第23話
俺はウリエル、ウルスはミカエル、ジェミはガブリエル、バーゴはサリエルに搭乗した。
そして、至急キマイラを捜索しに行く。
「なぁ、リエス。いきなりキマイラを探すって言っても何か手掛かりはあるのか?」
「キマイラはこれまでにナスタチウムを4回襲撃してるらしいからな。まだナスタチウムのどこかに潜んでるはずだ」
「なんでそんなにナスタチウムばっかり狙われるんだろうね?」
「おそらく、ナスタチウムというよりレットアージがある場所を狙ってるんだと思うの」
「レットアージを狙ってる?どういうことだ?」
「実はね、キマイラは襲撃後に必ず攻撃したレットアージを食べていたの。しかもレットアージに限らず、ロボット全般が噛み砕かれていた」
「食べていた…?」
「なんだよそれ?気持ち悪ぃな」
「ロボットがロボットを食べるの?」
機械が機械を食べるのか?
機械に食欲なんてあるのか?
いや、機械といっても機構魔獣は自分の意思で動いているということが判明しているし、それで機械でありながら生物という定義付けがされているからな。
感情があるのだから、食欲があっても別におかしくはないか。
もし、それが本当なら今キマイラは“あそこ”にいるかもしれない。
「うん。意味分かんないと思うけど、本当なんだよね」
「なんでそんなことするんだ?」
「なんでかは分からないんだよ。」
「…なら、機構魔獣も食べると思うか?」
「えっ?食べるんじゃないかな?多分だけど」
「そうか、なら俺に心当たりがある。まずはそこに行くぞ」
もし、それが本当なら今キマイラは“あそこ”にいるかもしれない。
―――――――――――――――――――――
そうして、俺たちはここに来る時に通った荒地にやってきた。
「なぁリエス、ここってよ…」
「あっ!もしかして…」
「あぁ、俺たちがナスタチウムに来る途中に通った荒地だ。近くにサイクロプスの遺骸がある場所だな」
俺たちは倒したサイクロプスを放置していた。
キマイラがロボット全般を食べると言うのであれば、サイクロプスの遺骸も食べるだろう。
ガシャガシャ!
バキバキ!
近くで機械を破壊しているような音が聞こえる。
「…やはり予想通りだな」
俺たちは音のする方へ行く。
そして…、見つけた。
「コイツが…?」
「本当にサイクロプスを食べてる…」
「間違いないよ、これが…」
「キマイラか…」
そこには、3本の首でそれぞれが、ライオン、山羊、蛇の頭を持ち、背中には巨大な翼が生えた機械生命体がおり、サイクロプスの遺骸を噛み砕き、貪っていた。
キュピィィィン…。
すると、指令室からこちらに通信が入った。
「キマイラがこちらに気付いたわ」
「ただちに戦闘態勢に入って!」
キマイラは俺たちに気付いたようで、こちらを向いてゆっくり近付いてくる。
「近付いてくるぞ…」
「な、なにする気なの?」
「こちらの様子を窺っているな」
俺たちとキマイラは少しの時間、睨み合って…突然キマイラは真ん中のライオンの口から火を吐いてきた。
「うわぁ!ヤバいかも!」
「ここは一旦引くか!?」
「俺に任せろ!」
俺は火に向かって突撃していき、剣で火のブレスを斬った。
「おぉ!すげぇなリエス!」
「これがウリエルの強さ!」
ウルスとジェミは感心しているようだが…。
「いや、まだ安心できないね」
「あぁ、俺もそう思う」
「「え?」」
その瞬間、キマイラは3本全ての頭から巨大な炎のブレスを放った。
かなり広範囲の攻撃だが、ウリエルにかかればどうということはない。
それに、俺の後ろに3人がいるので、俺が対処できる限り3人に危害が加えられることはないだろう。
すると、キマイラは翼を広げて飛び上がった。
そして、火を吐きながらすごいスピードで突進してくる。
「ウルス、ビーム撃てるか?」
「おう!真正面からぶつかってくるなんて、やられにきてるようなもんだぜ!」
ウルスはミカエルのビームライフルでビームを撃った。
しかし…。
「なっ!?避けただと!?」
「すごい瞬発力だな…」
なんとキマイラは、さっきまで正面から突進してきたというのにビームに当たる直前で回避したのだ。
やはりバーゴが言った通り早いな。
それに回避力もある。
だが…!
