第21話

イフリートの纏う炎は段々と減っていると思われたが、怒り状態に突入したことで最大限にエネルギーを放出し、凄まじい量の炎を纏った。


「まずいな、さっきとは比べ物にならないほど火力が増してる」


「ですが、エネルギー放出量も増しています。稼ぐ時間も短縮できそうです」


「その代わり、攻撃は熾烈になりそうだ」


炎が巨大化していく。

街から離れた場所には誘き出すことができているが、さらに肥大化すれば人里に被害を及ぼしかねない。


今、俺たちも奴からは離れた場所で攻撃しているが、装甲が少しずつ溶けていっているのが分かる。


「なんて熱だ!」

「危険ですね、一旦撤退しましょうか?」


「ダメだ。今から体制を立て直しても、夜明け前までに倒せる保証はない」


「ですが、私の矢がそろそろ底を尽きそうです!」

気付いたら、メタトロンの矢は残り2本となっていた。


「そうか、実は俺もロケット砲が底を尽きそうなんだ。使い切ったら遠距離攻撃方法がなくなっちまう。その後は逃げ回るしかなさそうだ」


このロケット砲は、パーツ自体は軽量でレストアージの負担にならないのに、高威力かつ最大20発装填可能。

両アーム合わせれば、合計40発だ。


しかし、予想以上にイフリートの耐久性が高い。

40発のうち、36発を撃ち込んでもまだ倒れない。

残る弾はあと4発だ。


「仕方ない。全部撃ち込んでやる」

俺は残りの4発を放ち、同時にペガスも残りの2本を撃ち込む。


全て命中。

再度、イフリートを怯ませる。

しかし、まだ倒れなかった。


「ダメだったか」

「ですがおそらく致命傷です。時間経過で奴はいすまれ倒れるかと…」


ボォォォッ…


「まずい…離れてください!」

「え?」

ペガスが何かを察知したようだ。

俺たちは奴から離れる。


突然、イフリートの様子が変化した。

「なんだ?」

「奴の最後の切り札…ですか」


さらに纏う炎は巨大化し、イフリートの全てを包みこんだ。

最早、炎を纏う悪魔ではなく、炎が悪魔の形を形成しているようだった。


「これが最終形態か…」

「そのようですね」


俺たちとイフリートとの距離は、およそ10000メートル。

しかし、この距離からでも非常に強力な熱量が発せられていると分かる。


さらに―――


「夜明けまであと1時間といったところでしょうか」


もうすぐ夜が明けてしまう。

まずいな。

早く仕留めなければ。




― 第22話に続く ―

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