第15話
俺には幼馴染がいた。
名をパーヴォという。
少年心が強く、元気いっぱいな奴だった。
俺たちは昔から仲が良く、毎日のように一緒に遊んでいた。
「なぁ、フェニック」
「どうした、パーヴォ?」
「俺たち、一生親友だよな!」
「おう、俺たちは親友だ!」
こんな風に、お互いを心の底から親友だと思い合える仲だった。
そして、10年ほど前のこと。
その頃からレットアージは、人々を助けるロボットとして素晴らしい活躍を見せていた。
それは、昔から少年心が強く、ロボット好きだったパーヴォからすれば憧れの的だった。
そんなある日、この街で坑内火災が起こった。
鉱山でガスが大爆発し、大規模な火災となった。
本来なら、山にいた人や近くの住民に被害が及ぶはずなのだが、レットアージ救助隊が颯爽と駆けつけ、人命救助したのだ。
それを見て、俺とパーヴォは心を動かされたんだ。
「かっこいい…」
「すっげぇ!」
すると、パーヴォはこんなことを言い出した。
「俺、レットアージのパイロットになりてぇ」
「え?」
「フェニック!お前ロボット作れたよな?」
「作れるが…急にどうした?」
「じゃあ、お前がメカニックで俺がパイロットだな!」
「どういうことだ?」
「お前がレットアージ作って、俺がそのパイロットになるんだ!」
「パーヴォ…」
その日、俺たちに目標ができた。
そして、俺たちは機械科専門学校に入学し、レットアージについて学び、パイロットとしての操縦訓練も行った。
専門学校を卒業後、俺はレットアージを作るため、今の工場に就職。
パーヴォはタマリンドのレットアージ戦闘隊に入隊することができた。
「やったな!フェニック!」
「あぁ、これで目標達成だ」
俺たちはお互いの夢を叶えたんだ。
「おっと、まだ目標達成じゃないぜ。俺たちはレットアージで人助けをするのが目標だろ?」
「あぁ、そうだったな」
「お前が作ったレットアージに乗れるの楽しみにしてるぜ!」
「任せろ。とっておきのを作ってやる」
こうして、俺たちは改めて親友であることを誓い合った。
その後、俺はパーヴォ専用機として、「ゼルエル」というレットアージを開発した。
「これがお前のレットアージ、ゼルエルだ」
「すげぇ!カッケェな!」
パーヴォはゼルエルを気に入ったようだ。
それから間もなくのことだった。
あの事件が起こったのは―――。
―――――――――――――――――――――
パーヴォがゼルエルのパイロットになって暫くたった日のことだった。
その日、俺は仕事が休みだったのでパーヴォに会いに、訓練施設を訪れた。
戦闘隊は朝早くから体力作りのため、走り込みをしていたようだ。
もちろん、その中にパーヴォもいた。
「お、フェニックじゃねぇか!」
パーヴォが手を振ってこっちへ来た。
「パーヴォ、ゼルエルの操縦には慣れたか?」
「おう、絶好調だ。すっかり俺の相棒だぜ!」
「そうか、ならよかった」
「おう、んじゃ俺はこれから訓練だからまた後でな!」
そうして、パーヴォが訓練に行こうとした時だった。
ドォォォォン…!
向こうの鉱山からすごい音と地響きがした。
「なんだ!?」
「あそこからだ!」
そこには、頭が3本あり、恐ろしい顔をした巨大な犬の形をした機械生命体がいた。
それがケルベロスだ。
「ワォォォォン!」
ケルベロスが甲高い声を上げて唸り声を上げた。
吠えただけだというのにとてつもない威圧感を放っていた。
「な、なんだよアイツ…」
「まさか…あれが機構魔獣ってやつか…?」
俺たちは見たこともない脅威に怯えるしかなかった。
しかし、後ろにいた戦闘隊は…、
「機構魔獣の存在を確認!直ちに迎撃を開始する!戦闘隊、出撃!」
怯むことなく、パーヴォ以外の全員の出撃用意が完了し、ケルベロスの元へ向かっていった。
「こうしちゃいられねぇ!俺も行ってくる!」
パーヴォもすぐにゼルエルに乗り、戦闘隊の後に続いた。
「犬なんざぶった斬ってやる!」
戦闘隊の1人が、ケルベロスの目の前で剣を構え、斬りかかろうとする。
しかし、その瞬間…
ドゴォォォン…!