「これならどうだ?」
俺はロケット砲を発射する。
予想通り、キマイラはそのロケット砲を避けようとした。
しかし…。
ドォン!
このロケット砲には追尾性能が搭載されているため、回避は困難である。
そして、見事命中した。
「キィィィン…」
ロケット砲が命中したキマイラは、少し怯んだような素振りを見せ、スピードも減速した。
やはりコイツはスピードに大幅に特化した性能なのか。
防御力はさほど高くないな。
「キュピィィィン…」
キマイラの目が光った。
「なんだ?」
「何するつもりなの?」
「あ、これは一旦引いた方がいいかも」
「そうだな、お前ら俺の後ろにいろ」
キマイラは3本の首を同時にこちらへ向け、炎のブレスを放った。
それも、さっきまでとは比べ物にならないサイズだ。
さらに、飛行しながら早く動き回るものだから対処がかなり難しい。
正直甘く見ていた。
コイツ、思ったより強いな。
今回は一筋縄ではいかなそうだ。
「おい!やばいぞコレ!」
「こんなでっかい炎見たことないんだけど!」
ウルスとジェミはキマイラの炎を見て驚いている。
今更そんな驚くことだろうか?
機構魔獣の恐ろしさは分かっていると思うのだが。
確かに、こんな巨大な炎に直撃すればただでは済まないだろうな。
だが…!
「ウリエルには強力な耐火性能がある!こんな火の海どうってことないぞ!」
俺は巨大な炎をたたっ斬り、キマイラに一直線に突進し、斬撃をお見舞いする。
バッキィィィンッ!
ウリエルの斬撃は、真ん中のライオンの頭部に命中した。
その頭部は砕け散り、火を吐くことができなくなっている。
これで攻撃手段の3分の1は削ることができたというわけだ。
キィィィン…。
すると、キマイラの目からさらに強烈な光が放たれた。
おそらく興奮状態に突入したな。
ゴォォォォッ!
そして、キマイラは二本の首から、空一面を覆い尽くすほどの巨大な青い炎を吐き出した。
青い炎は火の中で最も高温なのだ。
つまり、さっきより火力も攻撃範囲も上がったということだ。
「ど、どうすんのアレ!?」
「任せろ!あんな火、俺のビームで穴空けてやるぜ!」
ミカエルはビームライフルと両肩のビーム砲を同時に撃った。
3つのビームはぶつかり合い、混ざり合って、超巨大なビームができた。
ウルスの言葉通り、そのビームで青い炎にぽっかり穴が空いて、すぐに火は消えた。
しかし、キマイラは相変わらずの回避力でビームを避けていたようで、全くダメージを受けていなかった。
「チッ…仕留め損ねたか」
「なら俺はさっきと同じ手でいくか」
俺はさっきと同じように、ウリエルのロケット砲をキマイラにぶち込もうとする。
確実に仕留めるために何発も撃った。
しかし…。
「ロケット砲が燃やされた!?」
キマイラが吐いた炎のブレスが、ロケット砲を飲み込み、燃やし尽くした。
まずいな…。
あと何度か攻撃すれば倒せるはずなのに、攻撃そのものを当てることができない。
どうする?
すると、サリエルが俺の前に出てきた。
「バーゴ?」
「この時を待ってた、機構魔獣キマイラ。私は必ずお前を倒す。スピカのためにも」
バーゴが言うと、ヘルクとクレスも反応した。
「バーゴ…」
「そうね…」
スピカ?
一体誰のことだろうか?
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