第20話
「いやー、食った食った!」
「奢ってくれてありがとね、リエス!」
「お前ら食い過ぎだろ…」
かなり注文したから結構なお値段となったが、レオからもらった金貨10枚があったため、そこまで痛手とはならなかった。
あの時、遠慮せず受け取っておいて正解だったな。
「さて、そろそろ情報収集を…お?」
2人のほうを見ると、ウルスが向こうをじっと見つめていた。
「ウルス、どうした?」
「見ろよあれ、マジ眼福だよな」
ウルスが指差したところには、1人の綺麗な女性が歩いていた。
年齢は…俺たちより少し上くらいだろうか?
「めっちゃ美人だ!あ〜、俺はあんな人と付き合いてぇんだ!」
「お前は本当に女好きだよな…」
「ふーん、ウルスはあーゆー女が好みなんだー?」
そんな中、ジェミだけは嫌そうな反応をしている。
嫉妬でもしているのだろうか?
「おいウルス、見惚れてないでさっさと行くぞ…ウルス?」
気付くとウルスがいなくなっていた。
一体どこへ行ったんだ?
「ねぇねぇ!そこのお姉さんー?良かったら俺と一緒に遊ばなーい?」
いつの間にかウルスは女性に話しかけていた。
「アイツ…!もう言い寄ってるのか!」
「後で説教しないとね…」
ウルスを連れ戻すために俺たちもそっちへ行く。
「ねぇねぇ?どうー?」
「う〜ん…、いいよ。じゃあ私についてきて」
は?
「え、いいの!?」
「うん」
「やったぜー!」
なんとその女性はウルスの下手なお誘いを了承したのだ。
「あ、私はバーゴ。よろしくね」
バーゴと名乗ったその女性は先に歩いていった。
そして、俺たちもついていく。
―――――――――――――――――――――
「ここだよ」
少し歩いて、バーゴはある建物の前で立ち止まった。
見た感じ、小さい会社のような建物だ。
「ここは会社…なのか?」
「そう!ここは私の会社!」
俺が訪ねると、バーゴは自分の会社だと答えた。
「もしかして個人事業主なのか?」
「ん〜、そうだね〜。でも一応社員はいるよ?」
どういうことだ?
「それで!なんで俺の誘いOKしてくれたの?」
「本当にね、こんな変態のどこがいいんだか」
「はぁ!?誰が変態だよ!」
「アンタよ、アンタ」
何やらウルスとジェミが揉めているが、気にしないことにする。
「それじゃどうぞ」
バーゴが俺たちを中に案内する。
そこには…、
「ここは…指令室か…?」
そこには比較的狭い通信指令室があり、バーゴと同世代くらいの女性が2人いた。
「そう!ここは私の会社!私はレットアージの会社を個人で立ち上げたの!」
「マジかよ…」
「すげぇ…」
「ヤバー…」
「どう?私すごいでしょ?」
「お、おぅ…」
バーゴが自慢してきた。
でも本当にすごいな。
まだ若いのに自分で会社を作るなんて。
「あたしは社員のヘルクだよ〜、よろしく〜」
「私はクレスよ、よろしく頼むわ」
社員の2人はそう名乗った。
見たところ、ヘルクは呑気そうな性格に見えるが、クレスはどちらかと言うと冷静沈着といった印象だ。
「んで、今この会社は私含めて3人ってわけ!ちなみにこの2人とは昔からの友達だよ!」
「友達同士なのか、いいじゃないか」
昔からの友達と一緒に仕事ができるって楽しそうだな。
俺もこの旅が終わったら、自分で会社を立ち上げてみるのもいいかもな。
それでウルスとジェミも誘って。
それで成功するかは別だが…。
「それで、バーゴたちはここでどんな仕事をしてるんだ?」
「レットアージに関することは大体やってるよ。開発・改修はもちろん、戦闘・救助も仕事内容の一つだよ」
なんと開発から操縦まで自分たちでやるのか。
まるで二刀流だな。
「思った以上にすごいんだな…」
「でも、今のところ成果は1機開発しただけなんだけどね…」
バーゴが言いにくそうに言った。
