第11話 

イフリートを討伐した俺たちは、イフリートの死体を回収するため、落下地点へ向かう。


落下地点には巨大な穴が空き、一帯の地面には焼け跡が残っていた。

イフリートは死してなお、熱と炎を発していたのだ。


「これがイフリートか」

「間近で見ると恐ろしい姿ですね」


イフリートの死体を見てみると、その姿がはっきりと明らかになった。


全長30メートルはあるであろう巨体。

人型にも見えるが、非常に恐ろしい顔つきをしており、頭に巨大な2本角が生えている。

手足は猛獣のようにがっしりしており、鋭い爪を持っている。

体色も全体的に黒く、悪魔を彷彿とさせる。


それにしても、さっきまで強力な炎を纏っていたのにイフリートの体には燃えた跡が一切残っていない。

異常なまでの耐火性能を持っているのだろう。


「で、コイツどうすんだよ?」

キャンサが聞いてきた。

「回収するぞ。死体も完全に処分しないとな」


―――――――――――――――――――――


俺たちはイフリートを回収して、訓練施設に戻った。

すると、ペガスが言った通り体内は主に機械でできており、心臓部から破壊された火力エネルギー装置が出てきた。


どうやら、内部のほとんどは機械で構成されており、かなり複雑に入り組んでいる。

これを詳しく調べるのには、かなり時間がかかりそうだ。

コイツが何者なのかはまだよく分からないな。


「これでイフリートは体内で炎を生成していたのか」

「そのようですね」


よく見たら、これかなり良い部品じゃないか。

処分するのはもったいないな。


「これ、何かに使えないか?…あっ!」

「どうしたんだ?」


「シグナ!これをウリエルに組み込んでくれないか?」

「え?」


「ウリエルも耐火性能は高いし、内部の火力を上げれば出力も上がると思うんだが」


「組み込むと言いましても、すでに壊れているではありませんか」

「そうだよな…やっぱり無理か」


「いや、修復できるよ。待ってな、ウリエルをさらに改修してやる」


「ホントか?じゃあよろしく頼む」

「任せな!」


―――――――――――――――――――――


翌朝、シグナから連絡があった。

ウリエルの改修が完了したとのことだ。


「できたぞ、どうだ!」

「外見はあまり変わってないな」

「そう思うなら起動してみな」


俺はウリエルを起動させる。

すると何か手応えを感じる。


「出力が上がってるな」

「そうだろう。ちなみに剣にもエネルギー装置を埋め込んでおいたよ」


シグナがそう言ったので、剣を作動させる。

すると驚いた。


「剣身が炎を纏った!?」

「どうだ、すごいだろう?」

「あぁ、本当にすごいなコレは…」


剣にまでこんな改修を施すなんて、やはりシグナのメカニック技術は化け物だな。


「くぁ〜、疲れたぁ…」

シグナが倒れ込んだ。


「どうしたんだ?」

「徹夜で改修してたからさぁ、マジで疲れた。アタシちょっと寝るわ」

「帰ってから寝たほうがいいぞ」


―――――――――――――――――――――



その夜。


「う〜ん…」

俺はホテルの部屋で考え事をしていた。

そう、これは世界中の機構魔獣を倒す旅。

次の目的地を決めなければならない。


グゥ〜。


考え事してると腹が減るな。

晩飯食いに行くか。

そう思い外へ行く。


「なぁ、あれリエスじゃないか?」

「え?イフリートを倒したっていう?」

「だとしたらサンダーソニアの救世主じゃないか!」


また、街中で俺のことが噂になっていた。

ペガスもキャンサもシグナも一緒だったというのに。

すると、こんな噂も聞こえてきた。


「ねぇ、知ってる?隣国のタマリンドに機構魔獣が潜んでるって噂」

「えぇ〜マジ?怖いんだけど」


タマリンドって国にも機構魔獣が?

後で調べてみよう。


―――――――――――――――――――――


夕食後、ホテルに戻り、機構魔獣の被害記録を確認してみる。


タマリンド…タマリンド…。

あった!


・アルファオメガ暦933年1月19日、タマリンドに機構魔獣「ケルベロス」が出現。

国民や家畜、農作物が食い荒らされ、国に大飢饉をもたらした。

その後、戦闘隊により撃退されたが、現在もタマリンド内に留まっていると推測。


噂通りだ。

よし、次はタマリンドだな。


「ペガス、いるか?」

「おや、リエス様、いかがなさいました?」


「そろそろ行かなくちゃいけないみたいだ」

「…そうですか。案外早いものですね」


ペガスは少し寂しそうな表情をしていたが、すんなり受け入れたようだ。


「いつ出発されるのですか?」

「明日の朝だ。これ、今までの宿泊代だ。悪いな、何日も泊まっちまって」

「いえ、ご利用ありがとうございました!」


―――――――――――――――――――――


翌朝、ペガスが見送りに来てくれた。


「悪いな。見送りまでしてもらって」

「はい、大事なお客様ですから」


俺がウリエルに乗ろうとした時―――


「おい待てよ、リエス!」

「ひどいね、何も言わずに行っちまうなんて」

「キャンサ!シグナ!来てくれたのか!」


「当たり前だろ、お前も俺の大事な仲間だからな!」

「アタシが改修したウリエルが、飛ぶ所を見せてもらいたいもんだね」


仲間…か。

仲間と言うと、フェンリルに殺された仕事仲間を思い出してしまう。


俺は仲間たちを守れなかった。

だから、強くならなきゃいけない。

これ以上、仲間を失わないために。


「じゃあな。またいつか会えたらいいな」

「おう、俺から会いに行ってもいいぜ!」

「を気を付けて」

「頑張りなよ!」


ウリエルを起動し、飛び立つ。

さぁ、旅の再開だ。


「行っちまったな…」

「今になって寂しくなるもんだね」

「私もです」



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