第7話 

「あぁ、いきなりすまねぇ!俺はレットアージ「ラファエル」のパイロット、キャンサだ!」


キャンサと名乗る男の後ろには、白いゴーレムのようなレットアージがあった。

これはラファエルっていうのか。


「そうか、お前もレットアージのパイロットなのか」


「おう、機構魔獣フェンリルを倒した奴がこの街に来てるって聞いてな、どんな奴がパイロットなのかと気になったんだ。そしたら、こんなガキなもんだからビックリだぜ」


「ガキ…だと?」


「実際そうだろ?今だって俺の気配に反応できなかった。レットアージのパイロットなら、このくらい対処できて当たり前だぜ」


「…それは否定できないな。それより、そろそろ離してくれないか?」


キャンサはがっしりとした大きい体つきをしているからかなり重い。


「おっと、すまんすまん!それで、ここに何か用か?」


「俺のレットアージを一旦ここに預けておこうと思ってな」


「そうだったのか。それは別にいいが、せっかくのいい機会だ。俺と一戦交えてみねぇか?」


キャンサが模擬戦を提案してきた。

余程、ウリエルが気になっているのだろう。


でもウリエルの実力を確かめるには丁度いい。

この勝負受けてみるか。


「分かった、やろう」

「よし、そうと決まれば早速やろうぜ!」


―――――――――――――――――――――


その後、キャンサは1人の女性を連れてきた。


「アタシはシグナ!キャンサの専属メカニックさ。今日は審判役だ」


専属のメカニックがいるってなんかいいな。


「ルールは簡単。相手を戦闘不能にした方の勝利だ」


「それだと、レットアージに支障が出るんじゃないか?」

「安心しな。アタシがすぐに直してやる!」


流石はメカニックというだけあって、修理には自信があるようだ。


俺はウリエルに乗り、キャンサはラファエルに乗る。

準備万端だ。


「準備はいいか?よーい、はじめ!」

シグナのかけ声で模擬戦が始まった。


「行くぜ、リエス!」

ラファエルがこちらに走ってくる。


ちなみにラファエルの装備だが、相手を押さえつけて拘束するのに特化したであろう巨大なアームが特徴で、大砲や剣などの武器は見当たらない。


遠距離攻撃はできないのか?

