第4話 

「いやー、戦闘の後だから腹減ったな」

「しかも夜勤明けだもんなぁ」


昨夜、フェンリルを倒した俺は、戦闘の疲れからすぐに寝てしまった。


さらに夜勤明けだったということもあり、とんでもなく腹が減っている。


そんなわけで、今はウルスと朝食を食べる店を探しに、街に来ているというわけだ。


「なぁ、多分アイツだよな?」

「マジかよ?まだガキなのにすごいな」

「レットアージで機構魔獣と戦ってた姿を見た人がいたんだって!」


街中を歩いていると、俺の話をしている声があちらこちらから聞こえてきた。


昨夜のことか?

噂が広まるのが早いな。


すると、1人の女の子が俺に話しかけてきた。

見たところ、年齢は俺と同じくらいか少し下くらいだろうか?


「ねぇ、リエスくんだよね?昨日、機構魔獣を倒したって本当?」


「あぁ、かなり強敵だったけどな。でもウリエルのおかげで勝てたぞ」


「ウリエル?」

「俺のレットアージだ。俺がそう名付けた」

「すごい!いい名前だね!」


機構魔獣を1体倒しただけでこの騒ぎ。

機構魔獣はそれほど人類の脅威というわけか。


「ねぇ?まだ話聞いてもいい?」


「悪い。今はとんでもなく腹が減ってるんだ。

後にしてもらえるか?」


流石に空腹には勝てなかったので、とりあえず店探しを続行する。


「ウルス、お前おすすめの店ってないか?」

「そうだなぁ、お!こことか美味いぞ!」


そうしてウルスに連れてこられた店は、至って普通のレストランだった。


「ここがお前のおすすめの店か?」

「あぁ、ここのピザは絶品だぜ」


絶品と言われたので、ピザを注文しようとすると店主と思しき女性が俺の元へやってきた。


「あんた、リエスだろう。昨夜、機構魔獣のフェンリルを倒したっていう」


「フェンリルのこと知ってるのか?」


「当たり前だろう。機構魔獣は世界各地で何体も目撃されている。その中で討伐されたのは数える程しかいない。今でも世界は機構魔獣の脅威に晒されてるのさ」


「そうだったのか…」


「だからね、機構魔獣を1体倒したってだけですごく偉大なことなんだよ。もっと誇っていいのさ」


機構魔獣は世界各地で何度も目撃され、その度に人類に被害が及ぶ。


これでは、近いうちに人類は滅亡してしまうかもしれない。

それだけはなんとしても防がなくては。


そこで、俺はある決意をした。


今の俺にはウリエルという心強い相棒がいる。

ウリエルがいれば、この先どんな困難にも立ち向かっていけるような気がするんだ。


「なぁウルス」

「ん、どうした?」


「俺は決めたぞ。全ての機構魔獣を倒す」

「はぁ!?」


「それってどういうことだよ?」

「言葉通りだ。機構魔獣を全滅させるってことだ」


「いやいや!正気か?機構魔獣は1体だけでも文明を滅ぼす力があるんだぞ!?それを全部だなんて危険すぎる!」


「なら、誰がやるんだ?人類は機構魔獣を恐れて誰も戦おうとはしない。これでは人類滅亡まっしぐらだ」


俺の夢は、父さんのようにたくさんの人々を助けること。

夢のために危険を顧みる必要はない。


「そうか、お前が決めることだからな。俺がとやかく言うつもりはない。俺にできるのは、頑張れと背中を押すだけだ」


俺たちは朝食を食べた後、かつての職場である工場に行くことにした。


―――――――――――――――――――――


工場も大砲の爆風で被害を受けたが、なんとか原型を留めていた。

しかし、周囲の光景を見ると山も草原も何一つなく、燃えた跡だけが残っていた。


「生き残ったのは俺たちだけか。今まで一緒に働いてきた仕事仲間が、急にいなくなるのってなんか悲しいな」


「工場長はいなくなって清々したけどな!」

「あぁ、確かにそうだな!」

言い方は悪いが、全くその通りである。


「ところで、機構魔獣を全部倒すって言ってたけど、どこにどんなヤツがいるとかの情報がないと無理じゃねぇか?」


「それが、見つける手掛かりがあってな」

「手掛かり?」


俺はウルスを工場の事務室に連れて行った。


俺はずっと機構魔獣を倒したいという思いで、この工場に機構魔獣に関する情報がないか探していた。

そして、見つけたのだ。


「これだ」


事務室の棚から、一冊の書類を取り出す。

それは、世界中で起こった機構魔獣による被害を記録したものだ。


その書類にはこう記されてある。




・アルファオメガ暦931年3月24日、地球に最初に飛来した機構魔獣「DD」によりアマリリスは壊滅。


・同年6月19日、サンダーソニアに機構魔獣「グリフォン」が出現。

戦闘員の約100人が犠牲となった。

その後、討伐。


・同年8月15日、ローズマリーに機構魔獣「ゴルゴーン」が出現。

国土の約半分を石へ変えた。

その後、討伐。


・同年10月31日、アザレアに機構魔獣「ミノタウロス」が出現。

国全体の人口の約10分の1が犠牲となった。

その後、討伐。


・アルファオメガ暦932年1月8日、カモミールに機構魔獣「ベルゼブブ」が出現。

非常に危険性の高いウイルスがばら撒かれたが、医療機関が開発した抗体で対処。

その後、討伐。


・同年2月14日、北極大陸に機構魔獣「イフリート」が出現。

大陸全体の氷の約10分の1が溶かされた。

その後、撃退。



…と、この下にもまだまだ続いているが、全て読んだらきりがない。


「まじかよ…思ったより被害は深刻だな」


「アマリリスに現れた最初の機構魔獣「DD」。

コイツを倒すのが俺の最終目的だ」





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