第19話 

「拾った…ってどういうことだ?」

俺が聞くと、ウルスが答えた。


「お前が旅に出た後、俺は工場に置いてあった私物を回収しに行ったんだ。そのついでに周辺の被害状況を確認してたら…偶然コイツらを見つけたってわけだ」


「どうなってんだよ、ウチの工場は…」


1つの工場周辺にレットアージが3機もあるもんなのか?

一体誰がそんな貴重なもの放置したんだよ。

そもそもウリエルも誰がいつどこで作ったものか分からないもんな…。


「それは分かったが、なんでジェミが一緒にいるんだ?」

ジェミもレットアージに乗っていたが、実はパイロット経験があるのだろうか?


「私がウルスについていったの。最初はもっとリエスの話を聞きたかっただけだったんだけど、機構魔獣を倒す旅に出かけてるって聞いたからすごく興味が湧いちゃった!」


「いや、興味湧くなよ…結構危ない旅だぞ?」


俺は改めて、2人のレットアージを見る。

「そういえばこれ、なんて呼べばいいんだ?」


2人はそれぞれのレットアージの名を言った。

「俺のはミカエルって書いてあったぞ」

「私のはガブリエルって書いてあったよ」


ミカエルとガブリエルか。俺のがウリエルで、確かキャンサのがラファエルだったよな。まるで四大天使の名が揃ったようだな。

…ん?書いてあった?


「なぁ、それは自分で命名したのか?」

「いや、書いてあったぞ」


「書いてあった…?どこにだ?」

「コックピットの中だな」


ウルスにそう言われたので、俺はウリエルのコックピットを再度確認する。

起動させてみると、モニターに「URIEL」と表示されていた。


…気づかなかった。

まさか、自分で命名したと思ったら本当にウリエルという機体名だったとは驚きだ。


いや、それよりもだ。

「それで、キマイラを討伐しようってのは本当なのか?」


「おう、ナスタチウムの国民から救助依頼が来てな!倒せたら報酬がもらえるらしいぜ!」

「お前は報酬目当てかよ…」


「私は…ただ倒したい」

「ジェミ?」


「実はね…私の両親はレットアージに携わってたの。お父さんがパイロットでお母さんがエンジニアだったの」


奇遇だな。

俺の両親もそうだった。

もういなくなってしまったが…。


「でも、機構魔獣“DD”が私の両親を奪ったの。だから…私も機構魔獣が憎い」

「そうか、DDに…。俺と全く同じ境遇じゃないか」


「リエスも?」

「あぁ、目的は一緒みたいだな。よし、2人共俺に協力してくれ!俺たちでキマイラを見つけ出して必ず倒すぞ!」


「おう!」

「うん!」

2人は俺に頷いてくれた。


「ところでコイツどうする?」

俺はさっき倒した機構魔獣を見た。

デカすぎて邪魔なんだが。


「ん?サイクロプスのことか?」

「サイクロプス?」


「あぁ、コイツは機構魔獣サイクロプス。存在が確認されたのはつい最近で、被害もそこまで大きくないようだが、機構魔獣である以上討伐は必須だからな」


「大っきな体に、大っきな一つ目、一本角が特徴って聞いたからすぐ分かったよ」


「そうか、まだ未確認の機構魔獣もいる可能性があるのか。旅は思ったより長引きそうだな」



その後、俺たちはキマイラによる被害があったというナスタチウムのとある街に向かうことにした。

ちなみにサイクロプスの残骸は、一旦放置することにした。


すると、ウルスが聞いてきた。

「なぁリエス、機構魔獣はどのくらい倒したんだ?」


「今のところは2体だな」


「えぇー?たったの2体?もっと倒してきなさいよー!」


ジェミがこんな文句を言ってきた。

無茶言うな。

お前らと再会したのが案外早かったんだから。


「そうか、手強い相手はいたか?」


「あぁ、でもそこで出会った奴らの協力があったからなんとか上手くやれてる」


「てことは、アンタ1人の力じゃ倒せなかったってことじゃん」


ジェミがまたいらない反応をする。

意外と煽り気質な性格なのか…?


―――――――――――――――――――――


数日後…。

ようやくナスタチウムの街に到着した。

道中ではかなり長く荒地が続いていた。

これはキマイラの仕業なのだろうか?


「やっと着いたみたいだな」

「おぉー!ここか!」

「案外普通の街じゃない?」


確かにジェミの言う通り、何の変哲もない普通の街だな。

パッと見、目立った被害はないようだが…。


「とりあえず情報収集するか」

「えー?私疲れちゃったー。ちょっと休まない?」


ジェミが休憩したいと言ってきた。

さっきの戦闘で疲れてしまったのだろう。


「俺も腹減ったなー、ちょっとどっかで休憩がてら飯食いに行かね?」


ウルスは空腹のようだ。

仕方ない。

この街には店も結構あるし、滞在するのに食事には困らないな。


俺たちは近くにあったバーガーショップに行くことにした。


「俺は普通のハンバーガーにするか。お前らはどうする?」


「俺はスーパーメガビーフバーガーとチキンナゲットとフライドポテト!」


「私はチョコレートバーガーとキャラメルバーガーとストロベリーパフェ!」


余程腹が減ってたんだな。

それより、チョコレートバーガーとキャラメルバーガーってなんだよ。


「そんなのばっか食ってると…太るぞ」

「…は?」

「いや、なんでもない…」


俺が言うと、ジェミはすごい形相で睨んできた。

今のは流石に俺が悪かったな。

とりあえず注文を済ませて席に座った。

そして数分後…。


「お待たせしましたー」

「お、来た来た」

注文した商品が全部届いたようだ。


「おぉ!うまい!ドカ食い最高!」

「こんなに甘い物がいっぱい…!おいしー!」


2人はとても喜んでいるようだ。


「ところで、そんなに頼んで大丈夫か?金あるのか?」

「あ…」


俺が言った途端、ウルスが絶句した。

さては金のこと忘れてたな。


するとジェミが言った。


「何言ってんの?今日はリエスの奢りでしょ?」

「は?どういうことだ?」


「だって、私たちが助けてあげたおかげでサイクロプスは倒せたんだよ?加勢しなかったらどうなってたかな〜?」


ジェミがまた煽ってくる。


「それは…、仕方ないな!今回だけだぞ!」


結局、俺は2人の分も奢ることになった。

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