ケルベロスの3本の頭が同時に口からビームを撃った。
そのビームに直撃した戦闘隊の1人は、レットアージごと爆破されてしまった。
「そんな…、レットアージが…粉々に?」
レットアージの装甲は数あるロボットの中でも最高級の強度を誇る。
ケルベロスのビームは、それを容易く爆散させたのだ。
「だが、後ろがガラ空きだ!」
今度は別の戦闘隊の1人が、ケルベロスの後ろに回り込んで、武装の槍で突き刺そうとする。
槍はケルベロスの後ろ足を突いたが…。
バキィン…!
「なっ…!?」
槍が折れたのだ。
どうやらケルベロスの装甲の強度は、大槍すら
歯が立たないようだ。
ズドォォォン!
ケルベロスの重い尻尾が、そのレットアーチを地面に勢いよく叩きつけた。
当然、レットアージは粉砕され、破壊されたコックピットからパイロットの血が流れているのが分かった。
「お…おい、どうすんだよコイツ!」
「俺たち全員殺されちまうよ!」
ケルベロスの圧倒的な力の前に、先ほどまでの戦闘隊の威勢はすっかりなくなっていた。
「皆が諦めても、私は決して諦めん!」
それでも屈することなく、立ち向かう者が1人いた。
それが市長であるレオだ。
俺がゼルエルの次に開発したレットアージ、アリエルに乗って突っ込んでいった。
アリエルは、俺が今まで作ったロボットの中で最も開発に力を入れたものだ。
攻撃力、防御力、スピードなど、戦闘面において非常に長けている。
ケルベロスがアリエルに向かってビームを撃ってきた。
レオはアリエルを巧みに操縦し、ビームを避けていく。
避けたビームは流れビームとなり、鉱山を次々と爆破していった。
3連続ビームを避けたアリエルはケルベロスの背後を取り、上から背中に斬りかかろうとする。
「その胴体、真っ二つにしてやる!」
アリエルが剣を振り下ろす。
アリエルの剣は重く、斬れ味もある。
だが、やはりケルベロスにはそんなものは通用しなかった。
「なっ!?」
アリエルの剣が一方的に粉々に砕かれ、ケルベロスはほとんど無傷であった。
「馬鹿な…。俺の最高傑作が…?」
ケルベロスが反撃してきた。
体を大きく振って体当たりする。
アリエルは遠くに吹き飛ばされ、隣の鉱山に激突した。
「まずいな…」
危機感を覚えた俺は工場の仲間に連絡し、保管庫にある大砲を用意してもらうように頼んだ。
すると、何かを察知したようにケルベロスがこちらを向いた。
まさか次のターゲットは…俺?
その予感は当たったようで、次のビームは俺を狙って撃ってきた。
もちろん、俺はレットアージに乗っていないし、何の武装もしていない。
当たれば確実に死ぬ。
避けられないな。
俺はここで終わりだ…。
そう思った時だった。
「フェニック!」
「パーヴォ?」
パーヴォの声が聞こえた。
気付いた時には、パーヴォが乗るゼルエルはビームの餌食となっており、その瞬間爆発した。
パーヴォは俺を庇って、ビームに直撃したのだ。
爆散したゼルエルの破片が地に落ちていく。
「パーヴォ…?嘘だろ…?」
コックピット部分が落ちてきた。
そこには、全身がひどく損傷し、血まみれになっているパーヴォの姿があった。
「パーヴォ!」
「フェ…ニック…」
「お前…なんであんなこと…」
「言った…だろ?俺は…人々を助ける…ために戦闘隊に…なったんだ。最後に…お前を守る…ことができた。これで…目標達成…だ」
パーヴォの目が虚ろになっていく。
「待ってくれ!俺たちはずっと一緒だって言っただろ!俺を…俺を置いていくな!」
「フェニック…アイツは…お前が必ず…倒して…くれ…。親…友…」
パーヴォの瞼は閉ざされ、息が途絶えた。
「パーヴォォォォ!」
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