第14話 

通常のレットアージのように、正統派ヒーローロボットの見た目をしているが、金色という特徴が華やかさを際立たせている。


「カッコいいな。なんていう名前なんだ?」

「アリエルだ。パイロットはドンリマタ市長のレオだ」


レオの?

ということは、このレットアージの剣が砕かれたっていうのか?


「そうか、これがレオのレットアージなのか」

「お前、レオに会ったことがあるのか?」


「あぁ、ここに来る前にな。ケルベロスについての情報を聞いていたんだ」

「ケルベロス?まさか機構魔獣のか?」


「そうだ、俺はケルベロスを討伐しに来たんだからな」

「お前、本気で言ってるのか?ケルベロスにはアリエルの攻撃も…」


「通用しなかった、それから剣を砕かれたって聞いた」

「それを聞いた上で挑むって言うのか?奴の防御力の高さはこちらの体力も精神も削られるぞ」


「そんなことやってみなきゃ分からないだろ。とにかく力を貸してくれ」

「…っ。悪いがそれはできない」

フェニックは心苦しそうに言った。


「なっ、なんでだよ?」

「情けない話だが、俺の最高傑作であるアリエルでも手も足も出なかった相手だ。倒すのは無理だ」


「そうか…」

「俺はもうケルベロスと戦うのを恐れてしまった。奴と戦うなら反対だ」


「待ってくれ!俺のレットアージを見てみてくれ!」

「いきなりどうした?」


俺はウリエルを作業場に持ってきて、フェニックや他の作業員に見てもらうことにした。

「すごいなこのレットアージ、見るからに超高性能だ…」

「見た目カッケーっすね!」

「この火力エネルギー装置すげぇな。こんなモンどこで手に入れたんだ?」


「隣国のサンダーバードだな。機構魔獣イフリートを解体したら、それが出てきたんだ」

やはり機構魔獣なだけあって、貴重な部品のようだ。


「すごいぞリエス。コイツならケルベロスを打ち破る力があるかもしれない」

「そ、それほどか…」

正直、ここまで期待されるとは思っていなかった。


すると、フェニックがあることを聞いてきた。

「すごく興味が湧いた。これはどこで製造されたものなんだ?」

「あっ…」


そういえばウリエルは、俺があの工場に就職したときからあった。

誰がいつどこで作ったのかも全く分からない。

しかも、今まで誰にも起動できなかったのに、俺がコックピットに座っただけで勝手に起動した。

一体、ウリエルは何なんだ?


俺はその質問に答えることができなかった。


―――――――――――――――――――――


あの後、ウリエルを工場に預けた俺は、歩いて宿に行った。


「おぉ、かなりいい部屋じゃないか」

部屋は広く開放的で、華美すぎない落ち着いた感じだった。


こういう部屋だと気分が落ち着くのだろうが、さっき浮かんだウリエルについての疑問で頭がいっぱいになって落ち着かない。


「とりあえず風呂行くか…」

考えたって分からないので風呂に入って休息を取ることにした。


―――――――――――――――――――――


「はぁ~。あったけぇ~。やっぱ温泉はいいな~」


俺はこ宿の醍醐味である温泉を満喫中だ。

なぜ宿に温泉があるのかというと、この街が元々炭鉱都市ということもあり、石炭を掘っていたら偶然湧き出てきたようだ。


「ふぅ〜。いい湯だぜ」

温泉の力はすごいな。

一回入れば、一気に疲れが吹っ飛んでいく。

しかし―――


「いっててて!」

温泉に浸かった俺の体に痛みが走る。

どうやら、イフリートとの戦いで火傷を負っていたようだ。

おそらく、重度の日焼けといったところか。

イフリートのエネルギーが太陽光を利用したものだからだろうか?

やはり、傷口に温泉の熱い湯は染みるな。


「そろそろ出るか…」

温泉は気持ち良かったが、痛みが厳しくなってきたため出ることにした。


―――――――――――――――――――――


部屋に戻った俺は、フェニックのことを考えていた。


「そういえばアイツ、ケルベロスと戦うのを恐れたって言ってたよな」


自分が作ったレットアージの中でも最高傑作のアリエル。

そのアリエルが手も足も出なかったケルベロス。


無理もない。

自分が一生懸命作った自信作が、一瞬にして駄作にされたようなものだ。


人間というのは、誰かにプライドをへし折られると、その相手がトラウマになってしまう生き物なのだ。


その相手を倒すのに協力しろと言っているのだから拒絶されて当然だろう。


やはり俺の都合でフェニックを戦いに巻き込むわけにはいかないか。



― 翌朝 ―


俺はウリエルを回収するため工場へ行った。

昨日は気付かなかったが、来客の際に使われるインターホンが設置されていた。

俺はインターホンを押す。


「はい、どちら様ですか?」

出てきたのはフェニックだった。

工場長なだけあって一番早く出社しているようだ。


「よう、フェニック」

「リエスか。待ってろ、今行く」


フェニックに鍵を開けてもらい、中に入る。

工場の中を改めてよく見ると、攻撃特化型レットアージに火砲が取り付けられていた。


「そういえば、ここでは石炭鉱業が盛んなんだよな?」

「そうだ。それでレットアージの武器として火砲を装備することが多いな」


火砲か。

炎の騎士を彷彿とさせるウリエルにピッタリかもな。

でも、シグナの改修のおかげで剣に炎を纏わせることができるんだよな。


と言っても、剣に火口ノズルを取り付けてスパークさせて発火しているから、言わば超巨大チャッカマンだな。


「大砲とかも作ったりするのか?」

「あぁ、デカいからレットアージに装備させることはできないけどな。ちなみに別室に大量に保管してあるぞ」


確か、レオが言うには、ケルベロスは大砲を連続で撃ったら逃げたって言ってたな。

大砲が弱点なのか?

いや、聞いた限りでは奴の防御力は異常に高いらしいからな。

おそらく、大砲の威力でも倒すのは難しいだろう。


「ところで、何か用事でもあるのか?」

「あぁ、今日もレオに会いに行こうと思ってる」

今日も仕事の合間を縫って、俺とケルベロス討伐の話し合いをする時間を取ってくれるようだ。


「もしかして、ケルベロスのことか?」

「分かるのか」

やはり勘付かれたようだ。


「別に止める気はない。むしろ本当に倒してくれるのならありがたい。ただ、もう犠牲者は出て欲しくない」


フェニックは誰かを悔やんでいるような表情を浮かべて言った。


「なぁ、何かあったのか?」

気になって、俺は問いかける。


「少し長くなるが聞いてくれるか?」

「あぁ」


そうして、フェニックは過去の話を始めた。


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