第3話 

「おい、リエス!急にどうしたんだよ!?」

「アレをやってみる」

「アレ?」


その後、工場内に引き返した俺たちは、工場の奥へと向かう。


「こ、これって…」

「あぁ、例のレットアージだ」


「お前、これどうするつもりだよ?」

「…乗ってみる」

「は?お前さっきできないって言っただろ?」


「できるかは分からない。でも何もしないでくたばるより、何かしてくたばった方がカッコつくだろ?」


「そ…そうか、やっぱお前らしいな」

「ウルス、悪いがちょっと俺の意地に付き合ってくれ」


俺たちはレットアージに乗る前の確認として、部品に異常はないかとか、バッテリーは満タンかとか色々チェックしていく。


特に問題はなさそうだったので、満を持して乗ることにする。


俺はレットアージのコックピットをこじ開け、搭乗する。


今まで数々のパイロットが、この機体の起動を試みたものの全く動く気配がなかった。


そんな機体を俺が動かせるのか?

…なんて考えてる余裕はなかった。


「さて、起動スイッチは…」

俺はレットアージを起動させようと、スイッチを探すが…、


ピキィィン…。

ウィィィン…。


どういうことだ?

俺は何もしていない。

コックピットに座っただけだというのに、ソイツの目が光を放ち、動き出したのだ。


「すげぇ、コイツ動いたぞ!」

「あぁ、俺でもビックリだ」


なんで動いたんだ?

いや、今はそんなこと考えてる時間はないな。


俺がレバーを作動させると、レットアージは畳んでいた翼を大きく広げ、大剣を構えた。


その姿は、まさに天使の翼を持つ騎士。


コイツなら…やれる気がする。


「それじゃ、行ってくる」

「絶対アイツを倒してくれ!」

「もちろんだ」


レットアージを操縦するのは初めてだ。

なんなら戦闘経験も皆無。

機構魔獣と戦うのは正直怖い。


でも、俺は父さんみたいに人々を守るヒーローになりたい。

そのためにはやるしかない。


「それじゃ、行くぞ!」


レットアージは飛び上がり、工場の屋根を突き破る。

俺は空を見下ろす。


すると案の定、フェンリルは街に侵攻し始めていた。

まずいな。なんとしてでも止めないとな。


フェンリルは空高く飛び上がり、大砲を構え勢いよく放つ。


俺はレットアージの持つ大剣で、フェンリルの砲弾を真っ二つに切り裂いた。


砲弾はその場で爆発し、街に着弾することはなかった。


「グルルル…」

フェンリルが唸っている。

どうやら俺をターゲットと認識したようだ。


「戦うのは怖い…けどお前ならできるはずだ」

俺は覚悟を決める。


「俺は機構魔獣を倒す!敵討ちだ!」


フェンリルは、大砲をまるでマシンガンのようにすごいスピードで連続で撃ってきた。


普通なら、これで街1つは簡単に滅びてしまうだろう。


でも、今の俺なら…!


このレットアージは、スタイリッシュな見た目ながらも華麗な素早い動きで大剣を振り回し、砲弾を全て斬っていく。


ドゴォン!

ドゴォン!


砲弾の爆発音が空に響き渡り、空は赤く染まる。

これだけで機構魔獣の恐ろしさが分かる。


でも、それを簡単に対処できるこのレットアージの性能の方が驚きだ。


いける。

コイツなら!


フェンリルの動きを見切り、レットアージを急加速させ、突っ込んでいく。


そして、連続で斬りつける。

砲弾を弾く程の防御力を誇るはずの装甲は剥がれ落ち、フェンリルは切り傷だらけで半壊状態となっている。


「グォォォン!」

怒りを露わにしたフェンリルは、肩の大砲ではなく、口元にエネルギーを溜めた。

さては特大ビームだな?


機構魔獣の放つ技の中でビームは特に危険だ。

それで、何万人もの命が奪われたことか…。


フェンリルは俺目掛けてビームを放つ。

普通に食らえば、木っ端微塵だろう。


だがそんなビーム、この剣で真っ二つにしてやる。

ビームを剣で受け止め、斬りながらフェンリルの方へ突撃する。


「グォォォォ!」

「うぉぉぉぉ!」


ぐっ!重い!

なんて威力だ。

だが…、間違いなくこっちが押してる!


「はぁぁぁぁっ!」


ビームを叩っ斬り、空高く飛び上がる。

大剣を両手で構え、急降下する。


そして、フェンリルの脳天目掛けて思いっきり振り下ろす。


「これでトドメだぁぁぁぁぁぁっ!」


ズドォォォォォン!


フェンリルの頭は真っ二つに割られ、目から光を失う。

マシンとしての機能も完全に停止した。


「やった…倒した…倒したぞ!」


「すげぇ!すげぇじゃねぇか、リエス!」

「ウルス!」


「すごかったぜ!ヒーローみたいでカッコよかった!」

「ヒーローか…。それは嬉しいな!」


「なぁ、折角だしコイツに名前付けてやれよ」

「名前?どうした急に?」


「だって、今まで誰一人としてコイツを動かせなかったんだ。でもお前はそれを動かした。これはもうお前の相棒と言っていいだろ!」


「そうか、名前か…そうだな…」


天使の赤い羽根に、燃え盛る炎を彷彿とさせる大剣、悪を討ち払う騎士。

これに合った名前は…。


よし、決めた!


「ウリエル…お前の名前はウリエルだ!」

「ウリエルか!めっちゃカッコいいな!」


「よろしくな、ウリエル!今日からお前は俺の相棒だ!」






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