟り、死を覚悟したその時だった。
彼が現れたのは。
「お前たち!無事か!」
「「「スピカ!」」」
サリエルに乗ったスピカが颯爽と駆けつけたのだ。
「もう大丈夫だ。コイツは俺が倒す!」
「倒す…って、正気なの!?」
「危険すぎるよ…」
「ダメよ、こんなのと戦ったらあなたも…」
「危険?何言ってんだ?言っただろ。絶対俺がお前達を守るって!」
そう言って、スピカはキマイラに突撃していく。
キマイラも攻撃に反応し、サリエルに炎を吐く。
「そんな炎が効くかよ!」
サリエルの盾で炎を防ぎながら、突っ込んでいく。
そして、剣でキマイラの体をすごいスピードで斬っていく。
キマイラに反撃の余地を与えず、徐々にダメージを与えていく。
そして重傷を負ったキマイラは力を振り絞って、巨大な炎を吐いた。
サリエルはそれを間一髪躱し、後ろに回り込む。
「これでトドメだっ!」
背後からトドメの斬撃を与えようと剣を振り翳したその時だった。
さっきまで特に目立った動きのなかったキマイラの尻尾が突然動き出したのだ。
その先端部分がサリエルに迫る。
「なんだ?」
グッシャァァァッ!
キマイラの鋭い尻尾がサリエルを突き刺し、貫いた。
しかも運悪く、コックピットの部分に。
キマイラは重傷を負い、エネルギーを使い果たしたことから、すぐさま離脱していった。
コックピットが破壊され、操作が不可能になったサリエルは地に落ちていった。
機体の真ん中には大きな穴が空き、その穴から大量の血が飛び散っていた。
ということはこの血は…。
「え?スピ…カ?」
「そんな…」
「…嘘でしょ?」
コックピットの中には大量の血が飛び散っているだけで、スピカの姿らしきものは全く見当たらなかった。
つまり、スピカの体ごと跡形もなく砕け散ってしまったということだろう。
そんなスピカのあまりにも無惨な最後を目の当たりにしてしまったバーゴたちは、膝から崩れ落ち、ひどい喪失感に苛まれた。
その後、3人はスピカの無念を晴らすため、自分たちでレットアージ製造工場を設立し、残されていたサリエルの設計図をもとに自分たちで同じ機体を開発したのだ。
「これで完成だね」
「うん、我ながら見事!」
「中々いい出来ね」
こうして、今バーゴが乗っているサリエルができたというわけである。
「これで、今度は私が必ずアイツを倒す」
そしてまさに、今がその時である。
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