いや、たった3人の社員で1機のレットアージを作ったっていうだけでも相当すごいことだと思うんだが…。
それに女性だけで開発された機体か。
性能はもちろん、デザインも気になるな。
…見てみたいな。
「なぁ、もし良かったらなんだが…、そのレットアージ、見せてもらえないか?すごく興味が湧いたものでな」
「お、いいな!俺も見てみたいぜ!」
「私も!すごく気になる!」
俺が言うと、ウルスとジェミも賛同した。
やはり、同じパイロットというだけあって興味津々なようだ。
「わかった!じゃあ案内するよ!ヘルクとクレスも一緒に来てくれない?」
「あ〜、別にいいよ〜」
「えぇ、分かったわ」
俺たちは3人の後についていくことにした。
指令室から出て、地下通路に入った。
暗い階段を降りていき、地下室にたどり着く。
そこには大きな扉があり、その扉はパスワード入力式のロックが掛けられてあった。
どうやら、それは大事に保管されており、セキュリティもかなり頑丈のようだ。
「ここか…」
「楽しみだぜ!」
「どんな感じなのかな?」
俺たちは期待を膨らませる。
「それじゃ、開けるよ!」
バーゴがパスワードを入力し、地下倉庫の扉のロックが解除された。
そして、扉は自動で開いた。
扉が開かれると、1機のレットアージの姿が見えた。
それは水色っぽい色で、ウリエルのような鎧型の装甲に、武装は剣と盾を持っている。
しかし、剣はウリエルのよりも一回り小さい。
おそらく、攻防特化型だな。
ウリエルが攻撃に完全特化なら、こっちは攻撃も防御も程よくできる性能といったところだな。
「おぉー!カッケーな!」
「すっげぇぇぇぇ!」
「やっばぁぁぁぁ!」
俺たちはそれを見て、かなりテンションが上がっていた。
それもそうだろう。
女性が開発した機体と聞いていたものだから、ピンク色とか可憐なデザインを予想していたのだが、まさかのかっこいい系だったとは。
これは予想をいい意味で裏切られた。
「どう?すごいでしょ!これが私たちのレットアージ「サリエル」だよ!」
「私たちの自信作だよ〜」
「かなり腕をかけたわ」
しかも、こんなのは相当な力仕事のはずなのに、女性3人だけで作れるなんてすごすぎる。
ここはとんでもない企業だな。
「なぁ、これのパイロットは誰なんだ?」
「私たち一応全員がレストアージを操縦できるけど、一番使い慣れてるのは私かな」
どうやらバーゴがサリエルの主なパイロットのようだ。
しかし、さっきは成果がこれを開発しただけと言っていた。
ということは、まだ使っていないのか?
「ところで、これはどんな目的で使うんだ?」
「それはもちろん、機構魔獣との戦闘だよ!」
機構魔獣との戦闘!?
もしかして…!
「なぁ、その機構魔獣はキマイラってやつだったりするか?」
「うん、そうだよ?なんだ、知ってるんだ」
つまり俺たちの目的は同じか。
なら話が早い。
「実は俺たちも、そのキマイラを倒しにここへ
来たんだ。話を聞く限りでは目的は同じのようだ。ここは一つ、俺たちと手を組まないか?」
俺はダメ元で、バーゴたちにキマイラ討伐に協力してもらうように頼んでみることにした。
するとバーゴから返ってきた言葉は予想外のものだった。
「フフフ…、その言葉を待ってたよ」
「待ってた?」
どういうことだろうか?
「実は私たちも一緒に戦ってくれる仲間を探してたの!そこでウルスが私に声をかけてくれたからチャンスだと思ってね!」
ということは、別にウルスのお誘いが成功したわけではないようだ。
…ウルス、残念だったな。
「そうか、なら交渉成立だな」
「うん、これから仲間としてよろしく頼むよ」
こうして俺たちとバーゴたちは、キマイラを討伐する仲間として手を組むことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます