サンダーソニア編

第6話 

さて、機構魔獣に関する書類を手に入れたのはいいものの、奴らも生命体なわけだ。

出現場所が一々変わったりする可能性もある。


となると、確認されている機構魔獣の生き残りを優先して討伐することにしよう。


とはいってもソイツらがどこにいるか分からないからな。

結局、世界中の国々を巡って探すことになるだろうな。


まずは、ここから北に進んだところにある隣国、サンダーソニアを目指そう。

サンダーソニアも過去にグリフォンという機構魔獣による被害報告が寄せられていたはずだ。


「よし、行ってみるか!」


車で行けば三日程度は余裕でかかるが、ウリエルのスピードは飛行機にも匹敵する。

なんなら出力を上げれば圧倒的なスピードが出せる。

隣の国なんてひとっ飛びだろ。


―――――――――――――――――――――


…ひとっ飛びとまではいかなかったが、なんとか一日で着くことができた。


ここがサンダーソニアか。

カンパニュラと比べると古風な街並みが広がっており、自然豊かな場所が多い。


こういう景観は見ていて落ち着く。

ここですら機構魔獣の脅威に晒されているのだから恐ろしい。


「…さてと、ターゲットはどこだ?」


…と、その前に腹減ったな。

また、朝食を抜いてしまった。

それに暫く滞在するわけだし…。


俺はウリエルから降りて、飲食店と泊まる宿を探すことにした。


この街、景色はいいんだけど店らしい店があんまり無いな。

こういうとこが田舎の欠点だよなぁ。


10分程度歩き続け、なんとか宿を見つけた。

少し小さいホテルだけど、泊まるだけなら何も問題はないだろう。


「ちょっと邪魔するぞ」

「いらっしゃいませ」


中に入ると、俺より少し年上くらいの男性が出迎えてくれた。


「おや、見ないお顔ですね。サンダーソニアのご出身の方ではありませんね?」


「あぁ、つい昨日から旅を始めたところでな。

暫く泊めてもらえないか?」


「ご宿泊ありがとうございます。それではこちらにお名前をご記入くださいませ」


俺は名前を書く。

「リエス…っと」


「リエス様…!?一昨日カンパニュラに出現した機構魔獣、フェンリルを単独で討伐したという!」


「え?この国にもその話が広まってるのか?」


「当然でしょう!少年でありながら、レストアージを巧みに操縦し、機構魔獣にも怯えず、立ち向かったという偉業を成し遂げたと話題になっています!」


「お、おう。そうか…」


コイツ、クールそうな見た目の割に、結構饒舌なのか?


「失礼致しました。わたくし、ここのホテルのフロントを担当しております、ペガスと申します」

「よろしくな、ペガス」


ペガスと名乗ったその男性は、俺に深くお辞儀をした。

流石はホテルの従業員というだけあって礼儀がなってるな。


「そこで折り入ってお願いがあるのですが…」

「な、なんだ?」


「現在、サンダーソニアを恐怖に陥れている機構魔獣「イフリート」を討伐していただきたいのです!」


機構魔獣…イフリート?

そうか。早速か。


「もちろんだ。そのために来たんだからな!」

「本当ですか?ありがとうございます!」


「ところで、そのイフリートって前に北極の氷を溶かしたって奴だよな?なんで今更サンダーソニアにいるんだ?」


「それが、戦闘員がイフリートを撃退した方向にこのサンダーソニアがあったのです。ここに逃げ着いた結果、住処としてしまったのです」


「そうか、今のところサンダーソニアがイフリートから受けた被害はないか?」


「はい、ございません」


「なら良かった。でも早く倒さないと国民の恐怖と不安は取り払えないよな」


「以前、グリフォンを討伐した際に国の戦力もかなり落ちてしまいました。さらにイフリートはグリフォンより強いと思われます。今の我が国にはイフリートを討ち倒す力はありません。どうかサンダーソニアを守って下さい!」


「あぁ、必ず守ってみせる。…でもその前に部屋に案内してくれないか?少し休みたい。レストアージの操縦も結構体力使うんだ」


「は、はい!こちらへどうぞ!」


俺はペガスに部屋まで案内してもらう。

なんてことはない普通のホテルの一室だ。

少し狭いが綺麗に掃除されており、十分に休めるスペースもある。


ペガスは窓の方を見た。

「ところで、あちらに見える赤いレストアージは…?」

「あぁ、俺のだな」


そういえばウリエルを置きっぱなしだ。

宿泊中はどこに置いておけばいいんだ?


「なぁ、この街にレストアージを取り扱っている工場や店はないか?」


「工場は近くにありませんが、レストアージの訓練施設でしたらございますよ」


「そうか、ありがとう。一旦そこにコイツを預けてくる」


―――――――――――――――――――――


「ここか」


俺はペガスに言われた通り、レストアージの訓練施設にやってきた。


周囲の建物と比べると圧倒的にデカい。

流石レストアージを取り扱ってるだけあるな。

よし、入ってみるか。


中に入ってから少し廊下を歩いていくと、レストアージの訓練場に着いた。


「とんでもなく広いな」


レストアージ同士での模擬戦が可能なほど広い空間に、何体ものレストアージが並べられて設置されていた。


しかし、人は見当たらない。

困ったな。

勝手にウリエルを置くわけにもいかないし。


「おーい、誰かいないか?」

誰かいないか呼びかけてみる。

すると―――、


「お前が噂のリエスか?」

「え?」


俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。

誰かがいるな。

でも、どこだ?


「うわっ!?」


気付いた時には、俺は誰かに押さえつけられ、うつ伏せにされていた。


「なんだお前、こんなめちゃくちゃ強そうなレストアージ持ってんのに、肝心のパイロットはこんなもんか?」


見上げると、20代後半〜30代前半くらいに見えるゴツい体つきの大男がいた。


「お前…誰だ?」



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