第22話
俺たちは薪木を集めて火をつけた。
これで少しは暖まるだろう。
「やっぱり寒いよぉ…」
「今夜だけだ、我慢してくれ」
「俺たちはもう慣れたからへっちゃらだな」
火をつけてもジェミが寒がっていた。
仕方ないので、俺の上着を貸すことにした。
「ほら、これ着ろよ」
「え?いいの?」
「寒いんだろ?風邪引かれたら困るからな」
「あ、ありがとう…」
さっきは散々煽ってきたくせに、素直に礼は言えるものだから何だか憎めないな。
するとウルスも…、
「お、俺も寒くねーぞ!ほらジェミ!俺の服も貸してやるよ!」
まさか俺と張り合っているのだろうか?
俺はそんなつもりないのだが。
そして、俺たちは川で獲ってきた魚やカニ、木の実などを焚き火で焼いて食べることにした。
「あ、このカニおいしい!」
「おいおい、野宿にしては贅沢すぎだろ!」
「社畜時代は虫とか普通に食ってたからな…」
「虫!?」
「あぁ、草むらから手掴みで獲ったりしてたな」
「虫も意外とうまいんだぜ!」
「え…、私絶対無理…」
そんな雑談をしながら野宿をする。
夜なので少し寒いが、なんだかんだ仲間と一緒にいるのは楽しいな。
「やっぱり仲間がいるってのはいいな」
「うん!気を遣わなくていいから楽しいね!」
「おう!俺は仲間と一緒なら、ずっと野宿生活でも構わないぜ!」
それは俺たちが嫌だな。
「ふぅ〜、結構うまかったな」
「野宿も案外悪くないじゃん!」
「んじゃ、そろそろ寝るか」
俺たちは寝ることにした。
しかし、布団などはもちろん持っていないので、葉っぱを集めてその上で寝ることになった。
「うわ、地面硬っ!」
「今夜だけだ、我慢してくれ」
「俺は地面で寝るの慣れたぜ!」
相変わらずジェミは文句を言っていたが、順応するのは早いようで、すぐに寝てしまった。
すると、ウルスもすぐに寝たようだ。
「すー…すー…」
「くかー…くかー…」
「…寒いな」
ジェミに上着を貸したせいか、毛布代わりになるものがなく、結構寒い。
どうやらウルスは寒さに強い方らしい。
夜風が当たっているのに、寒がる様子も見せない。
「悪いジェミ、やっぱり俺の返してくれ…」
寒さに耐えかねた俺は、ジェミからこっそり上着を取ろうとしたが…、
「すー…すー…」
気持ちよさそうに寝ていたので、そんなことはできなかった。
俺は我慢して寝ることにした。
―――――――――――――――――――――
「おはよぉ〜…まだ眠〜い…」
「いやぁ〜よく寝た…ってどうしたリエス?」
「け、結構寒かったぞ…」
結局、昨夜は寒すぎてよく眠れなかった。
こうして、俺たちの野宿の夜は明けたのだった。
それにしても、朝になると一気に暖かくなったな。
昨夜の寒さがまるで嘘のようだ。
さて、今日もまたバーゴたちの会社に向かうとするか。
―――――――――――――――――――――
「バーゴ、いるか?」
「リエス!おはよう!」
「君たち、来るの早いね〜」
「早起きはいいことよ」
俺が呼ぶと、バーゴたちが返事をしてくれた。
ヘルクとクレスもすでに来ているようだ。
「朝も早いんだな、もしかして会社で寝泊まりしてたりするのか?」
「そんなわけないでしょ。私たち、昔からの幼馴染だから家も近くてね。それですぐに集まれるように、この会社を私たちの家の近くに作ったの」
「あぁ、そういうことか」
「そうだよ。この街はいつキマイラが襲ってくるか分からないんだから。もしそうなったら対処できるのは私たちしかいないんだよ?」
え?
俺はその言葉に少し引っかかった。
「なぁ、ここではレストアージの開発から戦闘・救助も行っていると言ったよな?この街にはレストアージ戦闘隊はいないのか?」
「いたよ?前までは。でもキマイラが襲撃してきた時に本部ごと焼かれちゃってね。レストアージも全部ダメになっちゃったみたい」
「マジかよ…」
それに、他にも気になることがある。
昨日初めてナスタチウムに来て、店に行ったり、ホテルを探しに街中を歩き回ったりしたのだが、異様に人の数が少なく感じた。
それに道中でも、街に着くまでずっと何もない荒野が続いていた。
それは荒地というか、焼かれて黒焦げにされたような跡だった。
「そういえば、キマイラによる被害の規模は、国土の5分の1が焼き尽くされたと聞いたんだが、その割には人が少なすぎじゃないか?この街もそれなりに発展してるとは思うんだが、昨日見かけた住民は100人もいなかったぞ」
すると、バーゴは驚いたような顔をした。
「え?それいつの話?」
「いつ…って、ここに書いてあるだろ?」
俺は機構魔獣による被害記録を見せた。
「アルファオメガ暦934年…って2年前か。ってことは初めてキマイラが出現した時だね」
「え?初めてってどういうことだ?」
「実はね…、この2年間でキマイラは合計4回もナスタチウムを襲撃してるの」
「4回も!?」
「その度に被害は拡大していって、今では国土の半分以上が焼け野原にされて、国全体の人口は3分の1以下になっちゃったみたい」
「な、なんだよそれ…」
驚いた。
まさかそんなに被害が大きかったとは。
これではナスタチウムが壊滅してしまうな。
「そうか、なら至急討伐しないといけないな」
俺はウリエルに乗る準備をすることにした。
「え?リエス、どこに行くの?」
「決まってるだろ。今すぐキマイラを倒しに行くんだ」
「え、いきなり!?」
「いきなりじゃないだろ。またいつ襲ってくるか分からないんだろ?ならその前に奴を倒す」
「待てよ、リエス!」
「ちょっと待って!」
「どうしたんだ?」
俺が部屋を出ようとすると、突然ウルスとジェミに呼び止められた。
「焦る気持ちも分かるが、1人で突っ走ろうとすんな!」
「今は私たちっていう仲間がいるんだから!」
「ウルス、ジェミ…」
そうだ。
怒りで我を忘れていた。
俺は何を1人で挑もうとしてたんだ。
今の俺には仲間がいるじゃないか。
「私も一緒に戦う!」
「あたしたちはレストアージ持ってないから戦えないけど〜」
「指令室で全力で戦闘のサポートをするわ」
それに、バーゴ、ヘルク、クレスもいる。
仲間と一緒なら何も怖くない!
「よし!それじゃ行くぞ!」
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