第21話 

「そうだ!この際だからリエスたちのレットアージも見せてくれない?」


バーゴは協力関係になったということで、俺たちにもレットアージを見せてほしいと頼んできた。

「そうだな。じゃあ外に来てくれ」


―――――――――――――――――――――


「これが俺のレストアージ、ウリエルだ」

「俺のはミカエル!」

「私のはガブリエル!」

俺たちは外に移動し、それぞれのレットアージをバーゴたちに見せた。


「おぉー!」

「いいね〜」

「中々いいわね」


3人も称賛してくれているようだ。

じゃ、そろそろ本題に入るか。

「よし、それじゃキマイラ討伐作戦の計画を立てるか」


俺たちはバーゴたちの会社に戻り、キマイラを倒すための話し合いをすることにした。


「まずはキマイラについて教えてくれ」

俺はキマイラの特徴などをバーゴたちに色々聞いてみる。


「そうだね、見た目の特徴はなんといっても首が3つあることだね」

首が3つ?

ケルベロスみたいに3つの首を利用した攻撃をしてくるのか?


「その首はそれぞれ獅子、山羊、蛇の顔を持っているの。そしてその3つの首全てから火を吐く攻撃をしてくる」


火を吐く攻撃が主流なのか?

それなら前にイフリートと戦ったことがある。

今回も案外苦戦はしなさそうだな。


「なぁ、そのブレス、火力がめちゃめちゃ高かったりするか?」

「いや、機構魔獣の中ではそんなに攻撃力自体は高くないと思うよ」


「それなら大丈夫だな。ウリエルには強力な耐火性能が施されている。火の海の中でも問題なく突っ込めるぞ」


流石にイフリートに触れたりしたら、どうなっていたか分からないが。


「それはすごく役に立つね。でもキマイラの本当の危険性はそこじゃない」

「そうなのか?一体何が危険なんだ?」


「キマイラのもう一つの特徴として大きな翼を持っているの。つまり飛行が可能。そして、翼を利用した高速移動もできる」

「高速移動?」


そういえば被害記録を見た時、国土の約5分の1が焼き尽くされたって書いてあったな。

イフリートに劣る火力量でそれほどの被害が出るのかと思ったのだが…。


「つまり被害が深刻なのは、キマイラの攻撃力が高さが主な原因ではなく、空から襲撃できる、高速で移動できるから攻撃スピードも早い、ということだな」

「そういうこと」


これは厄介だな。

デカい体で素早くちょこまか動き回るのか。

その分、機体も大きく動かすことになるから、体力の消費も大きくなる。

だからといって撤退するのも簡単ではない。

正直、今までの相手とは一味違うな。


「ちなみにバーゴたちは戦ったことがあるのか?」

「いや、ないよ。ナスタチウムがキマイラに襲撃されたのをきっかけにこの会社を設立したから」


「え、そうなのか?」

「うん、私の大切な人がキマイラに奪われちゃったからね。その復讐みたいなもんだよ」

「そうか…」


やはり機構魔獣による被害に遭った国の生き残りは大体そういう境遇なのか。

俺も家族を奪われた身であるため、その話については詮索しないことにした。


―――――――――――――――――――――



「それじゃ俺たちはそろそろお暇するか」

「そうだな」

「そうだね」


「え〜?今日はもう遅いし、泊まっていったら?会社にお風呂も寝る場所もあるよ?」


「いや、流石にそこまで世話になるわけにはいかないからな」


その後も話し合いを続けていたら、いつの間にか夜になっていた。

話し合いに熱が入りすぎたな。

俺たちは会社を後にした。


「さて、泊まれる場所を探さないとな」

「え?この辺りに宿はあるのか?」

「見た感じ良さそうな宿はなさそうだね…」


やっぱり近くに宿はないか…。

この街に宿泊施設はそこそこあるが、ここは街から結構離れている。

今から歩いていくのは面倒だ。


「仕方ないな…。今日は野宿か…」

「そうか、そうするしかねぇな…」

「え…?嘘でしょ…?」


―――――――――――――――――――――


「ハッ…クシュン!う〜、さむっ…!」

ジェミがくしゃみした。

寒いのは分かるが我慢してくれ。


結局、泊まれる場所を見つけられなかった俺たちは野宿をする羽目になった。


「私、野宿とかしたことないんだけど?」

「安心しろ!俺とリエスは結構あるぜ!」

「残業してた時とか飯食いに行く時間なかったもんなぁ…」


俺たちが働いてた工場は、街から少し離れてたせいで休憩時間に食事に行くことができなかったため、夜勤の時は野宿してたことが度々あった。


するとウルスが言った。

「なんか…社畜時代を思い出すな」

「やめろ、俺も結構キツかったんだからな」

「2人も大変だったんだね…」


こうして、俺たちの野宿の夜が幕を開けた。







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