それに、スピードもウリエルと比べるとかなり遅い。


これは案外簡単に勝てそうだ。

俺はラファエルに向かって一直線に突っ込む。

すると―――、


「おらぁっ!」

「うおっ!危ねぇっ!」


ラファエルの両アームがすごいスピードで飛んできた。

ロケットパンチってやつか。


すごい威力だ。

ギリギリで躱せたが、当たればかなりのダメージだっただろう。


「武器がないと思ったらこういうことか」

「どうだ?驚いただろ?」


「あぁ、すごいな。でも、負ける気はない」

「そうか?ならもっといくぜ!」


ラファエルは、再度ロケットパンチを放ってきた。

だが、スピードはウリエルの方が上だ。


俺は攻撃を躱し、ラファエルに連続パンチを食らわせる。


しかし、ラファエルは微動だにしない。

流石はゴーレム仕様といったところか。

まさに鉄壁の防御だ。


「だが、剣撃ならどうだ!」


大剣でラファエルを斬りつける。

ラファエルの分厚い装甲が破壊され、崩れ落ちていく。


「よし、効いてるな!」

「やるじゃねぇか、でも隙ありだ!」


俺が様子を窺っている隙に、ラファエルのパンチが炸裂した。


「くっ…!」


咄嗟に大剣でガードしたが、一撃が重い分、反動も大きい。


「まだまだぁ!」

「うおっ!」


今度はロケットパンチが直撃。

ウリエルは吹っ飛ばされる。

そして、壁に激突した。


「お前、強いな」


「当たり前だ。俺はサンダーソニアのレットアージ戦闘隊の隊長だからな!」


「隊長なのか?すごいな。なら、お前に勝てば俺がサンダーソニア最強ってことだろ?」


「そうかもな。譲る気はねぇけどな!」


ラファエルはアームを伸ばして、掴みかかってきた。

やはりすごい力だ。

掴まれたら、離脱は困難だろう。


「しょうがない。アレをやってみるか」


俺はウリエルのエンジンのリミッターを解除する。

すると、ウリエルは爆発的な加速力を見せる。


その圧倒的なスピードで、即座にアームを振り払い、連続で斬撃を食らわせる。

装甲をボロボロにしてやった。


「なんだと!?ラファエルの装甲が…!」


「食らえ!」

大剣がラファエルを貫く。

やがて、ラファエルは戦闘不能となった。


「勝者、リエス!」

「よし、勝ったぞ!」

「まじかよ…俺が負けるなんて…」


キャンサはとても悔しがっていた。

隊長というくらいだからな。

それなりのプライドがあるのだろう。


「こら、大の大人が悔しがらない!それにアンタが挑んだ勝負なんだから負けても文句言わない!」


「そうだな、俺の負けだ。お前は強い」


「案外、あっさり負けを認めるんだな。でもお前も強かった。いい勝負ができて良かったぞ」


激闘の印に、俺たちは固い握手を交わした。


「ところで、お前はカンパニュラから来たんだよな?旅の目的でもあるのか?」


「あぁ、このサンダーソニアに住み着いている機構魔獣イフリートを倒しにな」


「「はぁ!?」」

驚きすぎではないか?


「イフリートを倒すって、マジで言ってんのか!?」


「当然だ。俺は全ての機構魔獣を倒すために旅をしてるんだからな。キャンサ、お前もレットアージ戦闘隊なら対機構魔獣の訓練もしてるんじゃないか?」


「あぁ、万が一に備えてやってるが、イフリートを倒すって発想はなかったな。機構魔獣の中でもかなり危険な部類らしいし」


「そうなのか?聞いた話だと、北極の氷の10分の1が溶かされたらしいが…」


「いや、ヤバいだろ。10分の1とはいえ北極だぞ。めちゃくちゃデカいんだぞ!」


「でも、それがお前らの国にいるんだぞ。怖いとは思わないのか?」


「怖ぇに決まってんだろ!?だけど機構魔獣と戦って勝てるわけがねぇんだ。無駄な犠牲者が出るだけだ。それなら、侵略されるまで楽しく生きてた方がいいだろ。イフリートと戦うなんて自滅行為だ」


「自滅行為…そうかもな。心配してくれるのはありがたいが、これは俺の意思で決めたことだ。イフリートは倒す。それまでここで準備をしておくんだ。じゃあな、おかげでウリエルの実力を確かめられた」


「おい、待てよ!」


立ち去ろうとすると、キャンサに呼び止められた。

「どうした?」


「お前は強い。でもイフリートと戦って勝てる保証もない。だから、俺たちが協力してやる」


「一緒に戦ってくれるのか?」


「違ぇよ。俺が戦ったら速攻で殺されちまう。お前とお前のレットアージを強化してやるってことだ」


「俺とウリエルを強化?」


―――――――――――――――――――――


「…てなわけで、キャンサとシグナが俺の訓練を手伝ってくれることになってな」


「そうですか。それは心強いですね」


俺は宿に戻った後、今日のことをペガスに話した。


どうやら、サンダーソニアは比較的小さい国だから人脈が広い人が多いようで、2人はペガスとも知り合いなようだ。


「それで、訓練はいつからです?」


「早速、明日からだ。いつイフリートが襲ってくるか分からないからな」


俺は部屋に戻った。

模擬戦で疲れたので、今日はすぐに寝ることにした。

しかし…。


グゥゥゥゥ…。


「腹減ったな…そういえば飯食ってねぇな…」


思い出したら、めちゃくちゃ腹減ってきたな。

なんか食いに行くか。


近くに飲食店がなかったので、その日は宿の売店で軽食を買うことにした。



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